戦国女子!初めて未来の食事をする
永禄女子の浴衣姿も、何とか天神様の御利益のお陰でクリアする事が出来た俺達一行は、アーケードの奥にある日本料理屋に到着していた…。
「浩一とここに来るのも随分久しいな…」
「そうだな、お前が会社を引き継いだ頃だったか…」
格子戸のある古風な日本家屋をイメージした白壁造りの落ち着いた雰囲気で、2階は宴会場と個室がある立派な店だ。
「あははは~♪…何だかお武家様が住んでいるような家だねぇ~…これが料理屋なの?…」
「あ、主……このような…立派な店で…食事など……」
「大丈夫、立派なお店だけど、庶民の俺達でも安心して入れる店だから♪」
浩一の同期でもある大将の計らいで、俺達は二階の個室へと通された…板張りの床で掘り炬燵式のタイプになっている個室は6畳ほどの広さがあり、静かに琴のBGMが響くとても快適な空間だった。
「ねぇ?…たっちゃん?…どこに座ればいいの?」
「…えっと、あの台の下にある穴へ足を下ろして、座布団に座ればいいですよ…」
「え、あんな綺麗な座布団に座ってもいいの?…大名様が座るようなふかふかな座布団だよ!」
「いいんですよ、さ、楓さんも座りましょう!」
ようやく一息ついた俺だったが、戦国女子はまだこの店の雰囲気に落ち着かない様子だった…。
「こ、こんな立派な所……あ、主…本当に…私どもが居てよろしいのですか?…」
「あははは♪…あれ~?…誰か琴を奏でてるね~…凄く上手だねぇ~…どこで奏でてるのかな?…」
(もう…有線放送の仕組みとか説明するのが面倒だ…)
「ど、どこからでしょうかね~…はは…」
「そうだ、淳一…もう先に料理は注文したけど、前に食べたコースでいいよな?」
「あぁ、それでいいよ!…ありがとう…」
俺の右横にはお決まりだったかのようにおねちゃんが座り、楓さんだけは俺の対面になる位置でそれぞれ炬燵を囲んでいた。
「それじゃ淳一、俺はこれから浪速区の卸業者の所を廻って、うちで在庫が無い商品を買ってくるよ!…二時間ほどしたら、この店の前までお前達を迎えに行くから!」
「え?…お前は食べないのか?」
「もう昼は済ませてるし、時間がもったいないじゃないか…出来るだけ早く織田信長に納品しなきゃいけないんだろ♪」
「すまん、じゃ…そのお礼に、後で倉庫の作業を彼女達と手伝うよ!」
「あぁ、お前もしっかりお二人さんをもてなしてやれよ♪」
浩一が客室から出て十数分後、日本料理らしく綺麗に彩られた料理が運ばれてきた…八寸から始まり、吸い物、小鉢料理、刺身の盛り合わせ、天ぷら、一人鍋に茶碗蒸し、水菓子と現代人の俺にとっては見慣れた料理だが、彼女らの反応は想像通り大きな反応だった!。
「たっちゃん、な、何?……この料理は?……こ、こんな豪勢な料理……上皇様でも食べてないよ…」
「あ、主……こ、このような私が……大名様でも口に出来ない食事を……」
「いいから、俺の時代じゃ庶民の人も冠婚葬祭の時によく口にしてるから、遠慮する事はないよ♪」
「あははは~♪…庶民の人もこんな豪勢な料理を?…」
「あ、主…食事の際は、作法があるのですか?……て、手を付ける順番とか…」
「さぁ、あるのかも知れないけど、今は食べたい物から食べなよ…では!」
<いただきます♪>
戦国女子が現代の料理の前で箸を手にした、俺もあの時代の食事を体験したが、この時代に比べるとかなり貧相な食事だった…それを毎日食していた彼女達には、この料理の前に萎縮してしまうのは当然と言えば当然の反応である。
「…た、たっちゃん?……このお頭付きの魚に敷いてあるヒラヒラしたのは?…」
「それは刺身の盛り合わせです、生の魚の身を切りそのままの状態で出した料理です」
「な、生の魚!…そ、そんなの食べてお腹が痛くならないの?」
「大丈夫ですよ、新鮮な魚ですから♪…その醤油が入っている小皿に、刺身横にある緑色のワサビを溶いて、そこに刺身を浸けてから食べてみてください…」
「あ、主……」
「はい、何でしょうか?」
「こ、この黄色くなった野菜と…お、恐らくは…海老だと思われるのですが……これは?…」
「それは天ぷらです、その少し大きい器に[天つゆ]という出汁が入っているので、天ぷらが熱いうちにその出汁に浸けて食べてみてね!」
何となく、小さい子供に食事を教える親の気分になりながらも、俺は興味津々で彼女達が料理を口する瞬間を見詰めていた!。
♪パクッ
♪サクッ
「うっ、ツーーーーン!!…うひっ、頭と目がツーンとしたぁ~~!!」
「あ、な…何と!…この野菜の天ぷらとやら…外はサクッとしていて……中はしっとりしています!…」
「ははは、おねちゃん、ワサビ入れすぎたみたいですね、私の小皿と交換しましょうか?」
「あは…あは……あははは~♪…うち、このツーーン好きぃ~~❤…これでいい♪」
「そ、そうですか…おねちゃん、丸ごとワサビを入れてるのに……」
それにしても、浴衣を着た美女が和食を楽しむ姿はとても絵になっている…そんな彼女達と食事をしている俺は、少し幸福感に満たされていた。
(さて、ここに浩一が戻って来た時間を基準に計算すると、小一郎様と約束した時間まで後3時間か…戦国時代では更に六日後になる…ただ、浩一に渡したリストの中には、一つだけ難儀な商品がある…それを揃えるには…少し時間が足りないかも?…)
しかし、これほど幸せそうに食事をしている彼女達を急かすのは心苦しい、とりあえず今回は揃える事が出来た商品だけ小一郎様に渡す段取りを俺は考えていた。
[昼食後…]
食事を終えた俺達は清算を済まし、店の前まで迎えに来てくれた浩一の車へと乗り込んだ。
「悪いな、俺達だけ豪勢な昼飯をして…」
「気にするな、またでかいビジネスチャンスが来たんだ♪…飯など食ってられるかよ♪」
「そうだな、ただ…一つだけそのリストに書いてあった商品を揃えるには…俺達男だけじゃ…」
「あぁ、化粧道具一式ってやつか?…それはもう嫁さんに連絡して買って来てもらった、もう倉庫に配達済みのはずだよ♪…とりあえず買ったのは基本メイク一式だそうで、一応メイクのレシピガイドも同封してあるって…」
「浩一!…やっぱ持つべきは親友だな♪…マジ助かったよ!…」
そして俺は、また戦国時代に一時帰省する準備を始めるため、会社の倉庫へとおねちゃんらと共に向かった…。




