女性らしさ
〜大学〜
MeTubeを始めた次の日の大学。大学はいろいろな文化が入り混じったところである。だから全然バレることがある。一応トップモデルだから、ストーカーとか盗撮とかあったら嫌だな。いや、流石に自惚れすぎか。自分に「馨よ。調子に乗るな」と言い聞かせる。
「おっす〜」
「ヒッ」
「どっから声出してんだ」
「考え事してたからびっくりした」
僕を驚かした(勝手に驚いただけ)やつは、高校からの友達である。名前は板取 翼という。趣味は写真や動画の撮影。僕は勝手にばっさーって呼んだる。こいつは俺の仕事を知っている。だからもうすでに、女装してることがバレている。バレたのは高校2年の頃だ。
〜高校2年の時、とある休みの日〜
自宅で写真撮影中
「よし、今日の女装コスはうまく行ったな。ツイッツーとミンスタに載せる用の写真撮ろう」
自分のスマホを固定し、とびっきりの女性らしさを出した。
ガチャ
その時、勝手にドアが開いた。
『勝手にドアが開いた?玄関閉めてなかった?もしかして泥棒?』
僕が怯えているのも束の間、部屋の扉が開く。
「おっす、馨。遊びに来たぞ...?」
現れたのはばっさーだった。そうだ、こいつに合鍵渡してるんだった。
2人のいる部屋は静寂に包まれた。
少しして静寂を切り裂くように、バッサーは言った
「お前、そういう趣味あったんだな」
ばっさーの言葉で、僕の飛んで行った魂が戻ってきた。そしてハッとして、とりあえず突っ込んだ。
「何、人の家に勝手に上がり込んでんだ!お前そういう趣味あったんだ。じゃねぇよ!なにしてくれとんじゃいワレェ!」
「にしてもお前可愛いな」
「えっ///そうかな///」
「やっぱ可愛くねぇわ」
「おい」
こんな感じでバレてしまったのだ。それから、ばっさーは僕のSNS用の写真撮影に協力してくれるようになった。撮影の協力をしていくうちに、写真に興味を持ったというわけだ。
「そういやMeTube始めたんだな」
ばっさーはもう確認済みのようだ。流石、僕の親友である。
「いや大変だったよ」
「だろうな。一発目にしちゃ面白かったよ」
「なんで上から目線なんだよ」
「あの撮影さ、見学してもいい?」
「えっいいけど、なんで?」
「MeTubeとかの動画も興味があってね。今まで俺が撮ってきた映像は、風景とか動物とか自然とかを題材にしたもんばっかで、人を主題にした動画を撮ったことがなかったんだよ」
「なるほどね。今度撮影する日教えるから、おいでよ。霞にも伝えておくね」
「マジ!?サンキュー!ありがとう。じゃ授業行ってくる。お前は?」
「僕次は空いてるから、ちょっと違うとこ行ってる」
「オッケー。じゃあまた」
「じゃね」
霞は同じ大学だから、ここのどこかにいるだろうし、さっそく伝えに行こう。しかしどこを探しても霞がいない。どっか授業行ってるのか?今日はいないのか?今日大学行くよって本人から連絡があったのに。どこに行っちまったんだ。
だいぶ探してもいなかった。ずっと探して疲れて、ぼーっと大学の外を歩いていたら、イケメンとぶつかった。
「あっ!ごめんなさい!大丈夫ですか!?」
咄嗟に謝ったが、なんだかイケメンの様子がおかしい。ずっと笑っているのだ。そんなに僕の謝罪が面白かったのか?と思い、少し不快になった。ただあまりにも笑いすぎている為、おかしいなと思い、顔を覗き込んだら、男装をした霞だった。
「え!霞!?」
「やっと気づいた」
そう言う霞の笑顔は破壊力抜群だ。
「男装を極めし者は、人を騙せるのさ」
「いつもと雰囲気が違ったから、誰かわかんなかった。めっちゃイケメン」
「だから今日、私の周りに人だかりができたのか」
「まあそれは置いといて、なんで男装?」
「今日たまたま雑誌の仕事があって、メイク落としたり、カツラ脱いだりするのがめんどくさかったから、そのまま来た」
「なるほどね」
目の前にいる霞は、別世界の人間のようで、柔らかく、暖かく、包み込むような笑顔は美しかった。男の格好をして、男のように振る舞ってるくせに、奥には隠しきれないほどの、『女性らしさ』が溢れていた。とにかく、イケメンなのにかわいいという、謎の生命体が目の前にいるということだ。
「じゃあ私急いでるから行くね」
「わかった。じゃあね」
「ばいばい!」
そう言って走り出した霞がまた可愛いの集合体なのであった。
あっ!せっかく霞にあったのに、撮影に来ること伝えるの忘れてた!まあ家帰ったらでいっか。ていうかスマホあったわ。