校閲
「では再生します」
僕はパソコンを開き、再生ボタンを押した。
動画の長さは5分弱。よくある自己紹介動画だ。
5分はあっという間に過ぎた。笑いこそ起きなかったものの、編集力の高さはあの社長も驚いた様子。
「いや〜やっぱりトップモデルと言ったところだね。挨拶の時は、どんなクオリティのものを出してくるかと思ったけど、そんなに心配しなくても良さそうだ」
社長のハードルは超えたっぽい?
「MeTubeの活動はもう君たちに任せる。このクオリティなら毎回校閲しなくてもいい。これからも頼んだよ。ただし健全なものにしなさい。R-18コンテンツは数字は伸びるが、手を出してはならんよ。数字という承認欲求に囚われすぎんように。囚われてしまうようになったら、あとは堕落するだけだからな」
「わかりました。健全に全力で取り組んで参ります」
「じゃあこの動画をさっそくUPせい」
早速、MENSgirlとアイマイミーの今月号にMeTube公式チャンネルを始めたことを告知した。するとチャンネル登録者が1日で1000人を突破。雑誌の力を実感した日であった。再生数や登録者数が増えてくのを見て、霞は目が離せないようだ。
「私たちめっちゃ人気じゃない?」
霞は人生で一度も経験したことないような、承認欲求爆上がりの数字に目をキラキラさせている。
「まさかここまで伸びるとは思わなかったな。もっと10人とか50人スタートだと思ってた」
「こりゃ身バレしたな...」
霞の声から身バレへの悟りと諦めが伝わってきた。
「そうだな...」
まだ同じ大学のほとんど接点のない人だったらバレてもいいが、友達とか親とか親戚にはバレたくない。身内であれば身内であるほどバレたくないものである。しかしMeTubeの活動は覚悟の上だ。バレないように祈りながら、更新していこう。