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昭華の庭でゆるり  作者: 鑫鑫


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第32話 鼻揺《びよう》

庭っ娘たちがふわっと揃い始め、静けさはすぐに天然の声で柔らかく揺れた。

昨日の「くしゃみ」にまつわる賑やかな話題は、庭っ娘たちの間で心地よい笑いを生んでいる。


芳華は前髪を整えながら、昨日の儀庭での出来事を思い出して、笑いをこらえるように肩を震わせた。


芳華:「昨日、“ぱしゅんっ”って可愛いくしゃみが聞こえたけぇ、絶対に瑠映じゃと思ったんよ」


瑠映は色壺を抱えた腕を揺らし、光の反射を見ながら苦笑した。


瑠映:「うちはくしゃみすると色層が乱れるけぇ、『しゅん……』って静かにしか出んよねぇ」


夜凛は舞衣の袖を軽く払って、その場で自身のくしゃみの勢いを再現しながら言った。


夜凛:「夜凛のくしゃみは『はっ、ひらりっ』って舞うみたいに跳ねるけぇ、すぐ分かるじゃろ?」


琴雪は深読み書を開き、くしゃみの“余白”から感情を読み解く深読みの技術を、どこか誇らしげに語った。


琴雪:「くしゃみの前の“吸う余白”を聴けば、その人が何を考えとるかだいたい深読みできるんよ」


黒耀は巻物を整え、足元の影の揺れを確かめながら言った。


黒耀:「くしゃみの影の跳ね方で、誰かすぐ分かるよね」


紅牙は自身の「静の気配」をまといながら、昨日、儀庭に響き渡った“ある強烈なくしゃみ”を思い出してぽつりと言った。


紅牙:「……あの『ぶわぁっっっ!!』って白石が震えるほどのくしゃみは……」


芳華は自分の鼻をちょんと押さえて、ぽかんと首をかしげた。


芳華:「……あ、うちじゃ。白石の粉が舞うけぇ、くしゃみすると全力で出てしまうんよ……」


天然の揺れはふわりと収まり、儀庭の朝が静の余白へ戻っていった。



【昭華の豆知識】


●『鼻揺(びよう)


昭華王朝において、くしゃみの勢いによって周囲の光や影、気配が一時的に揺らぐ現象を指す言葉。当時の文化では、豪快な強いくしゃみは「精神の調和(心の乱れ)」を表し、逆に極端にか細いくしゃみは「存在感(色の薄れ)」と結びつけられ、身体の健やかさや心の状態を測る一つの指標とされていた。


●"吸い余白すいよはく"


くしゃみが放たれる直前に生じる、深く息を吸い込む一瞬の静寂(余白)のこと。深読み文化においては、この「吸い余白」の長さや呼吸の調和が取れている者は心が極めて安定しており、余白が細かく乱れている者は、何かしらの「迷い」や「焦り」を抱えていると解釈された。


儀庭の朝は、今日もゆるりと始まり、ゆるりと騒がしくなる。

それこそが昭華王朝の、愛おしい日常であった。

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