戦国女子!チェキに挑戦する!
これから私とおね殿、それにユリア殿、この3人が[ちぇき]という絵になる!…果たして絵師の目には私がどの様に映っているのか少々不安だ…この時代に来て、幾度と鏡を見て自分の姿は知っているが、それが本当の自分の姿なのか疑わしい…。
(実の所、他の者には私が知る姿ではなく、別の容姿で眼に映っているのではあるまいか?…も、もし…とんでもなく私はぶさいくなおなごだったら?…)
いずれにせよその結論は間もなく出る!…ま、万が一…私の不安が当たっていたのなら、メイド衣装ではなく[頭巾]を瞳殿に買ってもらわなければならない事になる!…。
「お嬢様、この写真のように、みんな色々ポーズをしておりますが、お嬢様方はどの様な[ポーズ]にいたしますか?」
「えっ!…う、うちら…[坊主]になるの!…じゃ、これから髪を剃るの?…な、なら…[ちぇき]は…遠慮しとく…ま、まだ尼さんになりたくないし…」
「し、しかしユリア殿…この紙に画かれている者共は坊主ではありませぬが…」
「くすっ、まだゲームが続いているのですね、お嬢様、坊主ではなくて[ポーズ]です♪…ほら、皆様このように指をVにしていますでしょ?…これを[ポーズ]といいます♪」
「あははは~♪…ほんとだぁ~、みんな蟹になってるぅ~!…この時代には蟹の神様を奉る風習があるのかなぁ~?」
「本当にお嬢様はユーモア豊富ですね、これは[ピース]といいまして、楽しいとか嬉しいの表現を指で表しているのですよ♪…まぁ過去には平和を願う意味もあったそうですが…」
指で感情の表現をする…私の時代には無い風習だ…しかし、忍びの動作には[九字法]の印を結ぶ事はあるが、それとは違いこの者らは片手で意思の表現をしている。
「ユリア殿、こうして言葉を出さずに指を使い相手と会話が出来れば、忍びのお役にも使えると思うのですが…」
「え?…忍び?…で、でも…この時代には[手話]があるじゃないですか、耳の不自由なお人の為に、両手を使って会話をする手法が…」
「あ、あるのですか!…そ、それは是非私に伝授していただきたい!…一体、[手話]なるを伝授しているのは、どの流派でございますか?…もしや、甲賀?…」
「流派?……た、多分…福祉事業団ではないかと…」
「なるほど、[福祉事業団]流でございますね、心得ました!…また瞳殿に聞いてみます!」
「ねぇ?ねぇ?…そんな楓の修行話はいいからさぁ~…うち、[ちぇき]やりたい!」
「あ、はい、お嬢様、それでは準備いたしますので暫くお待ちくださいませ」
ユリア殿は店の中を見渡し、ぼんやりと暇そうに佇んでいるメイドのおなごを見つけると、その者に何やら声をかけに向かった。
(あの者が絵師なのか?…なるほど、絵の仕事が無いのであの様にぼんやりとしておったのだな…だが、おなごの絵師とは珍しい…それも、あの若さで…よほど師匠から厳しく叩き込まれたのだろう…)
「さ、お嬢様!…これからチェキを撮りますので、場所をあちらに移動いたしましょう♪」
ユリア殿に案内された場所は、私と同じ背丈の木が置かれている壁際だった、更にその壁には見たことの無い文字がチカチカと青や桃色の光りを放っていた…。
「あははは~♪…この壁に貼ってあるチカチカ、何だか綺麗だねぇ~~♪」
「お嬢様、このネオンは当店の名称なのですよ♪…では、この下に並んでチェキを撮りましょう♪」
「うん、分かったぁ~~♪」
(さり気なく店の名がある場所に連れてくるとは、ユリア殿も商売人だな…)
ユリア殿と壁際に立った私とおね殿の前に、先ほどまで暇そうにしていたおなごが小さな四角い箱を手にし立ち塞がる。
(何だあの箱!…まさか、仕込み針でも飛び出すのではあるまいな!)
「ユリア殿、あのおなごが手にしている箱は一体…」
「はいお嬢様、あの箱でチェキを撮ります、すぐに写真が出来上がる優れものでございます♪」
「写真?……あ、あの紙の絵ですね?……」
「ふぅえ~~、ユリアちゃん?…あんな小さな箱に絵師さんが入ってるの?…それともあの子が手にしている箱で絵を画くの?」
「くすっ、本当にお嬢様方は面白いですね♪…まぁ画くというよりは撮るのですが、すぐに絵が完成しますから、お嬢様方はあの写真の人のようにポーズを作ってみてください♪」
「あははは~♪…あのカニさんの真似だね~~♪…じゃ、うちは両手でカニカニ~~♪」
おね殿はご機嫌で蟹のハサミを作り、その両手を自分の頬に寄せた…。
(…両手でそれをすると、本当に[あほ]のようにしか見えない……)
「さ、浴衣のお嬢様も何かポーズを作ってください♪」
「えっ?…」
しまった、先におね殿が[ぴーす]なるポーズをし、つい私は彼女を[あほ]に見えてしまったからか、それを自分がやる事に対し恥かしさが芽生えてしまった!。
「わ、私は…このまま…た、立って…います…」
「それじゃ可愛くありませんよ♪…あ、これならどうですか?…右手の人差し指を伸ばして、その指先を下唇にそっと当ててる姿、きっとお美しいお嬢様なら素敵に見えますよ❤」
(なるほど、ただ指の先を下唇に当てるだけか…それなら恥かしくない!…)
「か、畏まりました…」
「そ、それと…ベレー帽のお嬢様は…本当にその…蟹のポーズでよろしいのですか?…」
「うん♪…みんなが片手なら、うちはその上の両手でやる♪…カニカニ~~~~~♪」
「そ、そうですか…」
こうして私はあの小さき箱を手にした絵師のおなごから、やれ顔を少し横にとか、身体を斜めにしろとか、もう少し笑顔を作れとか口うるさく言われながらも、初めての[ちぇき]を経験した。
「はい、お嬢様、写真が出来ましたよ♪」
絵師のおなごから手渡されたあの紙には正に私やおね殿、そして可愛い姿をしたユリア殿が瞬時に描かれていた!。
「な、なんと…こんなに早く絵が出来るとは……」
「皆様いいお顔をされていますね♪…浴衣のお嬢様は当店に来て欲しいほど可愛いですよ♪」
「こ、これが…私……ほ、本当に私なのですね?」
私の不安は大きくハズレてくれた♪…あの鏡で見た自分がこの紙の中に居たのだ♪。
「はい、紛れも無く可愛いお嬢様ですよ♪」
まだ修行の身である私は自分に叱責はしても褒める事などなかった…しかし、この紙に描かれている微笑んだ自分の可愛らしい姿をつい褒めたくなった❤。
(わ、私は…こんな顔も…出来るんだ……)
「いぃーーーーーーーっ!!…な、なんか…う、うちの姿だけ[あほ」に見えるぅ~~~~!…」
(…やっと気が付いたか…)




