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戦国時代の電気屋さん  作者: 朝風清涼
第3章 戦国女子が令和の時代に来るとこうなります!

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なんて呼べばいい?

「え?…楓さん?…い、今…何て?」


「はい、これからは(あるじ)ではなく、[淳一さん]と呼ばせていただきたく…」


 今、後ろからおねちゃんの生霊(いきりょう)が俺の喉元に刃物を当てたような気がした!。


(まずい!そんな呼び名、楓さんがおねちゃんの前で[淳一さん]なんて言ったりしたら…俺の[終身型災難保険]の解約どころか、逆鱗に触れられたドラゴン状態になるぞ!)


「い、いや…[淳一さん]は…ちょっと…」


「では、おね殿(どの)と同じ様に、[たっちゃん]のほうがよろしいですか?…ただ……私は、少しその呼び名には…少々抵抗がありますが…」


 それはもっと最悪な事態になる、またしてもおねちゃんの前で楓さんが俺に[たっちゃん]なんて呼んだりしたら…ドラゴンが更に進化し、最強バハムートになってしまう!…そうなれば、間違いなく女同士の決闘再開は目に見えて明らかだ!…。


「た、たっちゃんの呼び名は…おねちゃんの…専用だから…べ、別の呼び名がいいかな……はは…」


「困りました……それでは、よく街中(まちなか)で妻の(かた)が、旦那様に対し呼ばれている[あなた]ではいかがですか?…ただ、私と夫婦(めおと)ではないので、それも…抵抗がありますが…すみません、あまりこのような事には慣れていなくて…」


 人生が終わる!…絶対にその[あなた]…だけは許してはいけない!…俺の人生の終焉が、時空をワープして俺に襲い掛かって来るのは1億%確実になる!。


「……や、やっぱり…(あるじ)で…いいです……俺の安全の為にも……」


「そうですか、私も安心しました…やはり…一番、(あるじ)がしっくりきますので♪」


「そ…そだね…」


 少しだけ楓さんが俺に心開いてくれたような気がして嬉しく感じた…彼女も何かが軽くなったのか、清洲の城下町に到着するまで、機嫌よく俺と松風に可愛い歌を聞かせてくれていた。


(…本当の楓さんは、おしゃべりと歌が好きな何処にでも居る普通の女の子なのだろう………でも、大和飛燕流(やまとひえんりゅう)の掟がそれを許さなかったのか……可哀想だな…)


(あるじ)…そろそろ松風から降りてもよろしいですか?…人の目が気になってきました…」


「そ、そうだね…じゃ、このまま俺は松風を引くから、楓さんは後ろから付いて来て…」


「畏まりました…」


 清洲城まで後5分ほどの地点で楓さんは松風から降り、静かに俺の後ろを歩き始める…彼女とここまで会話が出来たのは、互い本当に大きな進歩だった。



 [清洲城内]



 何度も藤吉郎様の付き添いで来ていた俺の顔も門番の人は覚えていてくれたのか、すんなりと城内へ入る事を許され、今俺達はまたあの大広間で欄丸様へ信長様とのお取次ぎをお願いしていた。


「いやいやこれは巽殿(どの)、父上が言っておりましたが、本当に楓姉(かえでねぇ)さんを巽殿(どの)の警護に付けておられるのですね、これは心強いです、あ!…お久しぶりです、楓姉(かえでねぇ)…」


「…欄丸殿(どの)も…元気そうで…安心…しました…」


「はい、楓(ねぇ)…巽殿(どの)は私の友、くれぐれもよろしくお願いします!…では、直ちに殿(との)をお呼びいたして参りますので、暫くお持ちを!…」


 欄丸様が広間から出て行くと、楓さんは軽く息を漏らした。


「楓さんは欄丸様を知っていたんだ…あ、そうか…森様と知り合いだから当然と言えば当然か…」


「はい、よく欄丸殿(どの)の剣術稽古の相手をしておりました…私にとっては弟のような存在ですよ…」


「くすっ、楓さん…欄丸様の前では、あの喋り(かた)なんだね♪」


「そ、それは…昔からそのように喋っておりましたから……な、なので(あるじ)……」


「あぁ、分かってる、分かってる!…ここでは数刻(すうこく)前の楓さんになっていいよ♪…だって、そう約束したんだしね♪」


「感謝いたします」


 [殿の~おな~~~り~~~…]


 欄丸様の声を合図に俺達は信長様を迎える為、深々と頭を下げた…それからほんの10秒も経たないうちに信長様は[一の段]に登場した。


「おぉ、巽!…欄丸から聞いたぞ、いよいよ令和の時代に出立するのだな?」


「はっ、それにて暫く信長様とお目通り出来なくなりますゆえ、本日はご挨拶に…」


「その心がけ大儀である、二人とも(おもて)を挙げ!」


「ははっ!」


「おぉ、そちは…楓ではないか!…久しく見ぬうちに、良いおなごになったの!…可成(よしなり)から聞いたが、そなたが巽の警護をしておるのだな?」


「はい…この、橘楓…身命に賭け……巽様を……お守りいたします……」


「相変わらず愛想の無い語りようじゃの……ま、その(ほう)が巽の警護もやりやすかろう…して、巽よ!…わしに伝えたき事とは何じゃ?」


「はは、これより準備が済み次第、令和の時代に出立いたしますが、次に信長様と拝謁するのは、私が出立してから恐らく150日以降になりまする…」


「150日後だと?…それは何故じゃ?」


 俺はまたこの時代と令和の時代の時間差を信長様に説明した…さすが天下の織田信長様、俺の説明をすぐに理解してくれた。


「なるほどの、令和では3日しか経ってはおらぬが、この時代だと150日も経っておるのか…だが、それではわしとの約束はどうなる?」


「はっ、なので私は…一旦、令和の時代からとんぼ返りをし、火急に信長様から承った御注文の品を献上しにこの時代へ戻って来ます!」


「そうか、あい分かった…そしてまた令和に戻るのじゃな?……150日か……長いの……その間に今川の動きも気になる…」


「信長様、その心配はまだ無用です…」


「無用?…それはどういう事じゃ?」


「はっ、今は永禄二年…文月……今川義元が上洛を始めるのは永禄三年の春、この尾張に今川勢が到着するのは、その年の水無月でございます!」


「そうなのか?…今年では無いのだな?」


「ははっ、なので…この期間に、信長様は尾張の国力強化をされればよろしいかと…」


「そうか!…来年か!!…巽よ、この進言だけでも、今日お(ぬし)と会えて良かったぞ!」


「ありがとうございます!」


 これで信長様にも筋を通す事ができた、後はおねちゃんと楓さんが俺と一緒にタイムスリップが出来るかどうかの問題だけである。


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