帰り道
デートの帰り
僕らはバレたくなかったのにあまりにもあっさりとバレてしまったので、衝撃を受けほぼ放心状態だった。霞との会話もあまり続かない。
...。
沈黙が続く。田舎の夜は静かで、車のエンジンの音と矢のように飛んでいくバイクの音しか聞こえなかった。
「馨ってなんでバレたくなかったんだ?私はまあ、あまり人に言えるようなものじゃないから、バレたくなかったんだけどね。」
「うーん。バレたくない理由か。」
あまり考えたことがなかったのかもしれない。この世の中、おそらく女装が趣味な人は少ない。僕はその少数派の1人ということになる。この世界、少数派は異端者として見られてしまう。実際のところ、今はまだ認められてきた方だが、まだ両親の世代には、理解し難いものかもしれない。男が女の格好をして雑誌に出るなんて、もってのほかだと思う。だから異端者とは見られたくなくて、言えないかもしれない。もちろん女装は悪いことではない。男装もそうだ。でも言える勇気があっても、僕は人には言いふらさないと思う。いくら仕事でも。
「そうだなあ。まあ色々理由はあるさ。」
「...。」
あれ?僕は助手席に目をやった。
「あ、寝てる。」
疲れて寝てしまったのだろう。あと考えすぎて、質問に回答するのに時間がかかりすぎたのも要因の一つだろう。車は眠くなるからしょうがない。
「う〜ん...。%+.~^*€?,&?,(」
なんて言ってるかはわからないが、寝言が聞こえる。
「馨...¥°%+:^=」
僕が霞の夢の中にいる。あと相変わらず何言ってるかわからない。そんなとこも可愛いな。
「馨...大好きだよ。」
「!?!?!?」
突然すぎて度肝抜かれた。いま、今大好きって言ったよね?明らかに言ったよね。
「は!?Σ(・□・;)」
霞が飛び起きた。
「私なんか言ってた?なんか言った気がするんだけど。」
これは『寝言言ってたよ』と言うべきだろうか。
「言っちまえよ!何が起こるかわからないだろう?ドキドキハプニングが起こるかもしれないだろ?」
悪魔の馨が耳元で囁く。あとドキドキハプニングってなんだよ。
「だめだよ!ここは心の中にしまっておいて、何にも言ってないよって言えばいいよ!」
天使の馨はこう囁く。
「うん。馨、大好きだよって言ってたよ。」
悪魔の勝ち。
「へ?私そんなこと言った?」
「そこだけはバッチリ聞こえた。」
「...。」
黙り込んでしまった。対向車線を走る車のライトで赤くなった霞の顔が照らされる。平常心を保て僕!今くらいはキザになれ!いつもは奥手なんだから!
「僕も大好きだよ。」
個人的に精一杯の一言が出た。さらに赤くなっているのがわかる。
「ちょっ!これ以上やめて!じゃないと襲うよ!」
「...。はぁぁ!!」
理解するのに時間がかかった。こっちがやめて欲しいわ!そんなこと言われたら軽く理性飛ぶだろ!
その後、霞の家に着くまで、理性を保てるように頑張った2人であった。
霞の家
「今日はありがとう。送ってもらったし。」
「いえいえ、こちらこそ。じゃあね。おやすみ。」
「うん。バイバイ。次は私の家でね。おやすみ。」
今日は楽しかったな。
ちょっと待ってよ。次は私の家でねって...。もしかして!
その夜、馨は興奮のあまりあまり寝れなかったんだとか。