表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

黒い何か

作者: 南波英人

看護師の姉から聞いた話


末期癌のお婆ちゃんを受け持った時のことだそうです。

 

そのお婆ちゃんは治療ができないこと、自分がそう長くないと知っていて覚悟が出来ているのか、とても穏やかだったそうです。


姉はおばあちゃん子だったのでその人ととても仲良くなり、いろいろなことをしゃべるようになりました。


でも病気の進行で時々辛そうにしているのに自分としゃべる時は、そんな素振りも見せないお婆ちゃんの姿を見て

何か仕事として以外にも出来ることがないか

困っていることがないか聞いてみました。


「ありがとうねぇ、でも今のところは何もないねぇ。病気がなくなれば一番いいんだけどむりだしねぇ・・・。」


そう言いながら笑うお婆ちゃんが少し困った顔してあることを話し始めました。

 

「病気だから気が弱くなっているのかも知れないのだけど、よく怖い夢を見るようになってしまったのが最近辛くてね。」

話しながら、その夢を思い出したのかお婆ちゃんが少し震え始めたので話すことで少しは気が紛れると思い、夢の内容を聞いてみました。


「夢といってもこの病室いる夢なんだけど、

周りに誰も居ないのになぜか夢のなかの私は呼ばれている気がして起きて扉ではなくて窓の方を見るの。

夜なのか窓の所には何もいないのにずっと見続けるの。

何も居ないと思っていたけどそこには何か黒いものが蠢いていてそれが何なのか確認しようとすると目が覚めるの。」


その話を聞いてなにげなく窓に視線を送ったけどそこには中庭の木々しか写っておらず、その黒い何かは夜に見間違いだろうと姉の中で結論づけました。


おばあちゃんにも多分見間違いだろうと言うと、ほかの人から言われることで安心できたのか少し安心したようでした。


数週間後、夜遅くにお婆ちゃんの容態が悪くなり医師とともにお婆ちゃんのところに行くと少し錯乱していて、ある言葉をブツブツと唱えていました。


「窓に窓に黒いのがいっぱいいるいっぱいいるいる。」


その言葉を聞いて窓を見ても姉の目には病室の光が反射し外が見えなくなった窓しか写っていませんでした。


おばあちゃんの容態は回復せずそのままお亡くなりになりました。


お婆ちゃんが亡くなってから、看護師歴の長い看護師に

なんとなくおばあちゃんが言っていたっ黒い何かのことを聞いてみました。


「ああ、昔からよく死ぬ間際の患者さんが時々言うわね。


その黒い何かを見たって患者さんは近いうちに死んでしまうから、看護師内では気を付けるようにしていても駄目で、もっぱら死神と考えるようにしているわ。


ただ、最近黒いのを見るっていうより黒いのがたくさんいるって患者がいうようになってきているの。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ