異世界で小説家になろう!
この世界で小説家というのは決して身分が高いものではない。大衆娯楽の一つであって小説家を生業として生計を立ている人間は前世の世界と比べてもあまりに少ない。皆、剣と魔法の研鑽に励み己を鍛え、その力を持って高難易度のクエストへ挑戦。富と名声を得るのはこうした強者である。
故に貴族の御曹司である俺がこのパソッコなる魔道具を父から買い与えられたのも決してエロサイトを見るためでもなければ、ましてや小説家にする為のものではない。だがそんな事はどうでもいいのだ。一度諦めた夢、それが目の前にあるのであれば...全ての優先順位は小説に向けられる、当たり前だ。
「...ふう」
エロサイトを探して丸3日...どうやらその様な使い方には制限が掛かっているのかどうしても見つけ出す事ができなかった。
「ちくしょう...ちくしょう...」
思わず嗚咽が漏れる。
前世の知識なんてそれほど役にも立たない、そう実感させられる。
心を落ち着けるために小休止後にいよいよこの世界の「小説家になろう」であるところの「小説家になってみよう」をクリックする。
「おぉ」
見事な色合いのティザーサイト。形式も「なろう」とほぼ同じ作りでランキング、ジャンルごとに区分けされていた。観覧者が多い裏返しなのか、各小説は感想で溢れており大変盛況だ。
「これ、下手すれば本家よりユーザー数多いんじゃ」
期待せずにはいられない。ま、まあランキング上位様だし、このくらいは当たり前なのかもしれないが。
では早速記念すべきこの世界での小説を一作...と言うのは素人だ。まずはリサーチ。この世界ではどんなジャンルが人気で、今のトレンドは何なのか、それを調べるところからだ。
「さてさて」
ちなみに俺の得意ジャンルら異世界物。ブクマを貰ったことはないが(正確には貰ったあと剥がされる行為はよくあったが)書いた量なら誰にも負けない。まずは得意分野のリサーチから、だな!
「えーと、異世界、異世界っと......あれ?」
ここで俺は驚愕の事実に気付いてしまう。
「異世界ジャンルが...ない...!?」