運命の相手
「あ、婚約者じゃなければいいんだ」
ぽろっと口をついた言葉が、すとんと腑に落ちた。
「悪役令嬢と婚約してないカナンがヒロインとくっつこうが、振られようが、サレニー家への影響は無いんじゃ?」
こっちの世界では、8歳の時点ですでにずれている。
婚約者ではなく、婚約者候補なのだ。
はっきり解消させてしまえば、いいのではないか。
なんとかカナンとヒロインを引き離し、カナンとエミリーの婚約を成約させて、結婚にいたるのも安定ルートといえばそうだろう。
カナンの好感度を中途半端に上げたエンドでは、
「キミのことを好きだったけど、卒業後はすぐにエミリーと式をあげるんだ」とか、カナンが言っていたから、カナンとエミリーが結婚するエンドも存在していた。
しかしできればそれは選びたくない。
卒業の時点でまだエミリーは18歳。
何度でもやり直しできるゲームと違って、この世界はある意味現実。
入学式から別のルートを選びなおすことはできないのだ。
「もしかしたら、卒業式の次の日目覚めたら、8歳のあの日に戻ってましたっていうループパターンあるかもだけど、それだとちょっと長すぎる。。」
私自身、恋愛がしたくないわけじゃない。 ただ後悔したくないのだ。
15歳で恋に落ちた相手は、一生添い遂げられるほどの運命の相手なのだろうか。
「恋愛って、もっと簡単にできると思ってた」