狩りの教え
いつまで続くか説明回。
魔術と父親と
主人公のポテンシャルは高いです。
何も変わらないいつも通りの朝を迎えた。
三人で朝食を摂る。その後片付けをする。
いつもと違うことといえばジークさんが少し楽しそうな顔をしていることと、昼の弁当を三人分作ったことだろうか。
「今日は弓の扱いをお前に教える」
弁当を詰め終わった僕にジークさんは突然そんなことを言い始めた。
「弓ですか?」
「あぁ、何かあった時狩りができた方がいいだろう。またいつ戦いがあるか分からんからな…」
「まずはつがえ方からでしょうか?」
「いや、まずは弓の作り方からだ。手元にないこともあるからな!とりあえず、外に出よう」
「行ってらっしゃい」
と、フェリアさんに見送られながら僕達は家から出た。ジークさんは家から出ると庭|(と、言っても柵で囲っているだけだが)にある切り株に腰掛けた。
「お前は、魔力を扱えるんだったよな?」
「まぁ、一応は」
「じゃあ、生成魔術はどうだ?とりあえず手本は見せるが」
と、言うやいなや右手に魔力を集め始めた。瞬く間の間に彼の手に弓が作られていた。
「すごいですね」
と、それしか感想が出ない。魔術を実際に見るのは今の僕にとっては初めてであった。
「やれるか?」
ジークさんが聞いてくる。
「やってみます」
生成魔法。原理は本で読んだ知識によるとオドを元に元素を持つマナを集め形にする。というものだ。
世界に溢れる魔力。所謂マナと呼ばれるものは動物、植物、はてには一部の鉱物などに吸収され、その単体のオドになり、また何かしらの要因によって放出されたオドがまたマナとして循環することによって保たれている。
動物のオドは外に出ても元素を持たないマナであるとされているが植物や鉱石などのオドは外に出た時に元素を持つマナになるといわれている。
この元素を持つマナというのが面白いもので、魔術を使った時にある程度この元素の影響を魔術は受けるのだ。例えば水辺で水に関する魔術を使えばいつもより大きい効果が得られる。逆もまた然りだ。
今回僕が生成するのは木製の弓。そして、ここは森である。木の元素を持つマナは潤沢にある。
「木の精よ。この弓に必中と不壊の加護を」
目を閉じ、魔力を右手に込めた時。口から自然と出たのは詠唱だった。もちろん本当に当たるかは使用者の腕次第であり、壊れずに使うには手入れが必要だ。この程度の魔術なら気休めの願掛け程度の効果だろう。
目を開けると右手にはしっかりと弓が握られていた。弦もついてる原理はよくわからないがそれが魔術というものなのだ。
「上出来だな。経験があるレベルでうまい。流石は俺の息子だな!ハッハッハ!」
「それは、嬉しいです」
僕は記憶を失う前はもしかしたら弓職人の息子だったのかもしれないな…
「では、さっそく実践だ!的に当ててもしょうがない獲物の動きは本物を見るのが一番早い!」
「え…」
あまり他の人のことを知らない僕でも、ジークさんは結構適当な人だと思う。さっきの魔術試行の時も指導とかはなかった。1回やってできなければ指導はしてくれたのだろうか?
少し困惑している僕を横目にジークさんは森へと歩いていく。僕は、その後に続いた。
「まず、大事なのは音で相手を探すことだ。視界に捉えるのはその後でいい」
大きな木を頑張ってよじ登っている間の僕にすでに安定感のある太い枝へと登りきっているジークさんが声をかける。
「2時の方向から鳴き声と足音が聞こえるな。こっちに向かってきてるな」
頑張って登りきった僕は耳をすませる。が、はっきりいって聞こえない。
だが、少しすればその姿を目に捉えることはできた。通常サイズの猪の魔物″ボア″だ全長は2mぐらいだろうか。
「射ることは出来るか?」
そう言われてはやるしかない。僕は出来るか?やれるか?などと言われるとどうしても成功させたくなる性分らしい。
「頭を狙え」
ジークさんの教えは本当に適当だ。だが、一撃で仕留めるのならそれが正解なのは確かだ。
「はい」と、短調な返事をしたあと僕は矢を弓につがえる。当然矢も生成したものだ。
魔力を矢に込めながら狙いを定める。音を聞き獲物の動きをよく見る。そして、放つ。
僕の一矢はボアの足に当たった。当然仕留めることは出来ずに間髪入れずに続けて放ったジークさんの矢が仕留めた。
「まぁ初めてで獲物に当てられるだけですごい。お前は、意外に才能があるかもしれないなぁ…明日は剣でも振ってみるか?」
ジークさんは嬉しそうだ。
「是非」
新しい経験を得るのは楽しい。ただそう感じていた。
そして、数日後には普通に後悔をした。
主人公は元々高めの身体能力と日々の薪割りで腕の力は強め