プロローグ
リアルが忙しいので投稿はゆっくりです。
ここは、鬱蒼と木々が茂った薄暗い山の中にある登り道。
軽自動車一台が辛うじて通り抜けることができる幅しかない山道だ。
そこへ現れたのは一台の四駆タイプの軽自動車。
グゥウオォォン!!
660ccのエンジンが金属のうなり声を上げながら、その細い山道を登っていく。
スタックすることなく登っている途中で運転手は何かを踏んだのを感じた。
「うおぉっ!! 」
突如、右の前タイヤが滑った。
「あっぶねぇ! なんだ!? 何か踏んだか? 」
それを何とかクリアし山道を少し登り切ったところで車を止めた運転手は車から降りた。
その運転手は男性だった。
「あそこか? 」
そして後ろに振り返ると駆けだした。
そこには車の轍に白い何かがつぶれていた。
「あちゃー、蛇かぁ。しかもコレ白蛇じゃん。ヤバイなぁ、御使いさん惹いちゃったか……」
男性はつぶれた白蛇を持ち上げると道の端に置いてつぶやいた。
「白蛇さん。次に生まれる変わる時には、つぶされないようにね。」
そう告げると男性は車に戻り、四駆型軽自動車を動かした。
ブロロロロロォ!!
車が去った後、霧が周囲を包むように発生した。
そして一人の老人が白蛇の前にどこからともなく現れた。
まるで霧から実体が現れたようだった。
「フム、御使いがこのように死んでしまうのは不憫じゃな。どれ…… 」
老人が手にした杖のようなものを白蛇に押し付けると白蛇は宙に浮いた。
「どれ、この御使いの魂は…… 」
老人がさらに何かをつぶやくと白蛇は白い光に変化した。
「さて、お前さんは死んでしまったんじゃが…… どうなりたい? 3つまでなら叶えてやろう。」
そう白い光に告げると白い光から幼い声のようなものが響いた。
「なんでもいいの? それなら決してつぶされない強い身体がほしい。」
「ほう、それほどつぶされて死んだことが気になっておるのか?」
「それはそうよ。こんなところで死ぬなんて悔しいですもの。それに子供も残してないもの。」
白い光からの強い感情が波動となって老人に響いた。
「それと変身できるようにしてほしい。この体じゃなかったらつぶされないもの。」
「ほう変身とな! それは変化でも良いのかの? 」
「それでもいい!! 」
「ほう。ではおぬしの願いは、潰れることの無い強き身体、それと変化の法が使えるようにということじゃな!」
「はい!!」
「そうか、そうなるとこの世界では些か問題があるのぉ。さてどうするか…… そうじゃ! あの世界じゃ! あそこならまぁ大丈夫じゃろう!! 」
老人が隣に漂う白い光に向けて告げると、白い光は何かに引っ張られるように空間に吸い込まれそうになった。
「あの貴方はもしかして! 神様!?」
「ほっほっほっ! いかにも八百万の神の一神じゃよ。 さて次の生はよりよく生きるようにな。」
「あっありがとうございます!! 」
「ほっほっほっ。 後一つはよく考えて臨むようになぁ……」
その声を聴き終えると同時に白い光は宙に吸い込まれて消えた。
そして老人も周囲の霧と同時に消えていった。
白い光が消えた場所には小さな祠があるのみだった。
次に白い光が知覚したのは硬い何かに覆われた狭い空間だった。
「んっ!この感じは……これなら! えいっ!! えいっ!! 」
暗闇の中で尻尾を必死に動かした。
ピキッ!
ピキッピキッ!!
ピキィィィン!!
「やっと出れた!! やっぱり卵だ!! 」
そして眼の前にうっすらと光を感じると周囲を見回した。
やがて眼が慣れてくるとそこに広がった光景に思わず目を疑った。
そこにいるのは黒いトカゲに大きな羽が生えた生き物だった。
そう、ドラゴンである。
「へっ??????」
生まれたばかりの元白蛇ちゃんは頭が混乱していた。
そこへ目の前に居た三体のドラゴンが話しかけてきた。
「おおっ!白い龍じゃ!なんとめずらしい!!」
「あっあなた、私たちの子供に白龍が生まれるなんて!」
「まぁまてレイ。 この子は手足がないのだが、大丈夫なのか? 鋭い爪も、空を飛ぶ羽も無いのであれば龍として生きていけるか? 」
年老いているドラゴンがどうやら自分が珍しいと言っていることは理解できた。
その両隣に居るドラゴンが私の親だということも何とか理解できた。
そして私が前世の姿そのままだということも理解できた。
「まぁ本当だわ。 この子は手足も羽もないのだけどちゃんと飛べるのかしら? 」
レイおかぁさんが私を持ち上げて言った。
飛ぶ?今、飛ぶって言ったの?
「そうじゃな。レイの言う通りじゃ。この子は本当に龍族として生きていけるのじゃろうか? マスロはどう思うかの? 」
年老いたドラゴンがレイおかぁさんから私を受け取ると顔を近づけてきた。
少し息がくさい。
「ホワイトドラゴンのように希少種で生まれる子は少ないと聞いています。過去にホワイトドラゴンが居た時は我らと同じ体だったと聞いているんですが…… 」
私のおとうさんだと思うドラゴンがおじいさんドラゴンから私を受け取った。
えっ私のからだそんなに変ですか?
「この子がせめて浮くことでもできれば練習もしてやれるのだがなぁ。」
そういうとそっと私を卵の隣に下ろしてくれた。
浮く? 浮くってなに? 宙に浮けとでも?
何言ってるのそんなの出来るわけ……
そう思っていると、何か尻尾にムズムズする感じがした。
これは前世では感じたことのない感覚だ。
そう思って尻尾を見るとうっすら光っていることが分かった。
感覚を信じて尻尾を円にして、そこに腰かけるように体を下ろしてみた。
うおっなにこれ?
なんか体が浮くんですけど!
「おおっ!なんとこの子は宙に浮いておるぞ! 羽が無いのに宙に浮いておる!! 」
周りの大人のドラゴンたちが、ざわめきはじめた。
「えっこんなの見たことない」
「この子はなんで平然と宙にういてるの?」
「いきなり魔法を習得して生まれてくるとか意味不なんですけど」
「まさか、ホワイトドラゴンは皆こうなのか?」
などなど驚きと好機の目が元白蛇ちゃんに降り注いだ。
それと同時に小さなドラゴンたちが集まってきて周囲を取り囲んだ。
「うわぁすげぇ!」
「この子、手足もないけど宙に浮いてる!」
「ねぇねぇレイさん、私ホワイトドラゴンなんて初めて見たわ!」
「レイさん、この子はオス?メス?僕、オスがいい!」
などなどいろんな言葉が飛んでくる。
もう私の頭と情報処理能力はイッパイイッパイです。
思わず声が出た。
「いきなり言われても困る。私生まれたばかりなんですけどぉ!! 」
周囲のドラゴンに緊張が走った。
そして空白の時間が少し流れると沸いたように驚きの声が上がった。
「「「「「えええー! 」」」」」
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