これが私なの?
瞳殿が[ぶらじゃー]なる乳を隠す下着をおね殿に教えていると、ようやく恭子殿が私の下着を持って来てくれた。
「お待たせ、中々楓ちゃんのサイズに合った可愛い下着が見付からなくてね……」
「ねぇ、ねぇ?…恭子?…どう?…[おさね]ちゃんの下着姿♪…ほれ!…見てみて♪」
「ふぅえ、瞳ちゃん!…」
「え?………あ、あら♪…とってもいいじゃない!」
[ぱんてぃ]と[ぶらじゃー]なる下着を着けたおね殿は、瞳殿に身体を反転させられ、その容姿を我らに見せてくれた!。
(こ、これが…おね殿?……ま、まるで…令和のおなごその者ではないか!…)
長い漆黒の髪に白い肌‥それを桃色の下着がおね殿の肌を包み…先程よりも彼女の色気が増したのは私の気のせいなのか…。
「どう?…楓ちゃん?…この子の下着姿は?…」
いつも私に悪態を付いていたおね殿がやや顔を下に向け頬を赤らめていた、その姿は純真な乙女のようにさえ見える。
「と……とても…綺麗です……どう見ても…令和の、素敵なおなごです…」
「え?……や、やだ…楓ったら……うち、今ね、気が付いたよ、楓って、本当は素直で自分の本音しか言えない良い子だったんだね~♪…」
やはりおね殿には口を開かせない方が私の心を平常心に保てるのだと、たった今理解した…。
「ねぇ?、瞳?…さっきから気になってたんだけど…この楓ちゃんて子…時折、変な言葉遣いになるのね?…」
「えっ!…あ、この子…じ、時代劇アニメオタで…たまにコスサミに参加してるのよ!…ほ、ほら…もうすぐコスサミが開催されるから、そのキャラになりきる練習をしてるの!」
「ふ~ん、今の時代の子らしい嗜好ね、どう?…[おさね]ちゃん?…自分のサイズに合った下着を着けた感想は?」
「う~~~ん……何だか、可愛いけど、お乳が窮屈だよぉ~~…」
「え?…これまでそんなにゆったりした下着を着けていたの?……ま、まさか!…そのバストでずっとシャツしか着た事がないとか?」
「あーーー!…ち、違うのよ恭子!…ほ、ほら…この子は田舎の子で、ずっと着物ばかり着させられてたのよ!…そ、それほど古風な親戚なのよ!…うちの親戚は!……わ、私も…子供の頃、あの家に行くと、着物を着せられていたの…あ、あはは…変な親戚でしょ?…」
「まるで金田一○助が現れそうな所に[おさね]ちゃんは住んでたのね……」
やはり瞳殿は嘘が下手のようだ、恐らくは恭子殿もそれとなく感じてはいると思うが、あくまで我らを客人とみなし対応してくれているのだろう。
「じゃ、次は…アニオタの楓ちゃんね!」
「あの、私には[兄]など、居りませぬが……」
「まぁまぁ、楓ちゃん!…ここは何も言わず恭子に従ってね!」
「はぁ…」
恭子殿はいくつかの下着を私に見せ、その中で気に入った物を着けさせてくれるようだ!。
あれほどおね殿も変わったのだ、私も顔には出さないが、心なしか気分が高揚している。
「まずは、この白地に青いの薔薇の模様が施されてるやつ、それとピンクに赤の❤模様があるビキニタイプでしょ、で…楓ちゃんのスマートな下半身なら、ローライズのショーツも似合うわね、このホワイトブルーなんてのも涼しげでいいと思って♪…それに、今の季節にピッタリのハイビスカス模様も施されてるのよ♪」
(何の事だが意味不明…日ノ本の言葉で話してもらいたい…)
「なるほど、さすが恭子ね!…全部楓ちゃんに似合いそうね♪」
「あははは~♪…楓なら、あの赤いポチポチがあるのがいいと思う~~♪」
「でも、それでは[おさね]殿と生地の色が重なるのでは?…」
「あははは~♪…じゃ、その白とお花の柄は?」
「はぁ…」
私は恭子殿が出してくれた可愛らしい下着をぼんやりと見詰めていたのだが、そこでトンでもない妄想が頭に浮かんでしまった!。
[楓……とっても可愛いよ……]
[そ、そんな…あ、主……あ、あまり…私を…見詰めないでください…恥ずかしいです…]
[さ、もっとその可愛い楓の姿を見せておくれ❤]
[あ、主…い、いけません……]
(……はっ!……い、一体!…私は何を考えているのだ!…あ、主に対し、不謹慎極まりない事を頭に浮かばせるなど!…私は主の警護役!…それ以上でもそれ以下でもないのだ!…な、何たる失態!…こ、これも令和の時代がなせる業なのか!…)
どうも私はこの令和に来てから頭がどうかしている!…この時代における[おなごの心得]を瞳殿から伝授されればされるほど、何故か主の顔が浮かんでしまう!。
(分からぬ…私はどうなってしまったのだ!……やはり、今は警護の任から外れているので主の安否が気になっているか?…でなければ、こうも主の顔が浮かぶ事に納得ができぬ!)
「それで、楓ちゃんはどれが気に入ったの?…」
「え?…ぁ…ひ、瞳殿…そ、そうですね……わ、私は…」
(そうなのだ、私は別に主の為ではなく、自分の大切な身体を守る為に下着を身に着けるのだ!…それに、おなごの下着は男に決して見せてはならぬ物!…なら、自分が気に入ったのを手にすればいい!…ただ、それだけの事だ…)
「わ、私は…その…花の模様と……薄い青が……いいです…」
「やっぱり♪…私もそうじゃないかと思ってたのよぉ~♪…絶対、楓ちゃんに似合うわよ~、という事で恭子、この2点購入するから試着OKよね?…」
「えぇ、どうぞ♪」
こうして私は瞳殿に伝授された作法で、まず薄い青の下着を身に付け、その姿を大きな鏡で眺めた!。
「ひ、瞳…殿……これが…私…ですか?……」
「えぇ、間違いなく楓ちゃんよ♪……本当に綺麗だわ~♪」
「うふふ♪…苦労して選んだ甲斐があったわ、とっても似合ってるわよ、楓ちゃん♪」
「ま、まぁ…うちほどじゃないけど……ちょっとは、可愛いんじゃない!……ふん!……」
「あ………あぁ……これが……私……」
幼少期から地味で暗い着物しか与えられなかった私にとって、この様な可愛い物を身に着けた私は嬉しくもあり、やや恥かしさすら感じていた…。
「どうしたの?…楓ちゃん?…段々顔が赤くなってきてるけど…」
「ひ、瞳殿…本当に…これが、私ですか?…な、何だか…信じられなくて…」
私は思わず両手で口を押さえ、鏡に映る自分の姿を目を潤ませ見詰めていた…。
「えぇ、とってもランジェリーが似合う可愛い女の子、橘楓ちゃんよ♪」
「あ…ありがとうございます…瞳殿……恭子殿……」




