楓!…初めてパフェを食す♪
私と瞳殿がテーブル席なる場所に戻ると、すでにそこには見た事のないような食べ物が台の上に置かれていた!。
「あははは~♪…ねぇ?、ねぇ?…これ、全部甘い物なの?…凄く鮮やかだね~…」
おね殿は自分が注文した商品を覚えていたのか、ちゃっかり自分の前に商品を寄せていた。
「ひ、瞳殿?…わ、私の席の前に…何やら…透明な大きな器に…赤と、白の妙な物が入ってるのが置かれておりますが…これが[びっぐぱふぇ]なるものですか?」
「そうよ♪…パフェが嫌いな子なんて居ないくらいこの時代の女の子はコレが好物なの❤…勿論、おねちゃんの頼んだスイーツも大人気なのよ♪」
「はぁ…しかし、この白い物に赤い物が付いていると…雪に撒かれた血しぶきにしか見えませぬが…」
「食べる前に怖い事言わないでよ……それはイチゴシロップ、楓ちゃんもイチゴは知ってるでしょ?」
「いちご?……知りませぬが……」
「え?…ちょ、ちょっと待ってね……」
いきなり瞳殿は主も持っていたスマホなる物を触り始めた……。
「そっか…イチゴが日本に伝わったのは楓ちゃんの時代よりもっと後だったのね…そりゃ知らなくて当然よね…」
「知らなければ…何か不都合でも?」
「ううん、じゃ教えてあげるね、そのパフェの上に乗ってる赤い果物がイチゴなの、それを甘いシロップにしたのが白い部分に付いているイチゴシロップなの…ま、とりあえずこれを使って食べてみて♪」
「は……はぁ……」
私は瞳殿から差し出された細長い勺のような物を受け取り、まずイチゴなるものの前に白い柔らかそうな物を勺で掬い、そっと口に押し込んだ…。
「……んっ♪………く、口の中で…溶けてしまいました!…でも、甘いです♪…」
「それは[ホイップクリーム]ね、この口の中でとろける感触が最高なのよ~♪」
「あ~、楓だけずるい~~!…うちも食べるぅ~~~!」
「じゃ、おねちゃんは、このスプーンを使って食べてね♪…きっと美味しくてホッペが落ちちゃうかも知れないわよ♪」
「あははは~♪…美味しい物を食べて[ホッペ]なるものが落ちるなら全然構わないよ~~♪」
「うふ、おねちゃんは面白い人ね!…じゃ、楓ちゃん…今度はイチゴを食べてみて♪…あ、それは手で摘んだ方が食べやすいわよ…」
「こ…この赤い果物ですね?…しょ、承知しました……」
剣客の私にとって、赤は血の色としか頭に浮かばない…幾人もの悪人を斬った時に奴らの身体から噴き出した血を思い出すからだ…。
(この様な不気味な色をした果物が、この時代のおなごの好物だとは…よほどお気楽なおなごばかりなのだろう…)
私はイチゴを手にすると静かに瞼を閉じ、その手にしたイチゴを口へと持っていく…。
(こんなに血の色をしているのだ、臭いだって血に近いはず……え?…くんくん……ん?……な、なんだ?…この爽やかな甘い香りは!)
この時代は次から次へと私の想像をいい意味で裏切ってくれる!…これまで記憶に残っていた生臭い血の臭いを、イチゴなる果物の爽やかな香りが一瞬にして掻き消してくれたのだ!。
(こ、これ…絶対美味しいかも……)
ポンッ!…とイチゴを口に入れ、ゆっくりと噛み締めた瞬間、私の口の中に甘酸っぱい味と香りが爽快に広がった!。
「はっ!…こ、これが…イチゴの……味!…」
「ふふん♪…どう?…楓ちゃん?…イチゴの初体験は?…」
「と、とっても甘酸っぱくて…いい香りがして、ずっと口に中に入れておきたいほど爽やかな果物で、今私の[ホッペ]なる所が落ちた気がしています~❤…イチゴ、美味しいですぅ~♪」
「あら?…楓ちゃんて、こんなに喋れる子だったの?…」
「あははは~♪…楓は興奮するとよく喋るんだよ~~♪」
(はっ!!…し、しまった!……ついこのイチゴとやらの美味しさに…いつもの自分に戻って……)
一度口に出してしまえばもう戻す事は出来ない!…それに、この[びっぐぱふぇ]とやらの魅力に私の理性を保つ事はもう無理になっていた…。
(イ、イチゴ一つで…あの苦しかった忍びとしての修行が消し去られた……で、でも!…忍びと剣客の心得さえ忘れなければ、[ぱふぇ]なるものを食している間だけは構わないだろう!…そうだ、これは単なる食事なのだ…よし、そう思う事にしよう♪)
「ねぇ?ねぇ?…そのイチゴって…そんなに美味しいの~?…楓がそんなに喋るほど美味しいのなら、うちも欲しいよ~~…」
「じゃ、私のイチゴを分けてあげる♪」
「あははは~♪…瞳ちゃん優しいぃ~~♪……では、パクッ!……ん、んん~~~❤…ほんとに甘酸っぱくて美味しいよぉ~~♪」
「ひ、瞳殿!…こ、この薄黄色い丸い物はなんですか?…卵のようには見えまするが…これも甘い物なのですか?」
「ふふ♪…やはり楓ちゃんて、本当は普通の女の子だったのね、それはね[アイスクリーム]よ♪…きっと大好きになっちゃうから食べてみて♪」
確か主が私に教えてくれた未来の甘い物の一つに[アイス]の言葉があった…ただ、私はトンでもない聞き間違いをしたので、この食べ物の名だけはしっかりと覚えていた。
「あ…あいす……以前、主が「未来には氷のように冷たくて甘い物がある」と私に教えてくれました…それが…この[あいすくりーむ]なる食べ物なのですね♪」
「あら?…巽君から色々教わっていたのね、そうよ♪…冷たくて甘いから食べてみて…」
この[れいわ]の時代に来るまで頭から離れなかった[あいす]…とうとう私の前にやって来てくれた!…私は胸をドキドキさせ、鉄製の長い勺を[あいす]へと向けた。




