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戦国時代の電気屋さん  作者: 朝風清涼
第3章 戦国女子が令和の時代に来るとこうなります!

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君だって普通の女の子だよ…

 武芸を極めた者の憧れの一つは[騎馬に乗る事だ]と聞いた事がある、それは楓さんも同じだったようで、素直に俺の意見を聞いてはくれたのだが、彼女はまだ心が揺らいでいるみたいだった。


「遠慮しないで、(あるじ)に恥をかかせないで欲しいな…」


「は…はい…た…ただ……」


「ただ?」


 楓さんは自分の視線を静かに着物へと向けた…。


「こ…この姿で……馬に……(またが)るのは……さすがに……」


「あ、そ…そうだよね!…ごめん、気が付かなくて……」


 確かに、ここで着物姿の楓さんが馬に(またが)るシーンは[18歳未満の良い子は見ちゃダメよ!]の光景が目に飛び込んで来る!…お、大人の俺は、それはそれで「楓さんの素敵な光景ありがとうございます♪」なのだが…。


「で…ですので……次の……機会に……申し訳…ございません……」


「…楓さん……あ、そうだ!」


 俺は素早く松風から降りると、松風の顔を撫でながら語りかけた。


「なぁ?松風?…お前も男の俺ばかりじゃなく、綺麗な女の子を乗せて道中を歩きたいよな?」


 ♪ブ、ブルルルルルーーーー


 俺の言葉を理解してくれた松風は、優しく顔を舐め返事をしてくれた。


「だそうですよ、松風も楓さんを乗せて歩きたいって♪」


「で…でも……この……格好では……」


「跨ぐのではなく、横向きになって乗ればいいじゃない!…俺が楓さんを松風に乗せてあげるよ!」


「そ…その必要は……こ…このくらいの…高さなら……自分で…飛び乗れます……」


「いいから、楓さんは後ろ向きになって両手で鞍を掴んでてよ!」


「……(あるじ)?……そう言いながら……堂々と……私の身体を…触るつもりじゃ……」


「そ、そんなつもりは無いから!…ただ、松風に乗って欲しいだけだから!…何もやましい事なんて考えてないから!」


「……分かりました……では、いつでも…どうぞ……」


 楓さんは両腕を後ろに伸ばし鞍を掴んだ…こんな事、サラブレットサイズの大きさじゃ到底出来ない芸当だ!。


「じゃ、いきますよ!」


 俺はしっかりと両手で彼女の骨盤辺りを掴んだが、どうしても彼女と目を合わせる事は出来なかった…無論、彼女の顔色を窺うのが怖かったからだ!。


「せぇ~~~の!!」


 ♪ピョン!!


(あれ?)


 俺の掛け声と共に楓さんは軽く松風に飛び乗った!…結局俺は、彼女の骨盤を触っていただけの恥ずかしい結果となってしまった…。


(だよな…この子は…一子相伝の剣術[大和飛燕流(やまとひえんりゅう)]の伝承者だもんな…少しでも彼女に男らしさを見せたかったけど…なんだかハズイ……)


 何もいい所を見せられず意気消沈した俺は、情けなくトボトボと松風の手綱を握り歩き始めようとした時だった。


「…(あるじ)…私……こんな…名馬に…乗ったのは…初めて……とても…嬉しいです…ありがとう…ございます…」


「か、楓さん…」


 彼女は恥かしそうに俺を見詰め、小さく微笑んだ!…あの氷のように冷たい表情しか出さなかった彼女の顔が、ほんのりと温かく笑ったのだ!。


「あ、(あるじ)…あ……あまり……私を……見ないで…ください……」


(楓さんは、単調なサイボーグの心じゃなく…ちゃんと感情のある女の子だった…それを知っただけでも俺は…何だか嬉しい♪…)


「ま、松風も…楓さんを乗せる事が出来て喜んでいるよ!」


「…松風…も?…」


「うん、そうだよ♪…それに、何だか俺も嬉しい!」


「…(あるじ)…」


 時代劇のシーンでもよく見かける田園沿いの街道で、俺は楓さんを松風の背に乗せのんびりと手綱を引き歩いていく…時々、チラリと後ろを振り返り彼女の様子を窺うと、夏風に長い黒髪のポニーテールをなびかせ、優しい笑みを浮かべながら遠くに見える山々を眺めていた…。


 ♪キュン!


 昭和から平成初めの頃[若い男子はポニーテールの女の子に胸をときめかしていた]と、ラジオで聞いた事があったが、正にその通り!…年甲斐も無く当時の男子の気持ちが分かってしまうほど、俺も楓さんの姿にキュン!…となってしまったのだ。


(楓さん…綺麗というより……可愛いのほうが合ってるかもな…)


「ツバメの子供が鳴いてるよ~♪、お腹がすいたと鳴いてるよ~♪、お口を開けて呼んでるよ~♪、優しいお母さんを呼んでいる~~♪」


(え?…楓さん!…あの楓さんが、歌を口遊(くちずさ)んでる!…そ、それも…サイボーグ口調じゃなくて、ちゃんと歌になってるじゃないか!)


「お母さんは~今日も飛ぶ~♪、子供の為よと今日も飛ぶ~♪、立派に育てと今日も飛ぶ~♪…」


(楓さんの歌声…なんて綺麗な歌声なんだ……今の可愛い楓さんの姿を見たら、藤吉郎様なんて完全にテクニカルノックアウトで間違いないな!…)


 もし、あの凄まじい[大和飛燕流(やまとひえんりゅう)]を目の当たりにしていなかったら、俺も今の彼女にKOされていたかも知れない!…それに、さっきからずっと俺の肩甲骨辺りから、おねちゃんの(た~~っちゃぁ~~ん!)と、怨霊のような声が流れ続け、俺の中に存在する男の煩悩を見事に制御してくれていた!。


「と…とっても、可愛い歌だね♪…それは、楓さんのお母さんから教わったの?」


「……はっ!!………ま、まぁ……母から……教わりました……い、今のは……聞かなかった事に…」


「でも、もう聞いちゃったし…それに、松風だって楓さんの歌声に気分が良かったみたいだよ、耳をピクピクさせて、尻尾を大きく振っていたから♪」


「ふ……不覚!…私と…した事が……」


「ね、ねぇ?…楓さん?…前から気になっていたんだけど……その喋り方、わざとそうしているんでしょ?」


「……そ、そんな事は……ありません…これが……私です……」


「違うでしょ?…本当の楓さんは、さっきの歌のように、ちゃんと言葉を流暢に使える人だよ…その喋り(かた)は忍びの修練で教わったのでしょ?…口は災いの元…だから忍びは決して余計な会話をしてはならぬと!」


 どうやら俺の予想はビンゴだったようで、少し彼女の目が大きく見開き、可愛い唇が少し開いた。


「そ、そうです……あ……(あるじ)の……言う通りです……」


「でもさ、俺と2人の時は本来の[橘楓(たちばなかえで)]さんでいて欲しいんだ、当然俺の警護の役目も知ってるし、森(さま)への忠義だって分かっている……な、何だかうまく言えないけど…俺には、ちょっと違う気がしてならないんだ…」


「……(あるじ)……」


「あ、その(あるじ)も、今から禁止ね!…どうも未来人の俺にはしっくりこないし…」


「は…はい…では、どの様に(あるじ)をお呼びすればよろしいのですか?」


「お♪、やっぱり普通に会話出来るじゃないか♪…何でもいいよ、楓さんの好きなように呼んでくれて♪」


「そうですか、では……淳一さん!…」


「えっ!!」


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