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戦国時代の電気屋さん  作者: 朝風清涼
第3章 戦国女子が令和の時代に来るとこうなります!

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説得は終わった

 すでに(楓さんの返答はこう来るはず!)と呼んでいたので、俺は彼女に(あるじ)らしく落ち着いて意見を述べる。


「私が消えるのはほんの一刻(いっとき)、約2時間程度だよ…それならおねちゃんとご飯を食べ、お風呂に入っている時間に私は帰って来るから、だから楓さんもおねちゃんと待ってて欲しいんだ!」


「…お風呂?……意味不明……お風呂とは…何ですか?」


「えっと…沐浴するというか…いや違うな………あ、行水をする場の事かな…」


「なんで、うちが楓と行水しなきゃいけないんだい?…それに、この子と2人でご飯を食べるのかい?…令和に行ってまで、お通夜のような暗いご飯なんて食べたくないよ!」


(あるじ)と離れる…森様の(めい)に背きます…では、(あるじ)が令和から一人でこの時代へ戻る前に…私を斬り捨ててから…戻ってください…」


「令和の時代でそんな事をしたら、完全に俺の人生が終わってしまうの!!」


 さすがこの問題児は一筋縄ではいかないようだ…わずか2時間程度ですら俺と離れれば、彼女は森様との約束を裏切ってしまったと思うのだろう…。


(従順なのは認めるし、更におねちゃんの誘惑攻撃からの盾にもなってはくれそうなんだが、やはりこれでいいのか?…と考えてしまう…)


「あの、楓殿?…少しいいですか?」


「何でしょうか?…小一郎殿……」


「これほど巽殿の身を案じられ天晴れだとは思いますが、巽殿も人の子、当然(かわや)に用を足しに行かれまする、その時も楓殿は巽殿の近くに居られるのですか?」


「えっ!……ぇ……」


(あれ?…みるみるとあの[氷のサイボーグ]である楓さんの顔が赤くなっていく!)


「と、殿方(とのがた)の……用足しを……聞く好みは…ございません!…」


「では、その時は楓殿も、巽殿から離れているのですよね?」


 小一郎様は楓さんと問答をしながら電卓とメモ帳を使い、先ほど藤吉郎様やおばちゃんに解説した時間表記の図を参考にしながら、何やら計算をしていた。


「も…勿論で…ございます…」


「そうすると、恐らく巽殿の(かわや)の利用時間は…令和の時間で3分ほど……この時代だと…一日24時間として…令和と、この永禄時代の誤差を計算すると…4(こく)となり…8時間分となる……なるほど、十分だな……」


(おいおい、俺のおトイレタイムを使って何を計算してるの?)


「のぉ、小一郎?…さっきから電卓を叩いて何をしておるのじゃ?」


「はい、楓殿が巽殿から離れてもよい時間を確認しておりました!…それは巽殿が(かわや)に閉じ篭っている時間でございます!」


「おぉ!…巽殿が糞をしている時間か♪…なるほど、令和なら糞をしている時間は短いが、わしらの時代では4刻分になるという事じゃな!…さすがは小一郎じゃ!…頭が良いのぉ~♪…そうかぁ~、糞の時間かぁ~…」


(あ、この人!…俺達が令和に滞在していてもオイタ(浮気)の成功はまず有り得んな…デリカシーが無さ過ぎる…)


「楓殿?…この位なら待てますよね?」


「…は…はい……し、しかし!……令和では…その…か、(かわや)程度の…時間ですが…この時代だと…(あるじ)は…もっと…長い(とき)を一人で……や、やはり私も(あるじ)と!」


「その心配は無用!…何故なら、巽殿はすぐまた令和に戻るからです!」


「どういう事じゃ?…小一郎?」


 小一郎様の策はこうだ、まず俺がこの時代に戻る月日と時間を先に小一郎様と決め、その時刻に合わせ俺がタイムスリップをし、到着場所で待っている藤吉郎様と小一郎様に信長様へ献上する荷物を渡し、またすぐ庄内川の欄干から飛び込み令和へ戻るという策である!。


「で、巽殿から受け取った荷物を兄上と私が殿の元に持参すればいいのです!…これなら恐らく、楓殿があくびをする間に巽殿は令和に戻れるはず!…それでも楓殿は不服ですか?」


「そ…それなら…構いませんが…」


「さぁ~すが、小一郎じゃ!…わしの自慢の弟じゃ♪…これで、おねも大人しく令和で楓ちゃんと待てるというもの♪」


(…この悦びよう……浮気作戦がばれるのが怖いから、おねちゃんに帰って来て欲しくないのね…でも、実はおねちゃんも同じ事を考えているんですよ…その証拠に、おねちゃんは全然藤吉郎様を突っ込まないし!…)


 それから俺と小一郎様は綿密に[おねちゃんウキウキ・2泊3日タイムスリップツアー]の構想を図面に作成した。


「では、正確な待ち合わせの時間が分かるよう、出立前に小一郎様へ私の腕時計を渡します!」


「畏まりました…確かにお預かりいたします!…では、これから?…殿の元へ?」


「はい、しばらく令和の時代に戻る旨を信長様にお伝えに行って参ります!」


「そうですか、お気をつけて!」


「楓さんが一緒ですから大丈夫ですよ♪」


 こうして俺はリュックを背負い松風に乗ると、楓さんに手綱を引いてもらい清洲城へ出立した…後ろから俺達を見送るおねちゃんのジェラシーに満ちた視線をひしひしと感じながら…。



 [清洲城に向かう道中]



(ほ、本当に…この立場でいいのだろうか?)


 男の俺が馬に乗り、綺麗な女の子が手綱を引き歩いている…当然ながら俺の時代では逆が当たり前で、他人から見ればかなり酷い男だと見られるはず…基本、俺はフェミニストだと思っているし、正直彼女に対し申し訳ないとも感じていた。


「あ、あの?……そろそろ交代しようか?」


「…意味不明…何が言いたいのですか?」


「いや、楓さんばかり歩かせては申し訳なくて…今度は俺が手綱を引くから楓さんが松風に乗りなよ…」


「何を…愚かな事を……信長様の名馬を…私ごときが…乗せていただくなど…出来ませぬ…」


「い、今は…俺の愛馬なんだけど…それに、楓さん!…私の時代の男子はもっとおなごに優しくしなければならない決まりがあります!」


「…ここは…令和では…ありません…」


「いえ、俺は令和時代の男子!…それに(あるじ)の立場である者ほど、おなごを大切にしなくてはならない、楓さんは(あるじ)である俺に恥をかかせたいの?」


「そ、その様な…つもりは……」


「なら、俺と交代してくれるよね?」


「………は…………はい……で、でも……」


「でも?」


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