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戦国時代の電気屋さん  作者: 朝風清涼
第2章 これが戦国時代なの?

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午後のひと時

(あるじ)(めい)なら…畏まりました…」


 ようやく楓さんと俺との距離が2メートルまで縮まった…俺は両手を後頭部に当て、リラックス姿勢で目の前に広がる田植えを終えた田園風景を眺めていた。


(良かった…斬りかかって来なくて…)


「…………………」


(この子、俺から話しかけないとずっと黙ったままなのか?)


「あ、あの…楓さん?……な、何か俺に聞きたい事は無いかな?…」


「ありません…(あるじ)(あるじ)…それだけの事……」


(誰かNo1ホストになった経験のある方!…こんなお客さんの対応方法を俺に伝授してくれ!!)


「で、でも素性の分からない男にずっと付くのは気味悪くない?」


「…森様の命なので……(あるじ)が…何処の馬の骨でも関係ありません…」


「そ、そなの…」


 俺は鳶が舞う大空に顔を向け、その空に藤吉郎様の顔を描き出しこう叫んだ!「藤吉郎様!…この子おねちゃんよりも毒舌ですーーー!……あなたには絶対無理ーー!!」と…。


「じゃ、聞くけど…もし…俺が尾張を出て何処かの国に行くとしても、楓さんは着いてくるの?…森様から離れてしまう事になるけど…」


「…愚問…森様から任を解かれるまでは…何処にでも……着いて行きます……」


(ですよねーーー!!)


 またしても俺の脳裏に「これはまずい事になった!」という言葉が飛び出す!…一体、俺がこの時代にタイムスリップして何回このセリフを発したのかもう忘れてしまうほど言ってるはず…。


(もうこのまま隠し通すわけにはいかないようだ…この子は確実に口は堅そうだし…カミングアウトしても問題は無いかも知れない…)


「あ、あの…楓さん?……最初に俺を見た時…どこかこの時代の人とは違うと感じなかった?」


「……興味が無かったので、感じませんでした……」


(誰か、俺の横にヘルプホストを付けて~~!…何とかこのサイボーグの心を開かせてくれ!!)


「もう正直に打ち明けるけど、俺はこの時代から470年先の未来からやって来たんだ!」


「………そうですか………」


「そ、そうなんだよ~!…この事実を知っているのは木下家の皆さんと、森欄丸様、織田信長様しか知らない秘密なんだよ~!!」


「……はい、分かりました……(あるじ)は…未来から来たお人なんですね……」


(え、何?…その冷ややかなリアクション?……全く信じてないって事?…)


「あ……あの?……驚かないのかな?……」


 これまでの俺の人生で[マジな拍子抜け]を経験したのは今が初めてだ!…それとも、この子は[未来]の意味を理解していないのか?。


「何をでしょう?…」


「お、俺は470年後の時代からこの時代に来たんだけど、何も感じないの?」


(あるじ)(あるじ)…それ以上でもそれ以下でもありません…」


「し、信じてないでしょ?…俺の言葉…」


「いえ、あの織田信長様が大事にしていた名馬…[(さざなみ)]を足軽頭(あしがるがしら)(あるじ)に譲るのは大きな信頼がある証拠……欄丸様も存じていたとは…知りませんでしたが…欄丸様に友が出来たと、森様の喜び様は…大変大きかったです…」


(お、何とか3(ぎょう)まで喋れるようになってくれた!)


「そう…なら、楓さんも俺が未来から来た事実は認めてくれるんだね?」


「…私が…とやかく言うことではありません…ただ、(あるじ)は信長様より賜った主命の為に…私は…森様の(めい)に従い…何処までも…着いていくだけ…」


(だから、それが一番厄介なんだって!!)


「じ…じゃぁ…信長様が俺に与えた主命を打ち明けるけど…これから470年後に戻りお(いち)様と、奥方の胡蝶(こちょう)様に献上する品々を購入しなければなりません!」


「愚問…例え470年後でも…地獄でも…(あるじ)の行く所は着いて行きます…それが私の役目…」


「あ、あのね~…俺はともかく、楓さんが未来に行けるかどうか分からないの!」


 普通俺の時代のOLだと、まだそんなに理解していない男の同僚と、2人だけで何泊も出張するなんて会社の命令でなければ承諾なんてしないし、その後はOL仲間とトイレで上司の愚痴大会になるのが当然の転回である!…なのに、この子は未来へ行く気満々である事が俺には理解不能だった…。


「…(あるじ)だけでなく…道具も一緒に…未来から来たのなら…人も一緒に行けるはずです…」


「あ、そう言えば…そっか……道具も一緒に来てた……あぁ、でもでも、あの庄内川の欄干から水面へ飛び込むんだよ!」


「あの程度の高さ…私には…どうって事ありません……」


 どうもこの時代の女性は頑固な性格なのか、それとも自分の意思が強くなるよう育てられたのか、おねちゃんもそうだが、一度言い出したら聞かないのが戦国女子みたいだ。


(こりゃ一度、木下家に戻って家族会議をするしかなさそうだ…俺一人じゃ手に負えん…)


 藤吉郎様が指摘した最初のクエストはさらっとクリアしたのだが、次に出てきたクエストはより俺を悩ませる結果となった!。


 [第二クエスト <剣客・橘楓> を令和の時代に連れて行く!]


 とりあえず俺的レベルで例えると、突如宇宙から宇宙戦艦の艦隊が現れたくらい衝撃的なレベルだと言えるほど、きっとタイムスリップした楓さんも令和の時代を見て同じ衝撃を感じるはずだ!…。


(それと!…一番やばいのは、令和の時代に刀を持って街を歩けば、完全に銃刀法違反でパクられる!…だがそれを説明しても相手は剣客…刀は自分の命と同じと言い張るだろう…となると、凶暴な猿が刃物を持ってウロウロしているのと変わりない!…)


「あ、あの…とりあえず…その件については…木下家の皆さんとも相談しようよ…」


「その必要はありません…木下家の皆様には…関係無い事…」


「そうはいかないよ、俺にとって木下家の皆さんは家族同様だしね!…さ、帰ろっか?」


 こうして俺は木下家の皆さんに楓さんを令和の時代に連れて行く旨を相談する為、畦道を歩き出したのだが、言いようの無い不安がずっと俺の心臓を掴んでいた…。


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