好きなアイツは超クール 振井明人の通学路
複数視点短編小説、今回は男子高校生、振井明人視点のお話です。
内容は全く同じですが、視点が違う事で違う物語になる楽しさを味わっていただけましたら幸いです。
「おはよう」
「ん。おはよ」
いつも通りの朝。いつもの時間にドアを開けると、幼馴染の澪がちょうどドアから出てくるところだった。
ああ今日も可愛いなぁ澪は。
風になびく黒髪。大きな瞳。陶器みたいな肌。
ああ、なんでここまで俺の好みにどストライクなんだろ。
唯一の不満は、
「宿題終わったか」
「ん。余裕」
「そっか」
付き合いが長すぎて、基本素っ気無いこと…。
「昨日の新番組、観た?」
「言ってたやつだろ。観たよ。酔いどれ刑事」
お前が勧めてくれたもの、見逃すわけないだろ!って言いたい。
「どーよあれ」
「んー……」
正直微妙だったけど、勧めてもらった手前言いにくい。こういう時は!
「推理物としてはイマイチだったな。なんだよ密室は勘違いでしたって」
「まぁ確かに」
先にけなして持ち上げる作戦!
「でも推理するためにお酒飲んでベロンベロンになるところは思わず笑った」
「あ、うん。私もあそこがツボだった」
よっし通った! 読んでて良かった心理学の本!
「来週観る?」
「ま、とりあえずもう一回は観るかな」
「そだね」
澪が見るなら毎週でも観る。
「トリックがもうちょっとしっかりするといいな」
「同感。推理物としてはそこがね。超能力とか使ってきたらどうする?」
ぶっ! 超能力で密室トリック? そんなの何でもありになるじゃないか! 面白過ぎだろ!
いかん笑うな。馬鹿にしていると思われたくないし、何より澪の前では格好良くありたい。
「面白いかもな。逆に」
「逆にね」
よし、何とかクールに乗り切れた。
「あ、そうだ。今日のシングソングシングルスに、桜井圭祐出るって」
「本当? 録画しないと」
澪、好きなんだよなぁ桜井圭祐。イケメンで声も良いって反則だろ。……芸能人に嫉妬しても仕方ないけど。
「そしたらさ、放課後カラオケ行こうよ」
カラオケのお誘い!? 行く行く絶対行く!
「明人の『ミラクルプラネット』聴きたくなって」
うぐ、桜井圭祐繋がりかよ。
「ま、暇だしな」
「じゃ、決まり」
「あぁ」
ま、良いか。カラオケ行けるのは純粋に嬉しい。こんな気軽に誘えるのは、俺を男として見てないからだろうけど。
「おーす」
「おはよー」
校門が近付いて来ると、朝のスペシャルタイムは終わりを告げる。俺達はそれぞれの級友の元に向かう。
「じゃ、放課後」
「じゃね」
澪と恋人になりたい! でも断られたらこの時間は無くなってしまう! 生きていけない気すらする!
だからもう少しこの関係を続けていこう。
気にもしてないフリをして。
読了ありがとうございました。
はい、あまりに近過ぎて好意を伝えられなくなった男の子でした。
なら女の子・澪の内心はどうなのか。どうぞ次に進んでお楽しみください。