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戦国時代の電気屋さん  作者: 朝風清涼
第4章 令和のおなごは何かと面倒だ

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別れの時…

 この令和の時代に来て私もおね殿(どの)も驚きと喜び、そして…瞳殿(どの)と掛け替えの無い思い出を胸に刻むことが出来た…。

 そして今日…あと半刻ほどで、私は令和の姉様(あねさま)と私達は今生の別れをする…。

 もう(とき)が無い…それに気付いているおね殿(どの)も何処となく淋しそうで、いつもの[あははは~♪]は無かった…。


(かえで)さん、おねちゃん、忘れ物はありませんか?」


 先に藤本殿(どの)とこの倉庫なる蔵の屋根に荷物を上げた(あるじ)が私達に声をかけてくれる。

 (あるじ)が言うには、すでに私達の時代は真冬になっているそうで、瞳殿(どの)がこれまで身に着けていた[ぼうかんぎ]なるモコモコの温かい着物を私とおね殿(どの)に手渡してくれていた。


「瞳殿(どの)…こんな高価そうな着物…本当にいただいても?…」


 浴衣に着替えた私とおね殿(どの)は、[だうんじゃけっと]なる羽織りを両手で抱え最後の挨拶を瞳殿(どの)と交わしている。


「えぇ、これは本当に(かえで)ちゃん達がこの令和に来て未来人の私とお友達になってくれた証…安物だから気にしないでね♪…あ、それとね…」


 瞳殿(どの)は皮製の袋から小さな冊子を私とおね殿(どの)に差し出した。

 その冊子の表面には私が気に入った[ふわふわクマちゃん]の絵が描かれ、おね殿(どの)の冊子にはウサギちゃんが描かれている。


「これは?」


「ミニアルバムよ…ふふ♪…さ、中を開いて見て♪」


「えっ!…瞳…殿(どの)…」

「わっ!…いっぱいチェキがある!」


 私達が開いた冊子には色々な表情をした私やおね殿(どの)、そして瞳殿(どの)が描かれたチェキが貼られていた!。


「私が巽君達と一緒にみんなが楽しくしている所を色々とスマホで撮っていたのよ♪」


 そう言えばよく瞳殿(どの)もスマホを手にし、何やら音を鳴らしていたのだが、まさか彼女が我らのチェキをしていたなんて全く気が付かなかった。


(私…こんな顔もしていたんだ…)


 茶店(ちゃみせ)で左手にあごを乗せ、ぼんやり窓の外を眺めている表情…外で肉を食べる(うたげ)の際、(あるじ)と楽しそうに話している姿…おね殿(どの)と大阪城を眺めている姿など、次から次へとこの令和に来てからの思い出がこの一冊に閉じ込められていた。


「…あ…これ…(かえで)があの小さな箱に喧嘩を売ってた時のチェキだ♪…あは♪…これは[めいろきった]でユリアちゃんと一緒のやつ♪………そ……そして…………浩ちゃんや……たっちゃん……ぐすっ……瞳ちゃん……(かえで)……これ、昨日…みんなで…たっちゃんのお店の前で並んだ時のだ……ぐす……みんな……いい顔で……笑ってるね……ぐす……う…うぇ…」


「…お、おね殿(どの)……」


「おねちゃん……(かえで)ちゃん……これだけは忘れないでね…あなた達の時代に戻っても、460年先の未来から…二人の幸せを願っている友達が居る事を……おねちゃん、(かえで)ちゃん…私の人生にとても大切な思い出を与えてくれて…ぐす…ありがとう…私も淋しくなったら…このアルバムを眺めるからね…」


 瞳殿(どの)の瞳が次第に潤み始めていく…すでにおね殿(どの)の頬からは細き滝のような涙が伝っており、その二人の姿に私も胸が苦しくなっていく。


「……や、やだ!…う、うち…まだ瞳ちゃんとさよならしたくないよーー!…」


「おねちゃん…でも、もう時間が無いのよ…わ、私だって…ぐすっ……うっ……おねちゃんや、(かえで)ちゃんと…ひっく、ひっく…さ、さよならなんてしたくないよ…でも…ありがと…2人共、幸せに…なってね…おねちゃん…(かえで)ちゃん…絶対、忘れないよ…」


「う、う……うぇ~~~~~~~!……瞳ちゃぁ~~~~~ん!」


 もはや自分を抑えられなくなったのか、おね殿(どの)は声をあげながら瞳殿(どの)にしがみ付き、我らの前ですら遠慮せず泣き始めた!。


「お……おね…殿(どの)………そ、そんな事を……されると……ぐす……わ、私も…」

(わ、私は…剣客…なのに……も、もう!……この張り裂けそうな気持ちに…耐えられない!)


「ぐすっ、か…(かえで)ちゃん?…どうしたの?…」


「ひっく……ひっく……ひ、瞳…あ、姉様(あねさま)!……ひっく、ひっく…あ、姉様(あねさま)~~!」


「か、(かえで)ちゃん!」


 今だけは非情な剣客を忘れたい、姉様(あねさま)を慕うただの妹になりたかった…姉様の元へ駆け出す私の瞳からは、すでに止め処も無く涙が頬から伝っている…。


姉様(あねさま)!……姉様(あねさま)ぁ~~~~…うわぁぁぁ~~~~~~ん!!」


「か、(かえで)ちゃん!……うぅ…私の為に…泣いてくれるの?……うぅっ……(かえで)ちゃん…おねちゃん……ぐすっ…ぐすっ…2人共…大好きよ!…うっ、うぅ…うえぇ~~~~~ん!!」


「うわぁ~~~ん!…う、うちも、瞳ちゃんが大好きだよ~~!…うわぁぁ~~~~~ん!」


姉様(あねさま)~~~~!……姉様(あねさま)~~~~!…えぇ~~~~ん!」


 姉様(あねさま)は、私とおね殿(どの)と両腕で包み込み、共に声を出し泣いてくれた…私は彼女の腕の温もりを一生忘れる事は無い…。


「あの子達を…この時代に連れて来てあげて良かったな淳一、しかし…残念だがそろそろ時間だ…」


「あぁ、次は桶狭間の(いくさ)前にここへ戻って来る……そして…桶狭間での主役は…浩一…お前だ…頼むぞ…」


「分かってる……それまでに瞳を説得しておく…それと…お前に伝えなきゃならない事もあるしな…」


「何だよ?…それ?…」


「…それは…俺がその偽りの戦国時代に行き、この目で確かめてから、お前に伝えるよ…」


「え?…偽り?…」


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