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「あーん、最高ぉ!」

「アリスちゃん、歌もダンスもマジ上手だねー!」

(……アリス……)


 アリスというのは、名前を聞かれて咄嗟に名乗ったマルスの偽名だ。

 マルスのままじゃ女の子っぽくないし、何よりそっちの方が似合うでしょ? ──だそうです。


「ウフフ、ありがとう。アナタも上手だったわよ」

「へへへ! アリスちゃんが上手だから張り切っちゃった!」

「あら! じゃあ……いっちゃう? もう一曲!」

「もっちろん!」


 どちらもノリとテンションが似ているからかな。マルスとマフユくんはカラオケに来て早々意気投合し、この一時間は軽く彼らのライブ状態だった。

 だから私はもちろん、チアキくんもほとんど歌ってない。別にいいんだけどね。キャッキャウフフと次は何にすると盛り上がる二人を見て私はこっそり溜め息を吐く。


「……どうしたの? モトコちゃん。もしかして、カラオケ嫌いだった?」


 と思ったら隣のチアキくんにばっちり見られていた。私の様子に余計な気を遣わせてしまったようで、爽やかなお顔がしょんぼりしている。

 ちょっと犬っぽいと思ってしまった。そうか、これがワンコ系……。


「あっ、ご、ごめん……。違うんだ。嫌い、じゃないんだけど……」

「そっか、よかった。でも……元気ないよね? 調子悪い?」


 チアキくんは優しい人なんだね。私を気にかけてくれているのが伝わってくるよ。ニット帽からにょきっと犬耳が生えて、しょぼーんと垂れる様子が目に浮かぶくらい。か、可愛い……。


「今日、朝から出掛けてたから……ちょっと疲れた、だけ。気にさせてごめんなさい」

「ううん、こちらこそ疲れてるのに声かけちゃってごめんね。今日いっぱい買い物してるもんね」


 チアキくんがちらりと視線を向けた先には、ショップバッグの数々。

 本当にたくさん買ったなぁ。ああ、お財布の中身を思い出して切なくなってきた。うう。


「準備はいいかしら、マフユ!」

「オッケー! アリスちゃん!」


 ようやく次の曲が決まったらしい。ピピピと電子音がして、マルスとマフユくんがノリノリで立ち上がった。

 マイクを手に、ちょっとしたステージになっているところに移動する。

 イントロが流れ始めてポーズを取る二人。これガチだ。

 ストハリで攻めるのかなと思ったら、画面に表示された歌のタイトルはなんと人気イケメンダンスグループの物だった。


「Fooo!」

「Yeah! Yeah!」


 その曲の特徴的なダンスをキレッキレな動きで披露するマルス。そしてマフユくん。

 マフユくんは知ってそうだとしても、マルスってばどれだけ日本のアーティスト達に詳しいの!?  もしかして、ストハリだけじゃなかった!?

 しかもめちゃくちゃ上手だし、完コピってくらいキレッキレだし!


「ねぇ。モトコちゃんとアリスちゃんってどうやって知り合ったの?」


 そんなマルスwithマフユくんのパフォーマンスに思わず見入っていたら、チアキくんの声がすごく近くで聞こえてきた。

 二人の歌唱が始まったから声が届きにくいと思ったんだろうね。振り向いた先にはなんと、チアキくんの爽やかなお顔が……!


(────イ、イケメンのご尊顔が……! 至近距離に……!)


 目と鼻の先。

 肩が触れ合うまであと十センチ。


 そんな近くで男の人と向き合うのなんて初めてだったから、そりゃあもう内心大慌てですよ。

 顔に熱という熱が集まっていくのを感じる。すごくポッカポカ! ミラーボールのキラキラが輝いてるくらいで照明は暗くしてるし、きっとバレないとは思うけど絶対これ顔真っ赤になってる。


(────いやいや、落ち着きなさいよアタシ)


 うっかりマルスの口調が移ってしまってるけど、アナタ、今まで何度も推しの顔を拝んでいるでしょう? テレビやゲーム機、スマホの画面越しにさ。

 今更至近距離にイケメンなんてどうってことない筈よ! Be COOL……Be Cool……モトコ。

 ……で、何だっけ? マルスと私がどうやって知り合ったかだったっけ。

 動揺を悟られるな。さあ落ち着いて答えるのよ、私。

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