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好きなアイツは超クール 通学路編

はい。またまた突発性短編症候群に襲われました。

千文字縛りの短編再び!

今回は同じ場面を三人称、男の子目線、女の子目線と切り替えて楽しむ、試験的小説です。

何のこっちゃと思われるかもですが、まぁ読めばわかります。

連休中の巣ごもりのお供にお楽しみください。

「おはよう」

「ん。おはよ」


 振井ふるい明人あきと真梨まなしみおは、家のドアを同時に開けて短い挨拶を交わす。

 二人は家が隣同士の幼馴染。おまけに誕生日も一緒という筋金入りだ。

 どちらともなく二人は、通う高校へと歩き出す。


「宿題終わったか」

「ん。余裕」

「そっか」


 十数年家族同然に過ごしてきた二人は、まるでお互いに空気のように扱う。会話がなくても気にした様子もなく、五分程歩き続ける。


「昨日の新番組、観た?」

「言ってたやつだろ。観たよ。酔いどれ刑事」


 他愛のない話題。遠慮のない物言い。二人の間のいつもの会話。


「どーよあれ」

「んー……」


 澪の問いに、明人の歩調が少し遅くなった。軽く眉間に皺を寄せ、小さく唸る。


「推理物としてはイマイチだったな。なんだよ密室は勘違いでしたって」

「まぁ確かに」


 明人の指摘に苦笑する澪。


「でも推理するためにお酒飲んでベロンベロンになるところは思わず笑った」

「あ、うん。私もあそこがツボだった」


 軽く笑い合う二人。微笑むの少し上(くらい)の微かな笑顔。


「来週観る?」

「ま、とりあえずもう一回は観るかな」

「そだね」


 明人の答えに頷く澪。


「トリックがもうちょっとしっかりするといいな」

「同感。推理物としてはそこがね。超能力とか使ってきたらどうする?」


 澪の突拍子のない言葉に、一瞬明人の足が止まる。が、次の瞬間には再び元のペースで歩き出す。


「面白いかもな。逆に」

「逆にね」


 表情を変えずに返した明人が、ふと思い出したように口を開く。


「あ、そうだ。今日のシングソングシングルスに、桜井圭祐出るって」

「本当? 録画しないと」


 興味ありげな口調とは裏腹に、その顔は変わらない。


「そしたらさ、放課後カラオケ行こうよ」


 澪の提案。明人は表情を変えず歩き続ける。


「明人の『ミラクルプラネット』聴きたくなって」


 明人はつまらなそうに大きな伸びをしてから答える。


「ま、暇だしな」

「じゃ、決まり」

「あぁ」


 小学生の遊びの約束のようにあっさり決めると、無言に戻り、学校への道を二人で歩き続ける。


「おーす」

「おはよー」


 学校が近づくにつれ、級友達が集まって来る。それぞれの友人に声をかけられて、二人はまるで石に当たった小川の流れのように、さらりと離れる。


「じゃ、放課後」

「じゃね」


 明人と澪は軽く手を上げると、次の瞬間にはまるでお互いの存在を忘れたかのように級友との話に花を咲かせる。

 梅雨が終わりと夏の予感を示す日差しが、雲間からゆっくりと顔を覗かせ始めていた。

読了ありがとうございました。

続いて振井明人編をお送りします。

どうぞそのまま『次へ』を押してお進みください。

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― 新着の感想 ―
[一言] 最初に読んだときは「?」ですね(笑) ありゃ、「らしくない」 で、感想を控えて次を読む。 「なるほど」そうきましたか(笑) 全部読まないとダメですね。ネタバレ注意!
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