第2話 契約神具
「わたくしの名はユキ、です。どうぞお見知りおきを……」
「はぁ……、こちら御剣碧です」
「ミツルギミドリ様……、よろしくお願いいたします」
「いや、よろしくとか知らんし……」
スキンヘッドが伸びている横でユキを名乗る少女に何故か自己紹介をされていた。
この子勇者とか痛いんだよね……。
「ところでさ、ここどこなの?関東?東北?」
「カントーホク?何言ってるんですかあなた?」
ちょっと小馬鹿にした返され方をされてイラッとして回れ右をしてほっとこう……。
「ま、待ってください勇者様ぁぁ……」
「お前さっきから待ってばっかりじゃねーか!」
私服にしがみつくメイドを引き離そうとするが、私服が伸びそうになり辞めた。
あぁ……、だから女は面倒なんだ……。
ーーーーー
「で、ここはどこなんだ?」
「どこ……?国の事ですか?」
「いや、がっつり日本語で会話してるし日本なのはわかるよ」
ただ、視界に広がる背景に見覚えがないだけで。
「ニィホン?……、この国は『ザーファリア』という国ですよ」
「そっかそっか、ザーファリアか」
…………北海道らへん?
よくわからん。
「……なんで俺その……ザー……、ザーザリアンに来てるの……?」
「ザーザリアンではなくザーファリアです。わたくしは先程あなたが壊した契約神具『証』を使って勇者ツルギミドリ様を召喚させていただきました」
サラッと意味不明な文を言われた。
「ツルギミドリではなくミツルギミドリです。えっと……、何?契約シングル……?」
「契約神具です。わたくしは契約神具と契約し、いにしえに伝わる勇者様を呼び出させてもらいました。『証』伝わる伝説、困り事ある時自分が望む人呼び出す時光の扉を開く」
「俺忙しいから話終わったらメールしといて」
腕時計が示す時間は既に0時過ぎ。
そろそろ寝る時間だし家に帰らないといけない。
「待ってー、ミツルギドリミー様ぁぁぁ」
「ミツルギドリミではなくミツルギミドリです。相手にされたかったらその明石とかで光の道開いてよ」
「明石ではなく『証』です!さっきからミツルギドレミさんは覚える気が無いんですか!」
「お前こそミツルギミドリと覚える気がないだろがっ!」
醜い争いだった……。
ーーーーー
「ミツルギミドリ長いよ。ミドリと呼んでくれ」
「ではミドリ様と。わたくしもユキとお呼びください」
「はいはい」
俺は本名を名乗っているのにユキは名前しか名乗らないらしい。
「ユキが俺を呼んだんだよな?」
「はい、召喚させていただきました」
召喚って……、カードゲームかよ……。
「じゃあ俺を元居た世界に帰してくれ」
「あぁ、無理です」
「無理……」
「無理です。だって貴方『証』を壊したじゃないですか」
「……はい、すいません」
壊した原因は俺だけど、壊した本人はそこに転がっているハゲです。
「契約神具を直せる話などこれまで聞いたこともありません。壊されたという話すらも無いくらいに。貴方は唯一帰れる手段を無くしました」
「えっ!?直せないの!?」
「世界は広いですしもしかしたらどこかに直せる人は居るかもしれませんけど……。そもそも契約神具は神話時代から残る失われたオーパーツなんですよ」
「なんて物を君は俺に使ってしまったんだ……」
なんでユキの困り事でポンと呼び出されて帰れなくなってんだよ……。
「ん……?君がその契約神具を使ったんだよね?なんでその契約神具が俺の手に渡ったんだ?」
「よく知らないで使ったんですけどわたくしが契約して力を使ったら手元から契約神具が消えちゃって……。それからすぐにあなたが光と共に現れました。その時には既にミドリ様の手に渡っていたという事ですね」
多分俺が拾ったからなんだろうけど……。
「ミドリ様は辞めてくれ……、俺でさえ課長や社長でも様なんか付けない……」
「注文が多いですね……。ではミドリさんと」
異界の扉開くとかザーファリアとか絶対地球ですらねーよ……。
異世界みたいなとこに来ちゃったよ……。
「言語とかなんで通じるんだ……?」
「そういえばそうですね……。ファリア語を理解しているとは到底思えませんし……」
実際知らないし。
「もしかしたら契約神具とミドリさんは繋がっているからなのではないでしょうか」
「繋がる?」
「はい。『証』の伝説には勇者の手の甲には『証』の紋章が浮かんでいたと伝えられています。ミドリさんにも紋章があるのでは?」
「え?マジ?」
確かに左手の甲に絵馬に浮かんでいた紋章と同じ形の痣が出来ていた。
「なるほど。確かにその痣からは魔力を感じます」
「魔力感じちゃったよ」
「言語の壁を繋げているのかもしれませんね」
その魔力が俺に回って変換とかされてる感じ?
便利ー。
英語とか韓国語とか勉強してた俺ら馬鹿らしいな。
「そっか帰れないのか……」
両親にはそろそろ自立しろよとずっと小言を言われ続けていたよな。
会社には『絶対行きたくない』とは思ってなくとも、『行きたくない』とは思っていた。
別に彼女とだって別れて悲しんでくれる人とか居ないし?(別れる前でも悲しんでくれたとは到底思えないが……)
「まっ、いっか」
「良いんですか!?危機感無さすぎじゃないですか!?」
「死にはしないでしょ」
なんやかんや大丈夫でしょ。
「あの……、死ぬかもしれませんよ……?」
「どっちの世界で生きてても死ぬよ」
「はぁ……」
「ユキのメイド服可愛いね。俺メイドさん大好き」
「…………大丈夫なのかなこの勇者……。あとこの服はこのザーファリアの女性の共通衣装です」
「マジで!?」
この国の女の人ほぼメイド服!?
民族衣装がメイド服って事!?
最高だな!
ちょっとワクワクしていると忘れていた大きな体が視界に映る。
「……ところで俺と君はなんでこの寝てるスキンヘッドに何で襲われてたの?」
「今更!?」
スキンヘッドの着ている世紀末な衣装が男性の服装だとしたら嫌すぎるぞ……。