伝家の宝刀
「魔物の大群が来るぞぉ! 街を守れぇぇぇ」
家の外からは警鐘が鳴り響き街は大混乱になっていた。
「エル、決して家から出てはいけないよ。いいね?」
父は手短に俺にそう伝えに来ると急いで街のギルド本部へと走っていった。
平穏な日々は過ぎ去り、一気に増す緊迫感。これはただごとではない。
「...これはただごとじゃないぞ」
俺も当然今回の件には頭を悩ましていた。
「この感想から見るに魔王さんは今回のペムッチ編がお気に召してないらしい。くぁぁぁ! やっちまった、やっちまったよおおおお!!」
覆水盆に帰らず。俺は致命的なミスを犯してしまった。そりゃそうだ、魔王さんはペムッチを推していた。それが盗賊に犯されかけたら嫌な思いするよな、そうだよな。くそおおおお! やっちまったぁぁぁ!
何やら外が騒がしいが関係ない、父から家から出るなと言われたが当然出る気もない。俺は過ちの贖罪をしなければならないのだ。そうしないと唯一無二の読者を失う事になる。
「かくなる上は.....よし!」
......翌日、魔王さんから感想が来ていた。
《こんにちは。最新話拝見しました。いやぁ、びっくりしました。まさか今回の一連の騒動がペムッチの夢だったなんて。実はちょっとブルーな気持ちになってて危うく世界滅亡させちゃう所でしたよ。最後まで見ないと駄目ですね、反省です。これからも執筆頑張って下さい》魔王
「よおおおおおおおしっっっ!!」
ふう、危ない危ない、一か八かだったが上手く行ったようだ、伝家の宝刀を抜くか迷いに迷ったが結果的には正解だったな。魔王さんはペムッチに清純さを求めているようだ。今後は気をつけないとな。
......時を同じくして魔王軍の進軍はピタリと止まったらしい。