天才と凡人
プロローグ
私はずっと追いつきたかった。君に飽きられたくなかった。それで彼女の心の奥がちゃんと理解出来てなかった。自分の事ばかり。私はいつだってそう。周りが見えていない。君が私に向けて出してくれていたSOSにも、もちろん気づけなかった。いまさら後悔してももう遅い。君は私の事どう思ってるのかな?まだ、面白いとそう思ってくれてる?
出会い
私が執着する彼女と出会ったのは高校2年生の時だった。彼女は突然私の日常生活の中へと入ってきたのだった。先生が呼びかける。
「入ってきなさい。」
そう言われて歩を進め私がいる2-Bの教室へと入ってきた。私が彼女に対して抱いた第一印象はこうだ。美しい。ただただそれだけだった。整った顔、艶やかに靡く黒髪、凛とした力強い目ももちろんだが、1番は動作だ。所作が一つ一つ美しい。人の目を引く天才かと私は思った。私だけでなくクラス全体がそう感じているのではないかと感じた。皆口を僅かに開けその美少女をただただじーっと見つめていたからだ。呼吸を忘れたかのように…
「はじめまして」
そう彼女が第一声を発すると止まった時が動き出したかのように教室がザワザワとしだした。
「静かに」
先生がそう言うとまた彼女の方へと視線を向けた。
「コホンッ、止めてすまないね。続きを」
「はじめまして、有栖川 薫 です。皆さん、仲良くしていただけると嬉しいです。」
絵に書いたような微笑みを浮かべた彼女は、本当に美しかった。言い換えれば、胡散臭い笑顔だなと私はそう、その時感じた。