戦国女子!未来のトイレに驚く!
瞳殿の言われた通り、おね殿があのボタンを押してすぐ、この店の女中が注文を取りにきた。
[お決まりですか?]
「ビッグパフェ2つと、プリンアラモード、それに杏仁豆腐をお願いします」
[はい、畏まりました]
ようやく注文を終え安心したのか、瞳殿は最初に女中から差し出された透明な湯飲みに入っている水を飲み始めた。
「あははは~♪…じゃ、うちもお水を飲もっと♪…………ん?…………うえっ、何このお水!…変な味がするぅ~~…うちの家にある井戸のお水の方が美味しいよ~…」
[あの子、何処かの田舎から最近大阪の施設に来たのかしら?]
[ここの水と田舎の澄んだ湧き水じゃ全然違うのにね…普段は施設で水を飲んでいないのかしらね?]
(いつもと変わらぬおね殿なのだが、どうもこの時代の婦女子には妙に見えるらしい…これも時代が違うからなのだろうか?)
「それは、いつでも安全に水が飲めるよう、この街の水はお薬で浄化してるから少し味があるのよ…」
「うち、この味苦手~~…たっちゃんに買って貰った蜜柑味のシュワシュワのほうが美味しい~…」
「蜜柑味のシュワシュワ?」
[きっと、ファ○タオレンジの事じゃない?…でも、たっちゃんて優しい子みたいね、お友達に奢ってあげるなんて…]
[名前を覚えるのが苦手なのね…職員さんもあの子の意思をしっかり受け止めてあげて欲しいわね…]
やはり私の背後から聞こえる婦女子の声は、おね殿に同情しているようだ…しかし、何故おね殿に同情しているのか私には全く理解不能だった。
「あ、あのさ…瞳ちゃん?……う、うち…甘い物が来る前に…厠へ……」
「…厠?……あ、トイレね……じゃ、一緒に着いていってあげるわ…楓ちゃんは少しの間、待っていてくれるかしら?」
「畏まりました…」
[こういう時は先輩さんがトイレに連れていってあげるのね、立派なお仕事よね…]
[うちの娘じゃ出来ないわ…あ、そろそろ佐々木さんと待ち合わせの時間よ!]
[あらやだ、もうそんな時間?…じゃ、行きましょ!]
どうやらおね殿を探っていた婦女子らはここから出るらしい…結局のところ、あの者達はおね殿の何に興味があったのか私には分からぬままだった…。
「あの、お嬢ちゃん?…」
背後から私に声をかけてくる…その声の主はあの婦女子の一人のようだ…。
「私に…何か?…」
私が振り向くと、そこには丸顔で髪が鳥の巣のようにボサボサしており、虎のような獣の絵が描かれた着物を着ている年配のおなごが立っていた…ただ、その表情から敵意を感じる事は無く、むしろ穏やかに感じた。
「この仕事はあなたのような若い人の力が必要なの、大変だと思うけど頑張るのよ!…オバチャン応援してるから、ほれ…飴ちゃんあげる!」
「飴…ちゃん?…」
「人様のお役になる仕事をするのは立派な事よ♪…飴ちゃん舐めて頑張りなさいな!」
「はぁ…かたじけない…」
何故、私を鼓舞するのに飴が必要なのか理解出来ない…それに、これは飴ではないはず…もっとドロドロしたのが飴なのだ!…私はあのおなごが置いていった飴らしき物を眺めていた…。
「お待たせ、楓ちゃん!……どうしたの?…その飴?……」
「やはり、これは飴なのですか?……頭がボサボサで、虎のような…獣の絵が描かれた着物を着た年配の見知らぬおなごが…私にくれました……」
「あぁ、パーマヘヤーで豹デザインのシャツを着た大阪定番のおばちゃんね!…」
「何故…私に…飴を…施してくれたのでしょうか?……それほど…私は…ひもじそうに…見えていたのでしょうか?…」
「それは違うわ、何て言うか…大阪のオバチャンは、知らない人でも友好を示す為に飴ちゃんをあげたりするの♪…きっと、そのオバチャンは楓ちゃんを気に入ったのよ♪」
「私は…その方に…何もしてはおりませんが……」
「ま、相手の好意は素直に受け取りなさい♪」
「あははは~♪…楓ぇ~…ここの厠凄いんだよぉ~!…綺麗だしぃ~、ジャーーッ!…って、お水が流れるのぉ~~!…」
「み、水が流れる?……どういう事ですか?…」
「楓ちゃんは、おトイレ大丈夫なの?……」
そう言えば…確かにこの時代に来てから驚きの連続で、用足しの事など感じる事すら忘れていたが、おね殿の言葉が揺さ振りをかけたのか、私もその気になり始めてしまった。
「あ……あの……私も……行きたい……です…」
「じゃ、行こうか♪…おねちゃんは少し待っててね、何処にも行っちゃダメよ…」
「あははは~♪…大丈夫だよぉ~~…大人しく待ってるぅ~~…」
「その返事が一番心配なんだけど……もし商品が来ても先に食べないでね、ちゃんと食べ方を教えるから…」
「あははは~♪…分かった~~!」
(今、何となくあのおなご達の心が分かった気がする…私と瞳殿は、どうやらおね殿の世話役だと思っていたようだ…)
こうして私は瞳殿に案内され、この屋敷の厠に来たのだが…私が想像していた厠とは全く違っていた!。
「こ、これが…厠…ですか?…」
「えぇ、今から使い方を説明するから、しっかり覚えてね♪」
私の時代の厠とは、常に悪臭が漂い、蝿などの虫が飛び交う不快な場所なのだが、ここは花のような心地よい香りが充満し、虫すらも飛んではいなかった!。
(な、なんと…これが…れいわの厠なのか…こんな綺麗な厠…初めて見た…)
一通りこの未来の厠の扱い方を瞳殿から伝授された私は、初めて一人で用足しに成功した!…それに、もう一つ感心したのは手を出すだけで水が噴き出す[タッチレス水栓](※瞳に教えてもらった)なるものだった。




