第15話 新たな仲間
「俺はしばらく安全層で暮らした方がいいと思ってるんだ。安全層で暮らしつつ、地上を目指して逆に攻略していく」
「な、なるほど逆に……」
「逆かぁ」
リンゴを食べつつルルとミヤビに説明する。
「食料はドロップアイテムとここにあるものでどうにかなると思う。だから一気に地上に向かうよりは安全層に留まっていた方が安心だ……それでルルさんはどうしますか? ちなみに俺とミヤビはパーティ組んでるんだけど」
ミヤビは俺とパーティを組んでいるから、一緒に行動するのはそうだろう。
ルルはさっき出会ったばかりだ。別行動が取りたいなら止めないし、一緒に行動したいとか、パーティを組みたいとかなら大歓迎する。
ルルは俯き、しばらく手元のリンゴを弄んだ。1分、2分、時が過ぎていく。
「わ、私も着いていっていいですか……?」
数分経って、リンゴから手を離したルルから出たのは肯定の返事だった。
「ににに、荷物持ちくらいしかっ……できないでしょうが! でも1人だと怖くて、せめてその……ミヤビちゃんの荷物持つくらいには役に立つのでっ……だから一緒に……」
フードのせいで表情は見えない。だけどローブを握りしめた手が力を入れすぎて震えていて、手から転がり落ちたリンゴは川を流れて行った。
「一緒に、行かせてください……」
手に、ポタリと水が落ちる。
どうしてこんなに、自分を卑下するんだろうか。どうしてこんなに、怯えるんだろうか。強いのに。強いはずなのに。
脅しの道具として魔法を使うくらいには、強いはずで、自覚もしているはずなのに。
「むしろ大歓迎だよ! 2人で荷物持って歩くの大変だったし、ちょっとだけ持ってもらえば助かるな」
「うんうん! ルルさん私たち……私よりも年上で頼りになりそうだし!」
隣でミヤビもブンブンと首を縦に振った。
「いいんですか……?」
掠れた涙声。
ルルが顔を上げた瞬間に、フードは外れた。さっきから少ししか見えなかった顔が見える。
涙を目にいっぱいに貯めて、血赤の瞳が歪む。雪のような真っ白な肌を涙が滑り落ち、ローブに染みを作る。
必死な泣き顔だった。
「ありがとうございますっ……!!」
さっきよりも湿った涙声。
「いやいや、助かるし。こちらこそお礼を言わなきゃ」
「そうだよ。感謝だよ」
ミヤビがルルの手をそっと開く。手のひらに残った爪痕を撫でて、柔らかく握った。
ルルはしばらくミヤビに手を繋がれたまま泣き続け、手が離れたタイミングで、服の袖で涙を拭った。
「よ、ろしくお願いします……」
ふわりと花のように笑う。
警戒心が解けたのだろうか。さっきまでの態度とはかけ離れていて。
他人を強調したり、魔法を見せて脅してきたり。
それもこれも全部、ルルの過去とやらに関係しているんだろうか。
「よろしく」
「よろしくだよ、ルルさん」
握手すると、ルルさんはもう一度笑った。




