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戦国時代の電気屋さん  作者: 朝風清涼
第6章 
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さぁ困った!!

 ようやく信長と会うことが出来た俺だったが、つい藤吉郎様を助ける為、少しだけ信長の未来を口にしてしまいその事で俺は織田家の家臣として召抱えられる運命となってしまった!。


「でだ、巽?…わしが義元の首を取った後、次はどうなるのじゃ?やはり美濃攻略か?」


「は…はぁ…そ、それはですね…」


(いや、待てよ!何でもかんでも話すのは上策では無いかも…それに、マジ歴史が変わるかも知れない…え?でも、すでに未来の道具をこの時代の人間に見せた事でもう変わってるかも?…あぁ、何だか頭がグチャグチャになってきた!)


「で、どうなのじゃ?わしは稲葉山を落とすのか?」


「は、いずれは信長様の城になります!しかし、そこで信長様にお願いの儀がございます…」


「なんじゃ?何でも申してみよ!!」


「はい、実は私は恐れておるのです…私が未来を口にする度に私の居た時代が変貌してしまう事を…」


「未来は変わると言いたいのか?」


「は、私も織田家に召抱えられた以上、信長様の天下取りにお力添えをしたく思っております!しかし本来死ぬべき人が生き、生きるべき人が死んでは未来の構図が変わり、信長様の本来歩むべき道も違ってくる可能性が出て来るやも知れません!」


「ふむ、もしかするとわしが天下取りの前に死ぬ運命になるやも知れぬという事か?」


「はい、なので…信長様がどうしても窮地な状況に出くわした時にだけ私に相談していただければそれほど歴史は変わらないと思います…」


 まぁこんな事をしでかした者なんて誰も居ないわけだし、本当に歴史が変わったという証拠もある分けがない!なら…今はこの流れに身を任せ、いずれ令和に戻る方法を探すのが俺の使命だ!。


「そうか、先に何が起こるか知ってしまえば人は怠惰になる!あい分かった!その時はわしを(いさ)めてくれよ!」


「は、ははぁ~~…有り難き幸せーーー!!」


「殿!100両お持ちしました!!」


「おぉ、欄丸!…それを巽に!!」


「はっ!……どうぞ…お納めを……」


 美少年の<森欄丸>は俺の前に和紙を広げ、帯び付きの小判を10個乗せた!。


(おいおい!この小判ってマジ純金じゃね?…は、初めて見た!!卸値220円のペンライトが小判100枚になった!!)


「の、信長様…本当に頂いてもよろしいのですか?」


「構わぬ、取っておけ!……そして猿よ!」


「は、はは!!」


「此度の巽の件、天晴れであった!にて、猿に<台所奉行>を与える!近日中に<ねね>と共に武家長屋へ越し新たな役に精進せよ!!」


(ん?<ねね>…あ!<おねちゃん>の事か…そう言えば…どっちが正式な呼び名なんだろう?…ま、本人は<おね>と言ってるんだし<おねちゃん>でいいか…)


「せ、拙者が<台所奉行>…あ、有り難き幸せーーーー!!!」


 俺のように金品ではなく、藤吉郎様は新しいお役を頂く事になったが、彼にとってはまた一歩出世の道を踏み出したのだから最高の御褒美になったはずだ!。


「そこでだ!巽よ!」


「は!!」


「この<ぺんらいと>を100本早急に用意せい!!それを各重臣達に分け与える!!」


「は?……えっ!!……そ、それは!!」

(俺が居た令和なら在庫も腐るほどあるし即納は出来るが、こんな戦国時代で用意出来る訳ないだろうが!)


「ははは♪殿!!巽殿ならその御主命、難なくやりとげてみせまするぞ♪」


(おい!!何言ってるんだ!!)


「そうか!期待しておるぞ!!猿、巽!大儀であった!!今宵は美味い酒が飲めそうじゃ!!わはははは♪」


「殿からのもったいなきお言葉!この藤吉郎、一生胸に刻んでおきまするーー!!」


(何一人で感激してるんだよ~~~!!)


 こうして俺はあの<織田信長>と拝謁したのだが、清洲城に向かう前よりも一層心がダークサイドに浸っていた…約一名を除いて…。


「台所奉行~♪台所奉行~♪わしが殿の城で台所奉行~~♪早く<おね>に伝えたいのぉ~♪」


 夜も更けた城下町を抜け、俺達はとりあえず藤吉郎様の(お屋敷?)へと向かっていた。


「藤吉郎様、何のん気に歌など歌っておるのですか?手打ちの危機だと言うのに…」


「ん?どうしてじゃ?お主が<ぺんらいと>をたった100本用意するだけではないか♪」


「藤吉郎様、大事な事を忘れてませんか?」


「台所奉行~♪台所奉行~♪…ん?何がじゃ?」


「私……あの姿のままこの時代に来たんですよ……腰に巻いた電工ベルト以外手ぶらで……」


「わははは♪巽殿?わしには分かっておるのだぞ♪実は何処かの神社の下に<ぺんらいと>や、わしのまだ知らぬ未来の道具を隠しておることを♪ふふ、もうわしにだけ正直に申せ♪ほれ、ほれ!」


「仕事中に屋根から落ちてこの時代に来たのです!大量の道具なんて持って来れる訳無いでしょ!」


「……!!!……げっ、なら殿にお渡ししたあの1本が最後の1本なのか?…」


「そうですよ!!なのに、藤吉郎様は信長様の前であんな大見得を……」


「だーーーーーー!!!どうするのじゃ?どうするのじゃ?こんな事態、殿の耳にでも入ればせっかくの台所奉行どころか、わしらの首も飛ぶぞ!!」


「だからこうして私も悩んでいるのですよ!!」


 ようやく事の重大さに気付いた藤吉郎様は、腕組をし俺の周りをうろうろ徘徊し始める!それはまるで猿回しの猿かのように…。


「と、藤吉郎様?」


「い、いかん!打開策どころか、打ち首の事しか頭に浮かばん!!…と、とりあえず…わしの家に戻り<おね>に相談してみる事にしよう!」


「そ、そうですね…」


 昨夜から俺と藤吉郎様は一睡もしていなかったが、人間とはマジで自分の命の危険を感じると、全然睡魔に襲われなくなる事をこの時初めて味わった!。


「はぁ~、はぁ~…おね!おね!今帰ったぞ!!」


「何だい!こんな夜中に騒々しい!!……!!…ちょっと、あんた達どうしたんだい?」


 ほぼ競歩レベルの速さで藤吉郎様の家に戻った俺達は、息も絶え絶えで<おねちゃん>から差し出された柄杓(ひしゃく)の水を飲み干し気持ちを落ち着かせた。


「ふぅ~~、ふぅ~~…助かったぞ、おね!」


「あんた達、そんなに息を切らして帰ってくるなんて、まさか殿様の逆鱗に触れたんじゃないだろうね?」


「ち、違う!わしは次から台所奉行に取り立ててもらった…」


「あぁ、なぁ~んだ、それをうちに言いたくて走って帰って来たんだね♪それはそれはめでたい事じゃないかい!」


「いや、それは有り難いのだが……もっと深刻な事態になってしもうたのじゃ!!」


「ふ~~ん、ま!いいから早く上がんな!!話はそれからだよ!」


 俺と藤吉郎様は、昨夜の出会いから信長との拝謁内容など全ての経緯を夜が明けるまで<おねちゃん>に打ち明けた。


「…やっぱりね……初めて会った時から、たっちゃんはうちらと全然違う感じがしてた!そう、470年後の未来からやって来たんだ♪ねぇ?ねぇ?その470年後のおなごってどんな感じなんだい?」


「おね!今はそんな悠長な話をしている訳にはいかんのだぞ!」


「何言ってんだい!そもそもあんたが調子こいてこんな事態になったんだろが!たっちゃんこそいい迷惑だよ!このスカポンタン!!だからいつも<調子こくな>と言ってただろが!!」


「す…すみません…」


「でもさ、たっちゃんがこの時代にやって来たのは屋根から落ちたからだろ?……じゃぁさ、もう一回屋根から落ちたら元の時代に戻れるんじゃないかい?」


「おね…それはわしも考えておった…だがな、それが間違いだとしたら…巽殿の命にも拘わる恐れがあるので心配なんじゃ…」


「う~~~ん、それもそうだよね~~……あっ!…川に飛び込むってのはどうだい?…近所の子供らが夏に遊んでいるあの川♪」


「おぉ!あの川なら橋も架かっておるし高さも屋根に近い!川底もかなり深いし安全に飛び込むことが出来るの♪」


 つい「飛び込むのは私ですよね?」と、この夫婦につっこみたかったが、今は藁をも掴みたい一心だったので、俺もその案に賛同した。


「しかしの…わしは気がかりでたまらんのだ…」


「藤吉郎様…何がです?」


「うむ……仮に上手く成功したしとして…また巽殿がこの時代に戻って来てくれるかどうか……」


「何だい!自分だけ打ち首なるのが怖いって言いたいのかい?」


「違う!わしは…巽殿と出会うて大きな夢を持てたのじゃ!巽殿と共に殿の天下取りを見たい!友としてな!その時、わしは誓ったのじゃ!殿と巽殿の為ならこの命、いつでも差し出そうと!」


「藤吉郎様…」


「巽殿、友としての頼みじゃ……どうか、またこの時代に戻って来ると約束してくれまいか?…一度こうしてこの時代にやって来たのじゃ、二度目は無いなどとわしは信じぬ…」


「藤吉郎様……分かりました!約束します!!その証として、未来の私がとても大事にしている物を藤吉郎様にお預けいたします!それを返していただく為、またこの時代に戻ってきます!」


「巽殿!感謝いたす!!」


「で、たっちゃん?その大事にしている物ってなんだい?」


「それは小一郎様の家にあります!この羽織を借りる前に着ていた私の着物に入れてます」


「あははは♪なら、まずはその羽織を小一郎ちゃんに返してから川に飛び込む事にしよっか♪」


「は?…はぁ?……」


「よし!そうと決まれば今からわしの生家に出立するとしよう!おねも着いて来てくれるよな?」


「勿論だよ♪たっちゃんが見事に川へ飛び込む姿を拝みたいからね♪」


 いまいち俺は納得出来ないまま、小一郎様に借りた羽織を返しに藤吉郎御夫婦と共に<中村>に向かう事になった。


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