プロローグ2 再出発
離婚して実家に戻ってきた。
愛知から東京に出て24歳で結婚した。
5年続いた結婚だった。
元夫は小説家になることが夢だった。
そんな夫を私は必死で支えた。
稼いでも夫がお金を使うの繰り返しで一時は水道まで止まりかけた。
とある人づてで、FXで稼ぐ方法を勉強しそこそこ稼げるようになったが
それがよくなかったのか元夫はアルバイトに行かなくなってしまった。
私はお金のことよりも、元夫が小説家になるという夢を追いかけなく
なってしまったことのほうがショックだった。
私といるとこの人がダメになってしまう。
元夫がパチンコに出ている間に荷物をまとめて離婚届に記入してそのまま
愛知の実家へ帰った。
三か月後離婚届を出したという連絡が届いた。
愛知の実家はいわゆる限界集落で、一番近いお隣さんでも一キロ先だ。
父親はあまり語らない農家。
「離婚した。お金がないからしばらく家においてほしい。」
「わかった。」
父は怒るでも喜ぶでもなく、実家に戻ることを了承してくれた。
かなり規模を縮小した農地の手伝いをする以外、特にすることはなく
私は暇を持て余し軽自動車をキャンピングカーに改造するYOUTUBEに
はまっていた。
「げほっ、げほげほ。」
夜になると父の苦しそうな咳が聞こえることが多くなった。
「お父さん、ひどい咳だよ。一度病院に行こう」
何度も言ったがまるで取り合ってもらえなかった。
ある朝。
ドサッ
台所で父が倒れた。
「お父さん!」
大きな声で呼びかけても何の反応もない。
──救急車を呼ばないと
震える手で携帯で110番をかけた。
どのくらい時間がたったのかわからない。
救急隊が駆け付けたときにはもう父はなくなっているのだと分かった。
そのまま父と救急車にのり、近くの総合病院についた。
別れの一言なしに父は逝ってしまった。
田舎のお通夜と葬式はなかなか大変だ。
とても一人ではできないので近所(とはいっても10キロ四方)の
知り合いの方々に手伝っていただき、なんとか式は終わった。