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戦国時代の電気屋さん  作者: 朝風清涼
第4章 令和のおなごは何かと面倒だ

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自分の心が見えない

 (あるじ)とあの淀川に現れてから3日が経ち、(あと)半刻で私達は藤本夫婦(ふうふ)と別れの(とき)を迎える。

 大阪城、メイド衣装の茶店、ショッピングモール、パフェ、緑色の高い[ビル]と呼ばれている塔、快適な乗り物、瞳殿(どの)の美味しい料理…そして…私が(あるじ)に恋なる感情がある事を教えてもらったのも、この令和の時代でだった…。



[昨日・ショッピングモールにて]



 私達は元の時代に戻る前、この時代の思い出として土産を買いに(あるじ)達とまた初日に訪れたショッピングモールへ来ていた。

 正直、今でもこの様な騒がしい場所は苦手なのだが、これで見納めだと思うと少し淋しい…。

 そんな中でぼんやりとこのショッピングモールを眺めていると、さり気なくおね殿(どの)が私に耳打ちをしてきた。


[(かえで)、昨日、うちと約束した事…覚えてるよね?…]


 何故かあのおね殿(どの)の言葉に不快感を覚えていたからか、その事は忘れたくても忘れる事は無かった…。


「はい、覚えております…」


[それならいいけど…]


 いつもの陽気な雰囲気を全く出さず、おね殿(どの)はすっと私からそよ風のように立ち去る…そんな彼女の後ろ姿を私はまた右手に(こぶし)を作り見詰めていた。


「どうしたの?…(かえで)ちゃん?…具合でも悪い?…車に酔った?…」


「いえ、何でもありませぬ…」


「そう、じゃぁ行きましょうか?…」


 皆でこの建物の中に入ったものの、私はいつおね殿(どの)(あるじ)に声をかけるのか気になって仕方が無く、自分が元の時代に持って帰る商品も考えてはいなかった。


「さ、何処から回ろうか?…(かえで)ちゃんは何か欲しい物とか、気に入った物はある?…巽君に案内させるわよ♪」


「え?…あ、(あるじ)と?…」


「だって、(かえで)ちゃんは巽君の警護役なんでしょ?…といっても、ここは警備員も常駐してるから、安全と言えば安全なんだけどね…」


 瞳殿(どの)の言葉に少し私は安堵してしまったが、そんな彼女の言葉をおね殿(どの)が聞き漏らすはずも無く、一瞬にして私の安堵は彼女に打ち崩されてしまう。


「あ、たっちゃん!…ほら、この前、うちに買ってくれたリップ!…また別のを持ちたいから、何処に売ってるのか案内してよ♪…(かえで)も瞳ちゃんに何か可愛い物を探してもらってね~♪」


「あ、ちょっとおねちゃん?…(かえで)ちゃんはどうするの?…」


「瞳ちゃんも言ってたじゃない、ここは安全だ!って…じゃ、また(あと)でここに集合ねぇ~♪」


 おね殿(どの)は私と瞳殿(どの)に笑いかけながら(あるじ)の背を押し、その場から逃げるように消えて行った。


(あるじ)……はぁ……)


 そんな(あるじ)とおね殿(どの)を、私は何も出来ないまま見送るしかなく、右手の平に喰い込む指先の感触だけが妙に痛かった…。


「しょうがない、それじゃ(かえで)ちゃん、私がその衣装に合うバッグを見立ててあげるから、上のフロアに行きましょ♪…ふふ♪…今回の経費は巽君持ちだから、私も買っちゃお❤」


 楽しそうな瞳殿(どの)とは違い、私の心は虚しかった…一体、何の為にこの時代に来たのだろう…私は今日まで一度も(あるじ)の役に立つどころか、迷惑ばかりかけている気がしてたまらない…。

 そんな私だから、おね殿(どの)は自分で(あるじ)(そば)に付き、私よりも自分の(ほう)こそ(あるじ)にふさわしいと認めてもらいたいのだろう…。


(いや、違う……もっとおね殿(どの)には深い考えがあるように感じる…それが何か…分からない…ただ、一つだけ分かるのは、おね殿(どの)は、私を(あるじ)から遠ざけたいという事だけ…)


 何故、そこまでおね殿(どの)が私を(あるじ)から離したいのか彼女の心が読めない、あの竹刀での打ち合いに負け、剣術以外の事で自分は(あるじ)の役に立つ所を見せ付けたいのだろうか?。

 いや、それならこうも私がイラつくのはどうしてだ?…(あるじ)の為になろうとおね殿(どの)は精進しているのに、それを不快に感じるなど…人として恥ずべき事なのに…。


(私は…ここまで度量の狭いおなごだったのか…)


 瞳殿(どの)に二階のフロアにある小物を入れる皮製の包みを売る店へと連れて来られたが、私は商品よりも(あるじ)達の事が気になり心ここにあらずだった。


「あら♪…このブラウンのポーチ、(かえで)ちゃんの衣装に合いそうよ♪」


 きっと瞳殿(どの)は私の為に色々考えてくれているのだろうが、商品に夢中になっている彼女を尻目に私はその店をこっそりと抜け出し、通路の端から吹き抜けになっている1階を見下ろしながら(あるじ)とおね殿(どの)を探した。

 これまで野鳥や森の(けもの)相手に弓の鍛錬を積んでいた私にとって、目立つ白き烏帽子(えぼし)を被っているおね殿(どの)を見つけるのは造作もなかった。


(……!…あ、あの明るく派手な店の前に居る……)


 (あるじ)とおね殿(どの)は、美しい異人のおなごが画かれた大きな絵を飾っている店の中へと入っていく、もしかするとあの店で(あるじ)はおね殿(どの)の[紅]を買ったのだろうか?。

 そんなおね殿(どの)の顔は笑顔に包まれ、無所気に(あるじ)の腕を引き奥へと進んでいく。


(あるじ)…)


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