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戦国時代の電気屋さん  作者: 朝風清涼
第5章 桶狭間

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これからの計画

 令和の時代から戻り、俺は小一郎様、藤吉郎様と共に清洲城へ赴く機会が増えていた…それは駿河の国の今川義元がいよいよ上洛を始めるという噂がこの尾張まで流れていたからだ。

 季節は冬、この冬をどう乗り越えるかで尾張の命運が決まる…歴史では織田信長の勝利となっているが、何故か浩一の最後に出た言葉がずっと俺の頭に残っていた…。


「うぅ~~…今日も冷えるのぉ~…巽殿(どの)、何処かで一杯ひっかけて帰らぬか?」


 両手を袖の中に入れ、身体を丸くさせながら藤吉郎様は鼻を赤くしていた、俺達が令和の時代に居る間、かなり清洲城内で[おいた]を派手にしていたらしく、ついに信長様がその事で減俸処分を藤吉郎様へ言い渡し、それがおねちゃんにもバレたのだが、不思議とおねちゃんは藤吉郎様を許していたのだ。


(ま、令和ツアーのおねちゃんの行動を考えたら、彼女も許すしかないだろ…)


「そうですね、今日は私が支払いしますよ♪」


「お、おぉ♪…さすが巽殿(どの)!…今ではわしよりも金持ちじゃからの♪…わしはおねに許してはもらえたが、お小遣い無しにされたからの……たまに街で菓子を買うておるわっぱが羨ましく見える…」


「は…はは…それはお辛いですね…」


(あるじ)?…寄り道はどうかと思います…きっとおね殿(どの)は小腹を空かせて待っているやも知れませぬ…(あるじ)達の帰りが遅くなると、ゆうげの時間も遅れまする…」


 楓さんはこの時代に帰るとまた剣客モードに切り替わり、あのメイド衣装はおねちゃんの服と一緒に箪笥の中へと大切に封印した。

 そんな今の彼女は着物に動きやすい袴姿、頭は定番のポニーテールに戻っていた。


(楓さん、この時代に戻って来てから、何かと理由を付けては俺の警護をしてくれるけど、その分おねちゃんとの関係がギクシャクしているような気がする…令和の時代であの二人に何かあったのか?)


「まぁ~まぁ~、楓ちゃん♪…どうせ[おね]ならつまみ食いをしておる!…心配無用じゃ♪…な、だから楓ちゃんもわしらと一緒に飲もうではないか❤」


「愚問、その代金は(あるじ)が支払うのですよね?…従者が(あるじ)のお金で飲むわけにはいきませぬ!…私は先に失礼しますので、(あるじ)と飲んでいてください!」


「おいおい、楓ちゃん、そうなると巽殿(どの)の警護は誰が?…」


「それも愚問、藤吉郎様は武士、ここから藤吉郎様の家まで目と鼻の先…そのくらいの距離ならば(あるじ)の警護も出来るはず…酒を馳走される以上、その程度の役目は必要…では、これにて御免…」


 楓さんは俺に目を合わす事無く先に藤吉郎様の家に戻ってしまった、ただ俺にはおねちゃんと二人にさせるほうが少々心配なのだが…。


「楓ちゃ~~ん、わしは楓ちゃんと飲みたいのにぃ~~…待ってぇ~…楓ちゃ~ん!」


「…藤吉郎様、その辺で演技はよろしいのでは?…楓さんはもう戻りましたよ…」


「うむ、さすが巽殿(どの)、楓ちゃんの性格をよく知っておるの!…巽殿(どの)、先に小一郎が酒処で待っておる、我らも急ごうではないか!」


「はい!…では、店に着いてから、間もなく始まる桶狭間の戦いについて話をいたします」


「あの楓ちゃんの事じゃ、巽殿(どの)殿(との)の命で戦場に同行すると知れば必ず着いてくるはずだしの、剣客とはいえ(いくさ)の場におなごは似合わぬ…」


「えぇ…」


 こうして俺達は小一郎様の待つ店に向かい、俺なりの(いくさ)法を藤吉郎様達に伝えた、当然ながら彼らの耳には神の行いのように聞こえている。

 それもそうだろう、ドローンに気圧計、いまだに想像も出来ないパソコンとやらの箱、それを一つ一つ俺は彼らに説明し桶狭間において自分の戦い方を伝えた。


「そ、空から今川の陣を把握し義元の居場所を見つけるのですか?…その、どろーんとやらで?」


「えぇ小一郎様、それを扱う事が出来るのは友人の藤本浩一、桶狭間の合戦前に私が彼をこの時代へ連れて来ます、無論、彼も承諾しております!」


「それは心強いですが、いやはや雲を見ずとも雨を予測出来る道具まであるとは…巽殿(どの)、そのぱそこんとやら、是非私に扱い方を教えてはくれませぬか?…」


「そうですね、私もパソコンは小一郎様に打って付けだと思っておりました、充電器具も持って来てますし、まだ桶狭間の戦いまで時間はある、ゆっくり私が伝授いたします♪」


「おぉ、良かったの小一郎!これで体の弱かったお主も、やっと殿(との)戦場(いくさば)に行けるぞ!…それも、巽殿(どの)と重臣達の中に堂々と居る事が出来るのじゃ!…大出世じゃの♪」


 やはり藤吉郎様は小一郎様の事をずっと気にかけていたのが分かる、この織田家存亡をかけた戦で小一郎様が司令塔になり戦を進めるのだ、成功すれば間違いなく織田家の重臣になれる!。

 そうなれば藤吉郎様より小一郎様が上役(うわやく)になるのだが、それでも藤吉郎様は小一郎様の出世を心から望まれていたのだ♪。


(いいな、兄弟って…)


「ありがとうございます、兄上!…うぅっ、まさかこの私が戦場(いくさば)でお役に立つ日が来るとは…うぅ、夢にも思っておりませんでした…うぅっ、巽殿(どの)には感謝してもしきれませぬ!」


 これで間違いなく未来の豊臣時代に俺の打ち首と切腹は無くなっただろう♪。

 まぁ、おねちゃん問題が残っていると言えば残っているのだが…今はその事よりも桶狭間の戦いに神経を集中させるのが先決だ!。


「藤吉郎様、桶狭間の戦いから織田家は修羅の道を歩む事になります!しかし、そこに藤吉郎様の出世の道が見えてくるはず…機会を見逃さないでくださいね!」


「うむ!今以上に粉骨砕身し励むぞ!さぁ、今宵はおねに怒られる覚悟で遠慮なく大いに飲もうではないか♪」


「…私の金ですけどね…」



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