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第11話 ミヤビ、水浴びをする

「はぁ、ひっさしぶりの水だなぁ」


 ゆっくりと川に浸かる。水は冷たいけれど、気持ちいい。最近の汚れが全てなくなっていく気がする。

 思春期の少女としては、この何日かのダンジョン生活で、体を洗えないことが1番の苦しみだった。匂うし、少しかゆいし……彼だっているし。


「アルフさんはもっと向こうにいるのかなぁ」


 離れたところで体を洗うことは、自分が提案した。別に言わなくても周知の事実(といっても2人しかいないけど)だっただろうけど、そこは乙女。わざわざ口に出さないと恥ずかしかったのだ、要するに。

 口に出さずに決定してしまえば、自分は女子、アルフは男性だということを自然と再認識してしまうし。自分から口に出した方が、気づかいを感じなくて済むというか……逆にちゃんと自分で意識した方が、変に意識しなくて済むというか。


「そういえばアルフさんは実は53歳だって言ってたけど、どんな感覚なんだろう」


 今の彼は、見た目は17歳だ。だからついつい同年代と同じように接してしまうけど……彼はどうなんだろう。


「まぁ、普通のおじさんたちとは違うよね」


 それだけは確か。少なくとも、冒険者のおじさんたちとは違う。決していやらしい目で見てこないし、移民だと感じさせるようなこともしてこない。

 ミヤビは、この国の移民街で育ってきた。2か月前、母親が死んだから生きるために学がなくても稼ぐことのできる冒険者になり、わざわざ隣国からの移民がほとんどいない中心街にやってきたが、取り巻く環境は思ったより酷かった。

 ダンジョンは過酷だし、冒険者は気性の荒い者が多いし。色んな意味で危険な目にも合うし。


「それに比べてアルフさんは優しいよなぁ……」


 頭の中に彼を思い描く。目くらいまでの、ストレートの白い髪。優しげな瞳。ちょうどミヤビの頭の位置にある肩。意外にがっしりした手。物静かなようでいて、意外に大胆だし綱渡りしがち。

 具体的に思い出すと恥ずかしくなってきて、ミヤビは首を振った。

 体を動かすとちゃぷん、と水が揺れて、肌に跳ね返る。ミヤビのみずみずしい肌は、久しぶりの水と光にツヤツヤと輝いた。しばらく無造作に水を触ってから、立ち上がる。

 ぐぐっと体を伸ばすと、鍛えられたしなやかな体は少し震えた。


「そろそろ上がらなきゃ心配させちゃうかな」


 さっき解いてもらった髪までしっかり洗った。もういいだろう。匂いも少しはとれただろうし。

 タオルを手に取って体を拭く。服まで着ると、森を抜ける。


「おーい、アルフさん!」

「おお、ミヤビ。髪もうちょっと乾いたら、くくろうか」

「ありがとう」


 にこりと笑う。安全層では、楽しい生活ができそうだ。

 ワクワクしながら、アルフに髪の毛のゴムを渡した。

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