終章 2話 母のお墓参り
終章 2話
母のお墓参り
かなり寂れた場所にお墓があった。
もう何年も放って置かれているお墓たち。
寂れて風化し、なかったかのように忘れ去られている。
その中に母のお墓があった。
まずは4人で丁寧にお墓を掃除した。
クリーンという魔法をかけようとしたシロウを愛はとめた。
シロウはすぐに愛の気持ちがわかった。
ほうきとチリトリで葉っぱやゴミを集めてビニール袋に入れていった。
桶に水を汲み、ブラシで苔を落としてく。
長年の汚れは簡単には落ちなかった。
「やっときれいになったね。」
「これで墓前にお花を供えられる。みんなお掃除手伝ってくれてありがとう。」
「お母さん喜んでるといいな。」
仏教らしい菊などの花束。
白いバラが中心のキリスト教的花束。
炎が買った高価な花束。
お墓が一気に華やいだ。
墓石もピカピカ輝いている。
お線香に火をつけてお供えした。
これまで一度もお墓参りに来なかったお詫びと、産んでくれた感謝。
バツイチになったこと、父がなくなったことの報告。
新しい出会いがあったことを伝えた。
「お母さんごめん。お父さんに孫を見せてあげられなかった。ろくに話もできなかったんだ。だめな娘でごめんなさい。
でもね。こんな私にも仲間ができたの。みんなすごく頼もしいの。
だから今、私は幸せです。」
あのままシロウと出会えなかったら私はどうなっていたんだろう。
怖くて考えつかない。
異世界やら魔法だの悪霊とか盛り沢山な旅行だったなぁ。
「愛ちゃん。私と一緒に異世界に行ってもらえませんか?」
「私は、バツイチだし、別に強くもないし、綺麗でもないよ。」
「私は愛ちゃんを愛しています。私の世界と種族では結婚というものはありませんが、番というものはあります。
私はあなたの永遠の番になりたい。」
「愛ちゃん、この世界は私や炎にまかせて!安心して異世界に行って幸せになって!」
「そうそう、女は愛されてなんぼだぜ。」
「二人とも……」
「うん。シロウ。私も異世界に行く。シロウの番になる。」
シロウはその言葉を聞くと愛をぎゅっと抱きしめた。
「シロウ、一つお願いがあるんだけど。」
「なんですか?」
「スズキのエブリイも一緒に持っていきたいんだけど……」
「お安い御用ですよ。」
シロウは時間をかけて愛とスズキのエブリイを中心に丁寧に魔法陣を展開した。
魔法陣が白く輝いた。
「エリンちゃん。炎くん。本当にありがとう!元気でね!」
「シロウさん。愛ちゃんのことよろしくね!不幸にしたら許さないから。」
「愛さん、シロウさんにたくさん迷惑かけて楽しくな。」
愛とシロウは異世界に旅立っていった。
「あっという間に消えちゃったね。」
「何にもなかったみたいだな。
ま、とりあえずエリンを家まで送っていってやるよ。」
とその時、
バラバラバラバラッ
ヘリコプターの轟音があたりの静寂を粉々に砕いた。
「坊ちゃま、ご無事で何よりです。エリン様もおかわりないようで安心いたしました。」
執事はヘリコプターから降りるとキョロキョロとあたりを見回した。
「愛様とシロウ様はどちらに?」
「二人は異世界に行っちゃったの。」
「まあ、新婚旅行みたいなもんだ。」
「それでは愛様の願いは無事に果たせたのですね。愛様お幸せに。」
三人は抜けるような空を見上げた。




