2 Exoriare aliquis nostris ex ossibus ultor.
「ここ、は…」
目覚めた時、私は狭い檻の中にいた。私の籠の右にも左にも同じような籠があった。
少しの隙間。その向こうにまた、沢山の籠が積み重なっている。
(これは…奴隷馬車か?)
その隙間に座し、私を見つめている男が一人。
「お前は…ペンタクル!?」
「奴隷商人ペンタクル改めセネトレア王ディスク。以後お見知りおきを…お嬢さん」
「どうして俺を…助けたんだ」
私の言葉に、男は嫌らしい笑みで答える。
「貴女は金のなる木…貴女を欲しがる者は世界中にいる」
「どうして…俺、なんだ…」
私は普通の農民の子供。稀少価値の高いタロック人の女、唯それだけの者ならいくらでも……とはいわないがいないわけではないだろう。彼が私に固執する理由がまったくわからない。
「キヒヒ……わからないって顔だねぇ。それは……貴方の、その顔だよ」
「顔?」
怖気の走るような男の笑み。彼は、私を人とは認識していない。私達が狩ってきた獲物に向けるような目とも違う。
ああ、あれだ。
収穫の時期に、村人達が見せる顔。作物が例年よりいい値段で売れた時の顔。あれをもっと濁らせたような目。
“モノ”を見る目だ。
「私もその噂を聞いたときは疑ったよ。しかし実物を見、それを受け入れた」
「貴女はさる高貴な方に瓜二つなのだ。彼女のファンは皆、貴女の前に黄金を積むだろう」
村を思い出し、蔑むような目で彼は言う。
「あんな片田舎じゃ、美的センスもずれているだろうからねぇ…どうせ多くの子を産む女がいい女だとでも思っているんだろうあの農奴どもは。正に金剛石の原石のような貴女の美しさも、偶然出会わなければあのまま土に埋もれていたかと思うと……小汚い鄙びた村に足を運んだ甲斐があったというもの!」
「…金のために、村を燃やしたのか?!」
この男は、人の命をなんだと思っているんだ。
生きている。生きて呼吸をしている。同じじゃないか。同じ、人間だろう。
何処が違うんだ、この男と…みんな。金があるか、ないかだけじゃないか。
生きてることは、変わらないのに。それなのに、どうしてこの男は……そんな酷いことが出来るんだ?
(…………あの人は)
気がかりなこと。聞きたくない。それでも、聞かなければいけない。
あの男の傍にあるものに、見覚えがある気がするのは気のせいだと必死で自分に言い聞かせながら私は重い口を開いた。。
「…………兄貴は、どうしたんだよ」
待っていましたと言わんばかりの、にたぁと薄気味悪い満面の笑み。
「恐れ多くもタロック王に斬りかかったのです。死は免れませんでしょうねぇ…きっと素敵な処刑方法で裁かれたことでしょうね。貴女がもっと早く決断してくだされば、こんなことにはならなかったのですよ…フッハッハッハ」
私の、せい?
私が迷ったから?
私が…兄について行こうとしたから?
村を、みんなを見捨てようとしたから?
だから、神様が罰を下したの?
(いいや、違う!)
みんなを殺したのは、この男だ。村を焼いたのは、この男だ。あの濁った目の男だ。
神様なんていない。いるのはただ……この男みたいな、醜く歪んだ…最低な人でなし。
(人を人とも思わぬおまえこそ、人ではない!人の形をした悪魔だ!)
そんな悪魔に人が、虐げられ…搾取されること。それが世界というものなのか?
それを世界と呼ぶのなら…私は……
(そんな世界、いらない。おまえなんて…いらないっ!)
「返せ!それは…っ兄貴のだ!!」
「嫌ですよ、売ればこれだってそれなりの金になるんですから」
(兄貴の刀…お前なんかが気安く触って良い物じゃないのに…っ)
返せ。
返して。
お願い。返してよ…
奪ったものをすべて。あるべき場所に。
(私を、兄貴を…村のみんなを……)
こいつらが、大人を歪めたんだ。弟たちをあんな瞳にしたんだ。
私たちから希望という希望を根刮ぎ奪い、僅かな希望を見せて…絶望の車輪を回させ続けるんだ。
狂王と、奴隷王。
偉い人たちは、人を道具のようにゴミのようにしか思ってない。
それでも、私たちは生きているんだ。苦しんで悲しんで、傷付けられるためにじゃない。
きっと、いつか幸せになるために。
そのために…人は生まれてくるんじゃないのか。そうでなきゃ…この世界に、救いなんて存在しないじゃないか。
悔しい。泣くことしかできない自分が憎い。どんなに睨んでも、男は嗤うだけ。
獣に成り下がってもいい。
悪魔という名の人間達に比べたら、獣の方が余程いい。
爪を立てて喉を切り裂け。首筋に牙を立てて、食いちぎってやる。
燃えたぎる憎悪を瞳の赤色に宿して私は男を睨み続ける。
男は折から伸ばす私の手がギリギリ届かない場所で、そんな私の観察を続けていた。あの、濁った瞳で。
「しかし我妻の頭脳は実に素晴らしい。あの狂王をいとも簡単に従わせることができるとは…いやはや」
その悪魔の言葉には、涙でにじんだ私の視界を一瞬にして開かせるくらいの衝撃があった。
(…妻?)
私の村を滅ぼした…あの狂った炎を宿した男は、この男の掌で踊らせられていたというのだろうか。
そして、その妻。私はもう一人の悪魔の存在を知る。
「お客さん、あっしらも同業といえど…ちょいと口が過ぎるんじゃありませんか?仮にもここはまだ、その狂王の支配地ですぜ?」
御者の言葉で、ここがまだタロックであるらしいことを知る。しかし村から一度も出たことのない私にとっては、馴染みのない風景ばかりが続いていた。
「おや、金は十分に払っただろう」
「なるほど、口封じってか…お見それしました」
御者は陽気に笑う。悪魔に比べれば幾分朗らかな笑い方だった。
「しっかし、こちらは綺麗な方ですね〜」
そんなこと初めて言われた。そんな場合ではないのに、私の鼓動は僅かに早まった。
御者はまだ年若い青年だ。兄よりは2、3上かもしれない。
しかしディスクの仕事の手伝いをしている以上、彼も悪魔と同業者なのだろうか。それにしては…瞳が濁っていない。
(お互い初対面のようだけど…)
「ははは、まぁな。ん?おまえ、おまえこそなかなかいい商品を運んでいるじゃないか」
商品の価値がわかる男に悪魔は機嫌をよくし、彼の荷物を見回し、それを見つける。
ディスクは一つの檻の中の少女に目を留めた。長い黒髪に紫色の瞳が神秘的だった。
少女がじっとディスクを見つめると、彼は魅入られたように彼女を見つめ返した。
「おやぁ〜お客さん、こいつを気に入ってしまいましたか?こいつは高いですよ?」
「此処まで見事な色の瞳は見たことがないな……混血は好きではないのだがね……これ程ならばうちの後宮に入れたいくらいだ」
少女の値段を尋ねながら、ディスクは少女の籠に手をかける。
籠に入り込んだ指…それにぴたりと少女の白い手が触れた。
「ん?何かなお姫様?」
「金の亡者……哀れだな」
少女が一言呟くと、男は白目を剥いて倒れ込む。
「お代はあんたの命…ってもう聞こえてねぇか」
「依頼、完了…」
その瞬間、沢山の籠の中から歓声が上がった。
「リーちゃん流石!いつ見ても鮮やかなやり口だね!」
「しかし見事な変装ですね!」
「まーまー、どーどー…おまえら落ち着け!馬より暴れるってどういうことだ?あんまり騒ぐなって…事故っても責任とらねーぜ俺は」
ケタケタと笑いながら、御者は籠の騒ぎを振り返る。
「あ、あんたら…一体……?」
「おお、良く聞いてくれたな…俺達は…」
陽気な御者の言葉を紫瞳の少女が止める。
「アスカ、おまえは前を見て運転しろ」
「え〜俺とお前の仲だろ〜」
「……抱きついてやろうか?今は両手が血まみれなんだが」
「わーったよリフル」
どんな仲なんだろう。
それが良いのか悪いのか、初対面の私にはわからなかった。
「?」
いきなりの言葉。
その言葉はその青年の方へと向けられているようだ。
近くの籠から一人の少女が出てきた。金髪からカーネフェル人だとわかる。
「え…鍵」
「鍵開け縄抜け手錠抜け…それくらいのことならここのみんなは誰だってできるよ」
先程の声の主らしい少女はくすくす笑う。
なんだかここには陽気な人が多い気がするのは気のせいか。
「まー馬鹿はほっといて、説明してあげる」
金髪の少女がにこやかに微笑む。
「私たちはセネトレアじゃ泣く子も黙る暗殺請負組織SUIT……聞いたことくらいはある?」
「……知らない」
「まぁ……あんなド田舎じゃね〜仕方ねーって俺らも出没しないし。まだ俺らの村の方が活気が……」
否定はしないけれど自分の故郷が何も知らない初対面の相手に馬鹿にされるのは複雑だ。
相手に悪意がなさそうだから、余計に。
「空気読め、馬鹿」
「痛っ…なんだよアスカのくせに」
御者の青年がため息混じりに、黒髪の少年の頭をはたく。いい音がした。
「いや、いいんだ……」
私は静かに首を振る。まぁ、事実だ否定しようないほどの。
「要は暗殺と盗み専門の犯罪組織。今回のターゲットがこのオッサンだったってこと」
少女の革靴が、動かないそれを軽くつついた。
“モノ”扱いしていた人間という存在から今かれは、“モノ”以下の扱いを受けている。
少女の笑顔のままの動作のせいか、まるで“それ”がさっきまでは人間だったものとは思わせない。動かない。
死んだんだ、本当に。
あんなに憎かった男が随分あっけなく死んでしまうものとは。
少し拍子抜けしてしまう。しかし簡単に…これで仇は取った、はい…めでたしめでたし、とはいかない。
私には帰る場所がない。村は燃やされた。家族も兄も、傍にはいない。
彼が生きているのかもわからない。かといって、行く宛もない。お金もない。
すべて、この男に奪われたのだ……
この怒りは、どこへと向ければいいのだろう。
「この馬車はこのまま船に乗ってセネトレアに向かうワケなんだが、おまえさんはどうする?」
「あいつの雇った奴隷馬車はこれだけか?もしかしたら他の馬車に、俺の家族も…」
そうであって欲しいという願いを込めての言葉だったが、青年は苦い顔で答える。
「俺達は首都からやってきたが、あの奴隷王の手配した馬車はこれだけだ。奴が運んできた積み荷はあんただけだよ…」
「俺達の頭は奴隷制と誘拐がなにより嫌いでな…人さらいの手引きはしないのがモットーなんだ」
「村の様子を見に行きたいならこれから通る街に降ろしてやってもいい。…もっともみれたもんじゃないとは思うが」
「セネトレアに着けば俺達の仲間も大勢いる。カーネフェル方面の船なら乗せてやれるぜ?」
「シャトランジアの聖教会なら、君みたいな人を受け入れられるけど。それはここも同じかな」
「帰るところがないならうちで置いてあげてもいいよな、リフルさん」
聖教会?始めて聞く単語だったが、少女が私を気遣ってくれていることはよくわかった。助けになってくれようとしているのだ、見ず知らずの私なんかに。口々に彼らが言う言葉。それは全て私のため、そのためだけに作られた言葉だった。その親切さをどう受け取って良いのかわからない私は、酷く混乱していた。そのせいで私はそれをそのまま口に出してしまう。
「……どうしてそこまでしてくれるんだ?俺は……他人だろ」
戸惑い気味の私に、金髪の少女と黒髪の少年が優しく微笑んで説明してくれた。
「うちのボスは、身寄りの無い子の味方なんだよ」
「もともとそういう奴らの寄せ集めの請負組織だしな」
なんでも彼らはセネトレアのどこかに混血のための街を一つ作ったらしい。そこをアジトとして、居場所のない者達をそこに住まわせ、……それを養うための、盗みと殺し。狙うのは悪徳商人と性悪貴族だけだという。そんな組織の長が、こんな私より細い腕の少女だなんて信じられない。
しかしよくよく思い返してみれば、この少女はどういう技を使ったのかは知らないが、奴隷王を一瞬で殺してしまった。見かけによらず、本当は強いのかも知れない。惚けたように彼女を見つめる私に、少女は気まずそうに目をそらす。
「……あんた、女のくせに凄いんだな!」
「………」
私の言葉に馬車の中は笑いの渦に飲み込まれる。
頭と呼ばれた少女は、鋭い眼光で私を睨み付けようとしたが、目が合わさる寸前で目を伏せて……溜息ながらに自分の黒髪を掴んだ。
長い黒髪の下から出てきたのは、銀髪。…いや、銀に見えるけどあれは白金だろうか。だってそんな色、聞いたこともないし見たこともない。だってあり得ないじゃないか。
その時私はこの目で初めて混血を見たのだった。だからその様子をとても印象深く覚えている。その人は肩の辺りまで伸びた綺麗な髪を耳の後ろで適当に束ね出す。そして露出の多かったドレスを脱ぎ、彼は全身を覆うような長い袖の服に身を通す。両手には黒い手袋をし、口元はマスクで覆い、長いマントを身に纏えば……明らかに怪しい人物のできあがり。
「ね、わかった?」
にたにたと笑いながら話しかけてくる金髪。それまで青色だった彼女の瞳はいつの間にか…猫目石……いや、虎目石によく似たものに変わっていた。彼女も混血だったのかと、今更気づく。混血とは言っても……こうしてみる分には普通の人間のよう。もの凄い大爆笑をしていたその子の目には笑い泣きの跡が見て取れた。
それに反して、もう一人の混血は……無言を貫き馬車の外に視線を向けていた。その様は無感動とも見える。感情を殺している?いや、でも絶対怒っているに違いない。だって私だってそういうことを言われたら怒るし傷つくから。
「……す、すいませんでした」
着替えの最中みた身体、すらりとしていたがその胸は私以上に真っ平ら。それが意味する答えは一つ。
「気にすること無いって、私だって最初は間違えたし」
「あ、俺も」
次々に籠の中から上がる声。
少年はとても綺麗な顔なのに、その声達に渋い顔になる。
「仕事のための女装なんてよくあるし、間違えられるってことは良いことだろう?それだけ見事な変装名人って事なんだしむしろ誇りに…」
「……出来るか!俺はこれでも十八の男なんだ、嬉しいわけあるか!」
頭は御者に扮した青年の背中を蹴り上げた。そうしているとさっきまでの無表情な人と同じ人には見えない。普通の、子供みたい。
そのやり取りに、自分と兄の姿が重なって見え…不意に私は泣きそうになった。
それを遮るのは、ふと耳に残ったその言葉。
「……十八?」
目の前の少年は……私と同い年か少し上、十四か五くらいにしか見えない。背だって私とそう変わらない。その答えに頭を悩ませる私に話しかける、その少年。やっぱり同い年くらいにしか見えないのに。やっぱり、混血って不思議だ。
「運賃代わりに聞いても良いか?」
「え、あ…はい」
「別に気使わなくて良いよ〜うちのボスってばあんまり敬語好きじゃないからさ」
黒髪の少年は私に向かってけたけた笑う。さっきからら彼はずっとそうだ。今まで気付かなかったけれど、もしかしたら私を…元気づけようとしてくれているのかも知れない。
「あんたの村を襲ったのは、タロック王と…このセネトレア王で良かったんだな?」
「ああ、間違いない……」
銀色にしか見えないその色の少年が、私に念を押す。それを肯定すると彼は「そうか」と一言言ったっきり黙り込む。それがバトンタッチの合図だったかのように、御者が自身の考えを話してくれる。
「奴隷王はお忍びで来たようだが、あっちは軍を率いてきたから……もしかしたらあんたの知り合いの行方は、タロック軍が知っているかもしれないな」
「いや…あいつは、女子供も殺そうとしたんだ。生き残りなんて…」
そう言いかけて私は思い出す。
(そうだ、兄貴…兄貴はどうなったんだ?)
奴隷王の言ったとおり、狂王に向かっていったのだとしたら…
「……悪かった。こいつを殺す前に吐かせれば…もっと何か力になれたかもしれない」
ああそうだ、ディスクはそれを見ていたんだ。それならばその一部始終を知っていてもおかしくはない。
「いや、…あんたのせいじゃ、ないよ」
口ではそう言ったが……いくら拭っても拭っても自分の手じゃこの涙を涸らすことはできなかった。
たぶんそれが出来るのは……ここにはいない、一人だけ。
*
私はセネトレアの街で、彼等と別れた。彼等は私に一つの情報をくれた。
その情報を頼り、私は真実を確かめることを決めた。
別れ際彼等は、一つの小瓶を差し出した。
「もし行く宛が無くなったら影の遊戯者って酒場のカウンターで、その小瓶を開けて…」
「そうそう!それを飲んで目を開ければ…また会えるから」
「これって…?」
「ああ、これはね……」
ひそひそと耳元で教える少女。
「はぁ!?」
「大丈夫、死んだ前例はないから」
「詳しくは言えないが一種の勇気試しだよな、あれは」
「ああ、俺の時から通過儀礼になったんだっけ?」
「そう、フォース君のせいでね」
「え!?俺のせい!?」
「つまり……それだけの覚悟はあるかってことだよ……人を殺めることは、それだけ重いことだから」
ふっ笑った少女の顔に影が差す。
「裏町はいろいろ物騒だしな。普通に協会に逃げ込むのが一番だと思うんだが……最近は協会も協会で問題だからなぁ」
青年は苦笑しながらため息を吐く。私を気遣ってくるそんな仕草に、私は彼に最後まで兄を重ねてしまっていた。
(それにしても…)
暗殺集団というわりに、変な人が多かった。いや、暗殺集団だからこそか。もし全てを見失ったら…その時は、彼等の世話になるかもしれない。
別れ際…銀髪の少年が私に教えてくれたのは、五ヶ月前セネトレアに嫁いだタロックのお姫様の話。
その姫とは、奴隷王ディスクの妻。
私の村を焼いた策を練った人物。
「貴女は、そのお姫様に…似てるんだ」
ディスクが言っていたのは、彼の妻のことだったらしい。
別れた後、少年と青年が交わしていた会話の内容。
勿論それを、走り去る私の耳まで聞こえることはなかった。
「どうも今回の依頼は…きな臭いな」
「ああ、もしかしたらあの姫の片棒を担がされちまったのかもしれない。じゃなきゃ…あんな偶然あり得るか?」
「ああ、……あの娘は悪くないというのに、触れてしまいそうになった」
「……憎んでいるのか?」
「憎んでいるさ」
「いつか必ず、この手で裁く。狂王も、あの女も……俺が、必ず」
同じ名前をもつ少年と少女の束の間の邂逅。
「女帝」は本編の約一ヶ月前から始まります。故にSUIT編では「隠者」「死神」を終えて、これから「悪魔」へ向かう束の間の休息の時期。「魔術師」でロンリーになったリフルが仲間に囲まれているのはそのせいです。もしかしたらリフルにとって今が一番幸せな時かもしれません。
そしてあっさりお亡くなりになる諸悪の根源その一、セネトレア王。トーラが今回の任務に同行したのは復讐が終わるのを目の前で見たかったから。あっけなく終わった復讐に笑ってはいますが、復讐を終えた興奮と得体の知れない空虚と、内心複雑な想いを抱えていることでしょう。血も涙もない悪魔だと思っていた男も、所詮は脆弱な唯の人間にすぎなかったのだと。
ちなみにここにいないメンバーはアジトの守りをしています。