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猛き者達  作者: 堀周太郎
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八波冴子は付き合い始めて、六年経つの男がいた。男の名は川見新一。雑多な品物を扱うブローカーだという


冴子はお互いに恋愛を楽しむ年齢でもなく、結婚を考えなければいけない年齢なのかもしれないと思いはじめていた。二ケ月前、川見にプロポーズをされていたが、即答はせず、親の健康上を理由に返事を少し待ってもらえるように頼んでいた


川見は笑顔で


「いいよ。良い返事を待ってるから」


それから、二ケ月が過ぎていた。川見は返事をしない冴子に催促する様子もなく、戸惑いも見せなかった


―返事をしない理由?なぜだろう別に何の不満もないはず..優しくて生活力もある人なのに返事をできないのはなぜかしら..


冴子は喉元に何かが引っ掛かる感じがするのはどうしてだろう..と以前から気になっていた


コンビニへ、小さな女の子を連れた親子が冴子達の前に入っていった。女の子は父親と母親の両手にぶら下がるように甘えている


「家族..か」


冴子は小さく呟いた。川見は扉を開けて冴子が入るまで待っていた


―こんなに気遣いの出来る人なんていない..


冴子は川見との出会いから今までの想い出を振り返りながらぼんやりと店内を歩いていた。買いたい品物は何も言わなくても男が知っている


―結婚か..返事しょうかな


川見は支払いを済ませると冴子を見つけ近付いてきた


「何か他に必要なものあった?」

「ううん..何もないよ。ありがとう」


川見は微笑み、じゃ、帰ろう。と前を歩いて扉を開けると、冴子が出るのを待った


冴子が二、三歩店を出ると同時に扉の方で大きな音がした。冴子は振り返った。川見の閉めた扉が外に出ようとした女の子に激しくぶつかったようだ


女の子は頭を抑えうずくまっている。川見は一瞬、扉を振り返ったが、素知らぬ顔で冴子に方へ歩いて来る。冴子の視線はうずくまる女の子から、微笑みながら近付いて来た男へと移った


―この人の優しさは..


喉元につかえていた何かが、消えた瞬間であった


冴子の視線は、川見の目から首筋へ、そして黒く細い糸が揺らめいている左肩へと移っていった

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