戦国女子!メイドカフェの真髄を知る!
今、瞳殿の前には黒い汁の入った器が置かれ、おね殿の前には透明な器に緑色の汁とアイスが乗った飲み物が添えられた。
「それではお嬢様、もっとコーヒーが美味しくなるおまじないを始めますねぇ~♪」
「お、おまじない?……」
この場所に似合わぬ[おまじない]の言葉が出たからか、瞳殿も不思議そうな表情に変わった。
「はい、よろしければ皆様もコーヒーが美味しくなるよう一緒におまじないをしてくださいね❤」
「あははは~♪…面白そう~♪…うちやるぅ~~!」
[まじない]まで会得しているとは、やはりこの店のおなご達は只者ではなさそうだ!…この店の主とやら、裏では相当に恐ろしき頭目なのやも知れない!。
(まさか、ここで加持祈祷なる事を始めるのか!…だが、祭壇も護摩を焚くような場所などすら見当たらないが…い、いったい…どの様な[まじない]なのだ?…分からぬ…し、しかし、私も忍び極意を学んだ者!…ここはその[まじない]とやらの裏を暴く為、ユリア殿に合わせてみるか…)
「どの様な[まじない]をするつもりか分かりませぬが、私も受けて立ちましょう!…」
(ふっ♪…大和飛燕流には奥義[水鏡楼]がある、相手の動きを瞬時に捉え、それを我がものにし相手を封じる!…ユリア殿…そなたはすでに我が大和飛燕流に囚われている!…そなたが苦心して会得したその[まじない]とやらを私が完全に奪い、私がそなた以上の動きを見せてやろうぞ!)
「では、お嬢様!…コーヒーにお砂糖は何杯入れますか?」
「え、に…二杯で……」
(ん?…砂糖……糖?……あの貴重な糖を使うというのか!…なるほど、読めたぞ!…あの砂糖の甘さで瞳殿を至福の気持ちにさせる[まじない]と見た!…ふふ♪…所詮はその程度の[まじない」か…だが、ユリア殿!…我らはすでに[ぱふぇ]なる甘い物を食している!…ふっ、そなたの目論みも残念ながらここまで!)
「では、い~~~~ち❤、にぃ~~~~❤……」
ユリア殿は可愛らしい声を出しながら勺を使い、コーヒーなる汁の中に砂糖を二杯流し込んだ!…きっと今のユリア殿は心の中で(してやったり!)と、思っているはずだが、私はすでに見切っている♪。
(あの程度なら、奥義を使う必要もないな…これが[まじない]とは、拍子抜けも甚だしい…だが、[武士の情け]…最後までユリア殿に付き合ってやるか…)
「さぁ~、お嬢様!…今から[おまじない]を始めますので、一緒に私と同じ掛け声をお願い致します❤」
(何!…砂糖なるを入れるのが[おまじない]ではなかったのか!)
「あははは~♪…いつでもいいよぉ~~…」
「え?……え?……わ、私もやるの?…」
「勿論でございます、お嬢様のコーヒーでございますから♪」
「え?…」
「では、浴衣のお嬢様も御一緒にお願い致しますね~♪」
「わ、私に出来ぬ事などありませぬ!…そ、その汁に…ね、念を入れるなど朝飯前です!」
「あは♪…それは頼もしいです❤」
「私は精神修養も極めた者!…この様な汁に念を入れるなどたやすい!…ユリア殿以上にやってのけましょう!」
「さすがお嬢様、凄い修行をされたのですねぇ~♪…尊敬しちゃいますぅ~~❤」
「私とユリア殿とでは、これまでの生き様が違うのです!…さぁ、始められよ!」
「じゃぁ~~、いきますよぉ~~~♪」
(南無八萬大菩薩!…瞳殿の為、我に神通力を与えたまえ!)
私は瞼を閉じ、精神を集中させ、丹田に力を込めその時を待った!。
「ぐ~~~~~る❤……………ぐ~~~~~る❤……」
(え?…)
瞼を開けた私の前でユリア殿は小さな勺を器に入れ、ゆっくりとその勺を中で回し始めていた!。
「美味しくなぁ~~~れ❤…………美味しくなぁ~~~れ❤」
(え?………えぇーーーーーーーー!)
「ぐ~~~~~る❤……………ぐ~~~~~る❤……さ、お嬢様方も御一緒に♪」
「あははは~♪…おっもしろ~~~い!……うちも言う!……ぐ~~~~~る❤……………ぐ~~~~~る❤」
(あ、あっれぇ~~~~~~~~…な、何これ?…)
「さ、お二人のお嬢様も♪…でないと、コーヒーが美味しくなりませんよぉ~~♪…浴衣のお嬢様は朝飯前なんですよねぇ~?…さ、御一緒に!…」
「え?……いや、わ…私は……ま、まさか…そのような事とは…」
私の生き方で[剣客に二言無し]の掟があるのだが、今ほどそれを後悔した事は無かった!…。
「うっ……ぐ……ぐ~る……ぐ~る……」
「えっ?…お嬢様、全然聞こえませ~~~~ん!……もっと大きな声で❤…さ、そちらのお嬢様も、ベレー帽のお嬢様を見習ってくださ~~い♪」
「いっ……ぁ……あの……」
「あははは~♪…瞳ちゃん、結構楽しいよぉ~~~♪…ほら、楓もやろうよぉ~~♪」
これまでの剣術修行で一番辛かったのは、真冬の川に腰まで浸かり竹刀の素振り稽古だったのだが、今はそれ以上に辛い気持ちになっている…。
(こ、この様な辱めは…初めてだ……何故、おね殿はそれほど楽しめるのだ?…)
顔を赤らめる瞳殿の心境が痛いほど分かる!…恐らく私の顔も同じ状態のはず…。
(こ、これなら…今穿いている[ぱんてぃ]とやらを、主に見せる方がマシに思える…)
コーヒーなる物でこれなのだ……この後、私が頼んだ[おむらいす]が出てきたら何が起こるのか?…ただ、私の心にあるのは不安しかなかった…。




