戦国女子!令和の衣装を買いに行く!
瞳殿の友人、恭子殿のお陰で、我らは令和女子の身嗜みとも言える下着なる物を身に着けることが出来た♪…些か、これまでより窮屈な感じはするが、それでもこの令和の時代に少し馴染んだ喜びのほうが強かった。
「じゃ、下着購入は済んだし、次はおねちゃんの服を…いえ、着物なる物を買いにいきますか♪」
「あははは~♪…悪いねぇ~、楓ぇ~…うちが先で~♪」
「構いません、どうせ最後が私ですから、残り福というやつです…」
「全く、ほんとあんたは可愛げがないわねぇ~!」
「愚問、先ほど瞳殿も恭子殿も、私を[凄く可愛い]と言ってくれました…聞いてなかったのですか?…」
「聞いてたわよ!…てか、[凄く]なんて言ってたか?…」
「それまでよ、二人とも美人だからいいでしょ?…これ以上、喧嘩しないの!…ほら、次の店に行くから大人しく付いてきなさい!」
「はい」
「はい」
瞳殿に一喝され、次に辿り着いたのはこの時代のおなごらしい着物が並ぶ店だった…先ほどの[らんじぇりーしょっぷ]とやらに比べれば店の光りは明るくないが、ここにも多くのおなごが集まっていた。
そんなおなご達は着物を手にしてはまた元に戻し、別の着物をまた手にするとすぐ元に戻す動作を幾度と無く繰り返している。
(この時代のおなごは落ち着きが無いな、手にして着物を広げたのなら、ちゃんと折り畳み元に戻さぬか!…親はこのおなごらに、どんな精進をさせておるのだ!)
身の危険の無い時代で生まれたおなごは、こうも堕落しているのかと思うと侘しくなる。
日ノ本のおなごとは、桜のように艶やかで、芯の入った肝を供えているのが立派な日ノ本のおなごなのだ!。
「あははは~♪…瞳ちゃん?…ここ沢山着物があるねぇ~♪…うちにはどれがいいかなぁ~♪」
まぁ、そんな私の気持ちを逆撫でするおなごが目の前に居るのだが…。
「ここは[ブティック]と言って女の子の洋服を売っているお店なのよ!」
「…ぶちっく?…ようふく?…あははは♪…この絵のおなごの[ようふく]もいいねぇ~」
「それはポスター…でも、もう私はおねちゃんのコーディネートが出来てるから、それを着てもらうわよ~♪」
「瞳ちゃん…う、うち…そ、それがちょと…心配なんですけどぉ~~……」
[それから約半刻]
「ふふん♪…楓ちゃん?……今、おねちゃんの試着が終わったわよ~♪…きっとビックリしちゃうかも~!」
私はまたこの店の[こういしつ]なる所の前で一人、おね殿の着替えが終わるのを待たされていた…この間、何度も瞳殿はこの時代の着物を抱えこの[こういしつ]をねずみのように行き来していたのだ。
「……はぁ…畏まりました…」
「さ、ちょっと中を覗いて見て♪……おねちゃんが別人になってるから!」
「…おね殿は、おね殿でしかありませんが……」
瞳殿の意味不明な言葉に戸惑いながらも、私は目の前の狭い[こういしつ]なる戸の隙間から中を覗き込んだ!。
「えっ!!………お、おね…殿…ですか?」
「え!……あ……か、楓……そ、そんなに……うちを…見ないでよ…は、恥ずかしいよ…」
「どう?…私のコーディネート♪……まず下から、おなごらしい清潔感をだすハイソックスの靴下!…そして!…デニム素材でマキシ丈のフレアスカート!…更に、上の着物は胸元から肩にかけて黒薔薇模様が施されてある白生地で五分袖のランタンスリーブトップス♪…で、最後は、このかぐや姫のような長い髪にワンポイントとして、白のベレー帽を後頭部に被せました~♪」
あのおね殿が令和のおなごになった瞬間だった…地味な着物で竹刀を振り回し、裸足で畦道を駆け出したおね殿の姿は、もうそこには無かった…。
「おね殿…と、とても可愛いです…本当に……う、羨ましいほど…」
「楓……あ、ありがと……う、うちも…こんなに変わるなんて…信じられないほど嬉しいよ…あ、これはうちの本音だからね…」
「えっへん!…この瞳様に任せればこんなもんよ♪…で、最後に…さっき計らせてもらったおねちゃんの足のサイズを元に…このおしゃれなホワイトシューズもプレゼントしてあげよう♪」
「ひ、瞳ちゃん?…い、いつの間にそんなのを?…」
「え?…おねちゃんが脱いだ浴衣を綺麗に折り畳んでいる時に、ちょっち隣の靴屋さんでね♪…このファッションに草履はキツイもの♪」
「…瞳ちゃん……こんなによくしてくれて…ありがと……」
「あら?…衣装が変われば性格も変わるのかしら?…さっきのイケイケおねちゃんでもいいのに♪」
「だ、だって……う、うち…こんなに嬉しいの…初めてだから……」
「そう…私も、嬉しいよ♪、おねちゃん…」
私は瞳殿に[しゅーず]なる草履を履かせてもらうおね殿を、彼女が脱いだ浴衣を両手で抱え込み見詰めていた…。
(本当に…おね殿は可愛くなった………この後…おね殿は、あの姿で…主の前に………)
いつしか、彼女の浴衣を抱えていた私の両手が、その布地を強く握り締めていた…。
(まただ!…またおね殿と主の事を考えると、この心臓の奥でモヤモヤとした気持ちになる…今のおね殿は私に友好的なのに……なぜ私はこんなに心が狭くなってしまったのだ…分からない…これも、精神修行が足りぬせいなのだろうか?…)
「あははは~♪…お待たせ、楓~♪…あのね、この草履、凄く歩きやすくていいよ~♪…楓も買ってもらいなよぉ~♪」
「はぁ……」
(こんな笑顔をおね殿は私に向けているのに、あのような感情を抱くとは…自分が恥ずかしい…そうだ、私が主の事を考えるからこうなるのだ!…今、主は藤本殿と一緒…私が気を揉む必要は無い…)
着物の代金を支払った瞳殿は、先ほどまで身に着けていたおね殿の浴衣と透明な袋に包んだ草履を、大きな紙の袋に入れ私達の元へと戻って来た。
「さぁて、次は楓ちゃん御希望のメイド衣装なんだけど……いまいち何処に売ってるのか分かんないんだよね~~…となると……よし、虎穴にいらずんば虎児を得ずよね!…ここは現地で情報収集するのが一番よ!…」
「瞳…殿?…その現地…とは?…」




