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第18話 朝食を作る

 まぶたを差すような眩しい光で目が覚めた。


「んぇ、なんで明るいんだ……?」


 ムクリと起き上がり、ぼんやりしたまままぶたを擦っていると、今の状況がだんだん蘇ってくる。


「あぁ、そっか安全層か……だから明るかったんだな」


 呟く。

 最下層では、起きても暗いままだった。そのときの感覚がまだ残っている。

 どうやら安全層は深夜12時になると光を失うらしく、寝るときには真っ暗だった。しかし朝になるとまた光が出てくるらしい。

 モンスターがいない、安心できる環境なだけあって、今日は久しぶりにしっかり眠れた。思いっきり伸びをする。


「慣れないなぁ……」


 まだ起きていない体を引きずるようにして外へと出る。狭すぎるせいで全身が痛い。今日の夜にでも掘って広げた方が良いかもしれない。


「起こすのは、顔洗って、朝ごはん作ってからにしようか」


 10mほど離れたルルとミヤビの洞窟に目をやった。あそこはけっこう広くて、もう5人は入りそうだ。洞窟の入り口に布をかけているから分からないけど、2人はまだ寝ているだろう。


「まぁ、昨日いろいろ見つけたおかげで、しばらく飯の幅は広がりそうだけど」


 懐からナイフを出す。

 今朝の朝食は、スープにでもしようか。できれば肉も食べたいところだけど、量はあまりない。取りに行くためにはまた最下層に行かなければいけないし。


「干し肉にしてるし、しばらくは腐らないだろ」


 まぁ、食べられたらそれでいい。





「うーん。生えてる植物はめちゃくちゃだな」


 砂の観察が終わってから、今度は植物の調査に向かった。草原にポツポツと生えている特徴的な植物を調べる。


「今見つけたのだけでもレタスに白菜、大根にセロリ……しかも全部実がなってる。食べろ、と言ってるようなもんだよな」


 本来実が実る季節が被らない野菜たち。そんな野菜たちが、こぞって美味しそうに実を太らせている様はお膳立てされているような気しかしない。


「人間様が飢えないようにってことか……」


 最下層での長期戦を想定したのか、はたまた別の理由なのか。


「てことはダンジョン作ったのは人間じゃないだろうな」


 何百層という層を作り出し、各層にモンスターを配置、しかも様々な植物を咲かせるときている。どう考えても人間わざじゃない。


「まぁ、食料があるのは助かるけど」


 なかったら今頃死んでただろうし。


「飯の幅も広がるだろうし、な」


 途方もない場所にいることを実感して、ため息をつく。それぞれの野菜の場所だけ確認して、洞窟に戻った。





「スープなぁ……じゃがいもと塩と葉物野菜でどうにかなるか? あ、あとトマトもあるっちゃあったな」


 昨日のことを思い出しつつ、野菜たちを前にして考え込む。


「トマトとじゃがいもさえあればポタージュスープが作れるからどうにかなりそうなんだけどさ」


 塩があるのが唯一の救いだったかもしれない。ミヤビがけっこうな量を持っていたのと、ルルが持っていた分でどうにかなりそうだ。


「ただこれで十分な栄養が取れるかって言ったらまた別の話なんだよなぁ」


 早いとこ地上に向かわないと、栄養失調で死んでしまう可能性が出てくる。ここは奥深いダンジョンだ。薬もないし病気になったら一発。けっこうな綱渡り。


 はぁ、とため息を吐きつつ野菜を抱えて水を汲み、湯を沸かす。10分ほど沸騰させて消毒すると、切った野菜を入れた。先に野菜だけ炒めたいところだったがこの際しょうがない。

 しばらく煮込み、塩で味付けすると良い匂いがしてきた。優しい香り。

 匂いつられて、ぐぅっとお腹が鳴る。


「お腹空いたなぁ……」


 呟いて上を見上げた。空はないのに明るいのは変な感じだ。


「ミヤビとルルさん、起こしに行くか」


 器に汁をよそい、切り株の上に置いておく。大きな切り株だったおかげで鍋の周りに置くことができた。机みたいだ。


 安全層はダンジョンらしく円形で、真ん中を川で分断されている。リンゴや野菜、洞窟を見つけたのは手前側――つまり最下層側で、上の層側の方はまだ見れていない。パッと見だと手前側と何も変わらないみたいだけど。

 リンゴの木は最下層側から見て左の方にあり、どうやら俺たちが川に沿って歩いたのに対し、ルルさんは壁沿いに歩いたためそこで出会ったようだ。


 草原の中を進み、洞窟へと歩き続ける。

 

「どうやって起こそっか」


 洞窟にドア代わりに設置した布を揺らすくらいで良いだろうか。ちなみに布は整備のときに使うことがあるので、俺がリュックに入れていた。


「今日から攻略再開したいし、できるだけ早く動かないとな」


 人の問題とかダンジョン攻略の問題とかはひとまず頭の隅に追いやる。

 今は地上の土をもう一度踏むことを目標に頑張らなくては。層を攻略できなくてもいい。絶対に戻ってやる。

 俺は深呼吸すると、布を揺らした。


「ミヤビ、ルルさん。朝ごはんできたよ。起きて。それから……」


「これからのこと、もっと具体的に話し合おう」

次か次の次くらいに戦闘シーン入ります!ダンジョンへの攻略が始まっていきますね


よろしければブクマ、高評価よろしくお願いします!!

ここまで読んでくださって本当にありがとうございます……!

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