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共通2-B① おくりび


「送り火!お前に決めた!!火属性妖怪召喚!」

「なんか、違くない?」


だって妖怪集めゲーやりたいけど稼いだ金は学費に消えるからソフト買えてないんだもん。


「いや、まあリアル妖怪ハンターズしてるからいいか」

「えー」


送り火を連れてパトロールへ向かう。


「あっちにいるみたい」


――妖の気配がして、走る。


「はあ……」


気配のした河川敷に行ってみると、写真を見ながらため息をつく和服男がいた。


「あの、天気予報で雨が降って川が増水するそうなので、そこにいると危ないですよ」


雨が降るというのは嘘で、危ないのは本当だ。


「そうなんですか、それはど……え!?」

「なにか?」


私を見た途端に和服男が慌てた。


「いえ、なんでも」

「さっきため息をついてましたけど、なにかあったんですか?」


この男はとても怪しいので尋問しないとだ。


「えーっとあの……」


赤くなったり青くなったりモジモジとして煮えきらない。

これが流行りの草食系男子ってやつね。


「それはともかく、早く行ったほうが……」


《強い力を持った人間の気配があるぜぇ……》


――ついに妖が現れてしまった。


「お嬢さん下がってください」


和服男は妖に弓を構えている。

目がさっきまでの気弱そうな雰囲気とは違う。


「貴方、あの妖怪が見えるの?」

「はい、やはりお嬢さんもですか?」


この男は何者で、私に妖怪が見えていると思ったのはなぜか。

気になることはあるが、今はあの妖を倒すのが先だ。


《おいそこの男、キサマの願いを言え。一つだけ叶えてやるぞ》


妖は弓に怯まず和服男に声をかける。


「結構です」


願いを叶える代わりに魂を寄越せパターン。


《ならば女、お前でも良い》

「余計なお世話」


こんなわかりやすい取引に応じるほど追い詰められてはいない。


《俺の名は魍魎だ》

「毛量?」


なんか毛生え薬みたいな。


《ちげーよ魑魅魍魎のほうだ!……良い忘れていたが、俺は縁結びの神だ》

「百歩譲って祟り神の間違いでしょ」


無駄話はしたくないので、さっさと祓いたい。

しかしこいつは結構、いいや私より強い。


《俺はそこの男からLOVEの波動を感じて願いを叶えにきてやった》


ああ、写真を見ていたのは恋煩いだったわけね。

禍々しい妖気しか感じられないので祓わなくてはならない。


「願わないのなら、願わせるまでだ」


魍魎が私たちに手をかざすと桃色の糸がまるで意思あるかのように無数にうごめいた。


通りがかった人間に魍魎の姿は見えていないが、なにやらカップルが出来ていく。


《あの糸に絡まったものは憎しみあいながらも離れられないのだ》

「なんて嫌なキューピッド」


あいつの糸が邪魔だがどうしたらいいんだろう。


「は、送り火!あの邪魔な糸を焼き付くして!」

「嫉妬の炎が~恋人達を~焼き付くしてく~爆発しろリア充!」


恋の糸は怒りの歌によって焼かれた。


《くっ……麺殿罪(べんでんざい)ですら絶てぬ縁を!》


辞書によると麺殿罪とは恋人を引き裂いて嫌いな相手とくっつけるという神で魍魎と似て非なる存在らしい。


「ふむふむ、仲間にするにはラーメンをあげるといい……ね」

《ふ……ただの人間かと思えば、妖を使役しているのか》


「だからなに?」


――和服男に私の正体がバレるのは面倒。

うんざりしていると、矢が魍魎の足元に刺さった。


「僕は貴方の力を借りるつもりはありません」

《せっかく俺が結んでやろうとしたのに、己で道筋を切り開くというのか……》


興味をなくしたように、奴は背を向ける。


《実につまらん奴らだ》

「自分が楽しくもないのに誰かを楽しませるなんて無駄だから」


――魍魎の体は糸に包まれ、地へ吸い込まれるように消えた。

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