戦国女子といえども
ずっと気になっていた[あいす]…しかし…さっきの白い[ほいっぷ]とは違い、やや表面が固く中々勺では掬う事が困難だったので、そっと削るようにして私は勺に乗せた。
(主はこの季節に打って付けと言っていたけど…本当に冷たいのかな?…[ほいっぷ]なる物は冷たくなかったけど…)
またしてもここで私の想像は裏切られた!…[あいす]を口に入れた瞬間、舌から上あごにかけてツン!とくるような冷たさが広がり、その後からは言い様の無いほどの甘さが追いかけてきたのだ!。
「ぁ…つ、冷たくて…甘い…こ、これが…[あいす]なるものですか!…あぁ…これが[あいす]❤…」
「あははは~♪…瞳ちゃん、この黄色いプルプルしたのも美味しいよ~~♪」
「それはプリンよ、この時代の子は熱を出したりするとお母さんがよく出してくれるの、喉越しもいいし食べやすいから♪」
「あははは~♪…こんなのが食べられるのなら、うち、毎日熱を出したいなぁ~♪」
「何言ってるの、健康が一番でしょ!…二人とも、慌てずゆっくり食べてね…」
♪ヴゥゥゥゥゥゥゥーーーー……ヴゥゥゥゥゥゥゥーーーー……
「あははは♪…瞳ちゃんの[すまほ]が唸ってるよぉ~~…」
「唸ってるんじゃなくて、呼び出してくれてるの!……ん?…あ、巽君からだ……もしもし、もう納品が終わって帰って来たの?…」
(主?…あぁ、無事に帰って来てくれたんだ♪)
主がこの時代に戻って来てくれた、それだけで今以上に[ぱふぇ]が美味しくなった気がした♪。
「うん、うん…そう、今駅に着いたのね?…………え?……まぁ何とかサテンで上手くやってる……お陰で漫才の突っ込みの腕も上がったわ…………うん……大丈夫、おねちゃんも楓ちゃんもご機嫌でスイーツを食べてるから………うん………いいよ、気にしないで!………あ、それとさ…ちょっち気になったんだけど……あの子達、着替えとか持って来てる?……え?…分からない?…なにそれ!…」
どうやら瞳殿の会話から主は元気そうだと分かった…なので、私とおね殿はゆっくりとこの時代の甘い物を堪能していた。
「……あのさ、巽君?…さっき私気が付いたんだけど…当然と言えば当然なんだけどさ……この戦国女子達、浴衣の下は何も着けてないよね?……………おい、何アワアワした声になってるの!……それってちょっとマズイよね?…うん、うん…………まぁね……それに、このままずっと浴衣で過ごさせるのは……あ、やっぱりね!……何となくそう来ると思ってた!……うん……うん……しょうがない、乗りかかった船だ……それも面倒見るよ!……じゃね…」
主との会話を終えた瞳殿は、軽く溜め息を漏らし少し溶けた[あいす]を食べ始めた。
「瞳殿?…主が戻って来たのですね?…今から先ほどまで居た倉庫なる蔵へ戻るのですか?」
「え~~~!…うち、まだ食べてる途中なんだけどぉ~~~…」
「まぁ戻る事は戻るんだけど…その前に寄りたい所が出来たの…だから、あなた達も着いて来てね!」
「は…はぁ…」
いずれまたこの御殿に戻り、全ての甘味を堪能したいと思っていたのは私だけじゃないだろう、それはおね殿の口周りに付いた[ホイップ]が言葉に出さずともそう語っていたからだ。
「おねちゃん、楓ちゃん、これから行く所はとても人が多い場所なの…もしかして驚いちゃうかも知れないけど、落ち着いて私に着いて来てくれるかな?」
「瞳殿、すでに我らは人の多い[うめだ]なる街を藤本殿と主に案内されております、どうか御心配なきよう…」
「あははは~♪…で、瞳ちゃんはうちらを何処に連れてってくれるの~?」
「………その前に…このナプキンで、クリームまみれの汚れた口を拭きなさい…………」
「あははは~、うちとした事がぁ~~~♪」
「で、瞳殿?…その場所とは?……」
「ショッピングモール!……えっと、どう説明したら心の準備が出来るかな……あ、大きなお城のような建物に、沢山のお店が入っている所よ、食べ物や着る物、生活道具だってもう何でもそこで買えちゃうの!」
「な、なんと…城の中に店が……よ、よく殿様が許したものですね……」
どうも話しが大きすぎて私にはあまり理解出来ないが、ある程度心の準備が出来たのは有り難い、これでまた淀川での失態は出さずに済みそうだ…。
「あははは~♪…うち楽しみぃ~~♪…見た事ないお店があると考えるだけで、高揚しちゃう!」
「そ、そう?…でも、本当に店内ではしゃいだりしちゃダメよ…おねちゃんは大人なんだから…」
「あ、あの!…瞳殿!……そ、その[しょっぴんぐもーる]とやらには…か、可愛い着物などは…う、売っているのでしょうか?…」
「可愛い着物?……花柄の振袖とか?」
「い、いえ……あ、主の蔵に向かう途中……あ、頭に白いヒラヒラした簪を乗せ、身体には黒の布地に…白い前掛けのような物があり……それに、黒い腰巻の裾には白いくらげみたいなヒラヒラしたのを身に着けたおなごを見かけたのです!……」
「はぁ?…し、白いヒラヒラの簪?………それに…前掛け?………黒の腰巻に白いくらげのヒラヒラ………え?…それって…もしかして……ちょ、ちょっと待ってね……」
また瞳殿はスマホなる物を手にし、何やら指を板の面に滑らしていた……。
「か、楓ちゃん?………そ、その着物って……もしかして…これ、かしら?…」
瞳殿はスマホの表面を私に見せると、そこには何人ものあの着物を着ていたおなご達が映っていた!。
「そ、そうです!…こ、この着物です!…」
「え?………楓ちゃん?………これを…着たいの?…メイド衣装を!…」
「は……はい(ポッ❤)………あ、主が…言ってくれました……きっと楓さんに似合うよっ…と…」
「う!……巽君が…なぜ彼女が出来ないのか分かった気がする………」
「あははは~♪…あのね、あのね、うちは~…こう、お乳にぃ~~……」
「お、おねちゃん!…それはまた車の中で!!…今はここで何も言っちゃダメ!…いったい、巽君はこの子達に何を教えたのよ…」
「あの?…瞳殿……この着物は…私が着てはいけない物なのでしょうか?……」
「別に構わないし、楓ちゃんがどうしても欲しいなら、何処かのコスプレショップを探しに行くけど……本当に着てみたいの?…」
「はい♪…初めて他人のおなごが羨ましく思いました……」
「しょうがないわね……ま、おねちゃんの希望は車の中で聞くとして……その前に…あなた達には、もっと大事な用があるの!」
「…大事な…用…ですか?」
「そう、ランジェリーショップよ!!」




