書斎にて
お父様の書斎は、魔法学、歴史学、料理のレシピ本に至るまで、古今東西さまざまな本が並んでいる。
許しをもらって、読み漁ったこともあるけども、沙耶として慣れ親しんだ言葉は一つも見つからなかったっけ。
奥の書斎机には、書類や地図が山積みだ。
ソファに向かい合って座ると、なんだか落ち着かずスカートの裾を握りしめた。
今更のこと過ぎて、なんて切り出せばいいか。
「それで、エマの話はなんだい?」
「婚約者候補の件につきまして」
「あの坊やとのあれか もう忘れたかと思っていたよ」
「忘れてなど、、私ももうすぐ入学し、寮に入りますし、急にこの家に関する事が気にかかるようになりましたの」
ちょっと無理やりだが、なんとか格好がつく理由だろうか。
「エマもそんな歳になったんだねぇ カナンの何が気にかかるんだい?」
「私は、カナン様の婚約者候補を辞退したいと、考えております」
言った!言ってしまった!
「カナンの婚約者候補を辞退!面白い事を言うねぇ、エマは」
怒ってる!? 政略結婚賛成な考えですか、父上は!?
「サレニー家と王家の結びつきがより強固なものになるとは、分かっています でも、カナン様の婚約者など私ではとてと、、うぅっ」
ハンカチで目元を覆う。 泣き落としだ。
効果があったようで、お父様がうろたえる。
「そうだねぇ。エマが言うなら、あの坊やも納得するかもしれないね あんまり会わせたくなかったんだけど、、明日ユグドラシル家に行って、本人に直接話してきなさい」