彼氏とおうちデート・前編
霞視点のお話
私は今ピンチである。
「次は私の家ね」
あの時の言った言葉をとても後悔している。
私の家は何もない。ゲームもなけりゃ、DVDプレイヤーもない。リビングにあるのは、机とソファと寝床とテレビ。そんな感じで物が少ない。だからやることがないのだ。
「お家デート 何する」
って検索しても、
『基本ダラダラしてます』
とか
『DVDみていちゃいちゃします」
とかそのようなことしか出てこない。
私、馨の家で何したっけ?ゲームだけか。
〜数時間後〜
そろそろ馨が来る。
「あっそうだ!」
私はふと思い立って冷蔵庫を開けた。しかし何もない。
インターフォンが鳴った。私は馨に合鍵を渡しているので、どうぞとだけ言って玄関の前に立った。
「おじゃましま...。なんで玄関の前で仁王立ちしてるの?」
馨が不思議そうにこちらをみている。
「家についてすぐで申し訳ないんだけど、もうそろそろお昼時だから、一緒に料理でも作ろうかなと思って。でも材料があまりにも少なかったから、一緒に買い出しに行きたいなと思って」
私はすごく申し訳なかったが、お家に留まり続けるのはとてつもなく暇だと思うので、どうせなら一緒に昼食を作ろうと思った。
「おぉ!それいいね!買い出し行こ!」
馨はノリノリであった。
近くのスーパーへ車を走らせた。
そして、お肉、にんじん、ジャガイモをカゴに入れた。もう何を作るかわかるよね?そう!肉じゃがで〜す!
「霞!糸こんにゃく忘れてる!」
「あ、いかんいかん」
私は糸こんにゃくをかごに入れて、レジに並んだ。
「じゃあ僕が払うね」
「え、いいよ。私が払う」
「なんでだよ。僕が霞のうちに行きたいって言ったんだ。わがまま聞いてもらったのに、一銭も払わないのは違うと思う」
「でもお昼ご飯を一緒に作ることを提案したのは私だし」
「なら割り勘で行こう。僕払っておくからあとでちょうだいね」
「わかった。じゃあ先行っとくね」
ジャガイモ1kg:680円
にんじん1kg:1350円
糸蒟蒻:68円
合計:2098円
ちょっと高く無いか?最近の物価高騰は大学生にゃしんどい。どの家庭もしんどいと思うが。なんとかしてくれ!と馨は心の中で悲痛な叫びをあげた。
私は先に車に戻った。
「霞。買ってきたよぉ」
「ありがとう。いくらになる?」
「800円でいいよ。端数とかめんどくさいから」
「いいのかい?」
「えぇ。端数くらい気にしなくていいよ」
「ありがとうございます」
私は馨に800円を渡した。
「家戻りますか。しゅっぱーつ進行!」
と馨は元気良く法定速度の範囲内で、アクセルを思いっきり踏んだ。
帰宅
しっかりと手を洗い、早速肉じゃがに取り掛かる。
肉じゃが。それは日本料理の歴史を学ぶ上で基本となるもの。日本人たるもの失敗してはならない。
「ねぇ霞、一つ大事なことを言っていいかい?」
「どうしたんだい?」
「玉ねぎ買ってなく無い?」
玉...ねぎ...。
「ま、まあなしでも行ける」
なんとかゴリ押したらいける。はず。
気を取り直して、早速始めていきましょう。
まずはジャガイモを丁寧に洗い、皮をピーラーで剥いていきます。
「霞。こんな感じでどうかな」
馨が一生懸命皮を剥いたジャガイモは、まだ皮をまとったままだった。馨は不器用なのだろうか。それとも料理に慣れていないのだろうか。
「うーんもうちょっと頑張ろうか」
「はい」
共同作業で皮を剥いているのだが、私の方が圧倒的に皮を剥くスピードが速い。
「できました」
薫も終わったようだ。
続いてジャガイモの芽を取り、一口サイズにカットしていきます。
「霞。芽を取るのは俺に任せて!」
「怖いけど...。いいよ包丁気をつけてね」
馨は包丁のあごの部分で芽をくり抜いていく。しかしなんとも危なっかしい。みてられない!
「これは私がやろう。馨はにんじんの皮を剥いておくれ」
「わかった」
私は芽をくり抜いて、一口サイズに切った。
そろそろにんじんの皮を剥き切ったとこだろう。
「にんじんの皮剥き終わったよ」
「おお、ありがとう」
そこには先ほどのジャガイモとは見違えるほど、綺麗にされたにんじんの姿があった。
にんじんでピーラーの腕をとてつもなく上げている。
私はにんじんを乱切りにして、ジャガイモと一緒にフライパンにぶち込んだ。私はそこに肉を入れ炒める。
「馨!糸こんにゃくを洗ってくれ」
「僕さ、今思ったんだけど、肉じゃがって白滝じゃない?」
あ...。
「まあいいさ。あんま変わんないよ」
「そうだね。細かいことは気にしちゃダメだね」
そう言いながら、薫はこんにゃくを洗った。
そしてフライパンにこんにゃくをぶち込んだ。
そしてそこに鰹出汁をそそぐ。沸騰したら灰汁を取り、醤油、砂糖を加える。押しぶたをして煮詰めていく。
なんやかんやあって完成。煮詰めてる間に米を炊き、味噌汁も作った。これがザ・日本食ってやつか。
いつも1人で作る肉じゃがよりも、美味しく感じた。共同作業を経て、作り上げた一品は、高級料理店の料理人も真似できないほどの、深い愛情を感じる。要するにめっちゃうまいってこと。
「僕ら天才じゃない?」
自分が作った料理を、笑顔で頬張る馨はとても可愛かった。
「そうだね。お店行けるかも」
「肉じゃが一本で?」
「それじゃあ店が潰れちまうよ」
馨くんは計算ができないわけでは無い。計算間違いをしたわけでは無い。
後普段料理しないから、肉じゃがのレシピ合ってるかわからない。




