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戦国時代の電気屋さん  作者: 朝風清涼
第2章 これが戦国時代なの?

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氷の剣客

 子供の頃、夏休みになると田舎の爺ちゃんの所に帰省していた、そんな爺ちゃんの楽しみはローカル放送局の時代劇アワーを観賞する事だった、まぁ当時の俺では何が面白いのか理解出来なかったが、ヒーロー役が悪人に囲まれるシーンは何故か覚えている。


(でも、あれは役者さん達……ただ…今、俺の目の前の光景は絶対に怪我人が出るマジの決闘……)


 楓さんは5人の男達に囲まれている…もし、森様の言う通り20人の剣客を叩き伏せたのが事実なら、すでに勝敗は決まっているが…。


(相手は目録級…いわば全員が師範代以上の実力者…楓さん…大丈夫なのか?…)


「どこまでもクソ生意気な小娘だ!…今からお前の着物をひん()いて、その無愛想な顔を泣き顔に変えてやる!!…いけ、野郎共!!…正し、後の楽しみの為に、身体はあまり傷付けるなよ!!」


「おぉーーーー!!!」

「おぉーーーー!!!」

「おぉーーーー!!!」


「どこまでも…(おのれ)が学んだ流派の名を汚すか………クズ共………」


(楓さん!!)


 リーダー格の男以外、四方から楓さんに向かって子分達が斬りかかってきた!。


 ♪バシッッッ!!!


(えっ!)


 4人の子分のうち、最初に飛び出した男を楓さんは素早く第一のターゲットにし、身体を小さく屈めながらその男に向かい一瞬にして男の左膝を鞘で打ち抜いた!。


(き、着物姿なのに…なんていう瞬発力だ…)


「い!!いっでぇぇぇぇーーー!!…お、俺の左足がぁぁぁーーーー!!!」


 第一のターゲットにされた男は左足を抱え、地面の上で転がりまわり悶絶した!。


(アレ…完全に膝の皿を粉砕されたぞ……)


大和飛燕流(やまとひえんりゅう)…<低飛燕(ていひえん)>…後…4人……次は…誰だ?…」


(す、凄い…正に低空のまま目の前を横切った(ツバメ)のような速さだった!……)


 地獄の責め苦のように悶絶している第一ターゲットを目の当たりにしたその他子分達は、刀こそ楓さんに向けてはいるが、完全に戦意喪失状態となったようだ!。


()ぬのか?…私の着物を剥がしたいのであろう?……遠慮するな……早く来い……来ないなら…私から行ってやる……」


「ひっっ!!」


 ♪バシッッッ!!!


 楓さんは自分から一番近い次の子分に向けて飛び出し、またしても一瞬でその子分の右膝を粉砕した!。


「うっぎゃぁぁぁーーー!!ひ、膝が…い、痛ぇぇーーーー!!!」


「後…3人……次は……貴様だ!!」


 楓さんの鋭い眼差しは地面に倒れた子分のすぐ後ろに居た男へと向けられた。


「う……うぅわぁぁーーー!!……こ、こうなりゃ先に俺がお前を斬ってやるぅぅーーー!!」


「お、俺も加勢するぞ!!…2人同時なら俺らに分がある!!」


 楓さんの強さと恐怖に圧倒され頭がプッツンしたのか、残りの子分2人が同時に左右へ別れ彼女に向かって斬りかかった!。


「愚かな……それでも貴様らは目録か?…」


 ♪バシッッッ!!……バシッッッ!!


 楓さんは、あの時おねちゃんとの決闘で見せた身体をふわりと一回転させ刀の攻撃を交わす技を出し、またしても一瞬で子分達の足の膝を粉砕した!。


「い、いでぇーーー!!」

「か、(かしら)ぁぁーーー…足が痛ぇーーー!!」

「な、何なんだ…この娘!!……い、一瞬で目録のあいつらを……」


「た、たっちゃん……あ、あの子…ば、化け物だよ……う、うち…あんな化け物と……」


「す、凄い…」


「…大和飛燕流(やまとひえんりゅう)…<舞飛燕(まいひえん)>…私に多勢攻撃など…何も役にはたたぬ……」


 もはや森様の言葉に偽りでは無かった事が、嫌というほどこの身に染みた…その証拠に、あの負けず嫌いのおねちゃんも彼女の実力を認めてしまったのだから…。


「後は…(かしら)の…お前だけ……」


「う……くっ……わ、分かった!…こ、これまでの事は…謝る!…も、もう二度と悪さはしねぇ!…な、俺も子分達をやられたんだ!…こ、これで終いにしようじゃねぇか?」


 時代劇の脚本家はよく歴史の勉強してるんだなと感心するほど、どの時代でも悪役リーダーの本性はこんなもんであると俺は実感した…。


(でも、相手は楓さんだぞ…)


「所詮…クズは……クズ……剣を持っている以上、剣客としての覚悟を決めよ!…<低飛燕(ていひえん)>!!」


 ♪バシッッッッーーー!!!


「うっぎゃぁっっーー!!…あ、足の膝が…い、いでぇぇーーーー!!!」


「貴様らの手により全てを奪われた者の怒りと悲しみを、その身体で一生背負うがいい!!」


 容赦なくリーダーの右膝を粉砕した楓さんはそれだけでは終わらせず、自ら身体を宙へと華麗に飛ばした!。


(もしかして、楓さんは感情が昂ぶると口調が滑らかになるのか?)


「その刀を握る手で貴様の利き腕は分かっている!…その腕、犠牲者の供養に頂く!…大和飛燕流(やまとひえんりゅう)…<紫電燕(しでんえん)>!!」


 ♪バッキーーーーー!!!


「ぎゃぁぁぁーーー!!!」


 アスリート並に身体を高く宙に浮かせた楓さんはそこから前方宙返りをし、その勢いを使いリーダーの右肩へ仕込み刀の鞘を叩き込んだ!。


(ま、間違いなく…右肩の鎖骨もやられたな……この時代の医療じゃ、もう元には戻せんだろうな…)


「貴様らを産んだ親と、手にかけた人々、それに…剣術を指南してくれた師匠へ詫びながら、これからを生きていけ!」


 悪役全員が地面でのた打ち回る姿をクールに見詰めた後、楓さんは無表情のまま俺達の元へと戻って来た。


「待たせしました……どちら様も……怪我は無いですか?……痛いところ…無いですか?」


(あ、またサイボーグに戻った!)


「わ、私は大丈夫です…いえ、大丈夫だよ!!」


「う、うちは…こ、心が痛いだけ……ふん!…」


「そうですか…では…木下様の家に…戻りましょう…」


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