大切な日
我々飛鳥馬馨と萩利霞は付き合って3年が経ちました。
今日はその3年目の記念日である。なのにわたくし、飛鳥馬馨は今日という日まで、記念日を忘れていたのである。
「男性はこう言うの覚えるの苦手なんだよ」
と言い訳したいところだが、色々と炎上しそう。まずはじめに主語がでかい。世の中の男性、全てがそうではない。そして言い訳はするもんではない。自分の非を認めるべきだ。さあどうしようか。記念日って何すんだ、そもそも。今日は幸い、授業が午前で終わる。半日で何ができる?
そして時は過ぎ。
現在時刻14時。
何も思い浮かばない。
行動に移せない。
最悪だ。最低だ。
「馨。なんか顔色悪いよ?大丈夫?」
と霞が心配してくる。いいんだ霞。こんな記念日を忘れる、クズな男に心配なんかしなくていいんだ。ごめんよ。
「ごめん、霞!俺、今日記念日なことすっかり忘れてた。ほんとにごめん!」
僕は全力で霞に謝った。
「え?あ!そ、そうだぞ!今日は記念日なんだぞ!今日って記念日だったの!?」
あれ?(°▽°)
「もしかして霞も忘れてたの?」
「あ、その〜ソウカ、キョウキネンビダッタノカァ」
目が泳いでる。焦ってるのか?
「ごめん!私も完全に忘れてた!」
自白した。
「どうする?なんかする?」
「うーん。私は馨の家で2人きりでもいいかな。あまりいつもと変わりはないけど、日常が幸せだったりするし、特別な日だからって、特別なことしなきゃいけないわけじゃないと思うし」
「じゃあ。家でゲームでもするか」
「そうしよう」
翌日
ばっさーと同じ講義を受けに行くことになった。
「お前、昨日3年記念日だっただろ?なんかしたのか?」
なぜばっさーが本人よりも記念日のこと覚えてるのかは謎だが、そこはあえて突っ込まなかった。
「いや、家でゲームしたくらい」
「お前、記念日なのになんもしてないのか」
「いや、霞がね、記念日だからと特別なことしなくてもいい。日常が幸せだ。って言ってくれたんだ。僕も霞の話聞いたらその通りだなと思ってさ」
「おまえ、気ぃ遣われてないか?」
と翼は言いたくなったが、こらえた。
「ゲームしかしてないのか?」
「うん。夜通し」
「へぇ」
「すごく盛り上がったよ。白熱しすぎて汗かいちゃった。試合数もすごかったよ。最終的に、霞が限界を迎えたから、そこで終わったよ」
「すごい盛り上がったんだな。もうそれ特別な日じゃねぇか?」
「確かにそうかもしれない」
自宅
「ただいま」
「おかえり」
「あれ?今日もいるのかい?」
霞とはまだ同棲していない。昔はたまにくるって感じだったが、最近は毎日のように僕の家にいる。
「馨に話さなきゃいけないことがあって」
「えっ、なに?」
「ちょっと座ろう」
なんなんだ。もしかして別れようとか?昨日記念日迎えたばっかなのに?記念日忘れてる系彼氏は嫌だとか?僕は霞の指示通り、霞と向かい合うように、椅子に座った。
「話ってなんだい?」
僕の心拍数はとてつもないことになっている。それは顔にも出ていただろう。
「私たち同棲しない?」
「ドウ、セイ?douseiってなんだ?」
「同棲だよ。一緒に住むの!私たち3年も付き合ってるし、お互い社会人まであと2年じゃん。同棲しててもおかしくないでしょ?」
「じゃあ僕と一つ約束してくれたらいいよ」
「約束って?」
「霞の家に行きたい」
「わ、私の家?」
「ちょっと前に、次は私の家ねって言ってくれたじゃん。でも一度もいけなかったじゃん。だから一度行かせて欲しい」
「わかった」
「じゃあ約束ね。この約束も果たせそうだし、同棲するか」
「同棲できたら、昨日の特別な日も、毎日になるかもね」
僕は人生でこれまで、感じたことのない幸せを感じた気がする。
「そうだね」
と僕は霞に向かってはにかんだ。




