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戦国時代の電気屋さん  作者: 朝風清涼
第2章 これが戦国時代なの?

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青春時代を思い出す…けど、かなり危険だった!

 初夏らしくジワジワと気温が上がっていくのを身体で感じながら、俺は涼しげに流れている小川の水を何も言わずに見詰めていた。


「…たっちゃん……うち、嫌なおなごだよね……」


「なぜです?」


 ようやく顔を上げ俺と同じ様に、小川を見詰めるおねちゃん目は赤く充血していた…。


「…自分でも分からないんだけど……あの子がたっちゃんに会いに来たと知って…無性に腹が立ってしまったんだ……」


「おねちゃん…」


「あの子、愛想は悪いけど、美人だし……歳もたっちゃんに近いし……何だか…あの子にたっちゃんを取られそうに思っちゃった……うちには旦那がいるのにね…ほんと、うちは勝手なおなごだよ…ねぇ?…たっちゃんはもう分かっていたでしょ?…うちが嫉妬したから、あの子に喧嘩を売ったのを……」


「えぇ…分かっていました…」


 この時、まだ俺とおねちゃんは顔を合わす事無く、ただキラキラと陽の光りに反射している川の水面を眺めていた。


「たっちゃん?…たっちゃんの時代も夫婦(めおと)になるには、親同士が決めるの?」


「それもありますが…どちらかと言うと、親は仲介人のようにしますね、後は本人達が夫婦(めおと)になるかどうかを決めさせます、でも…殆どの場合はお互いが好きになって添い遂げる事が多いです…」


「好きになった者同士が添い遂げるんだ…いいな…うちもたっちゃんの時代に生まれたかった…うちの場合も親同士が決めた婚姻だったから…」


「おねちゃん…」


「だから、それとなく藤吉郎と夫婦(めおと)になったけど…あの人を好きだとは思わなかったな……あの人には悪いけど…」


「それを、藤吉郎様に言ったら悲しみますよ…」


「うん、だからココだけの話し……たっちゃんにはうちの本音を聞いて欲しかったの……」


「本音?」


 川の水で冷やされた風が俺達を優しく包み込む…水の流れる音、風に揺れる雑草の音、上空を舞う鳶の鳴き声…何だか初恋の人と一緒に居るような懐かしさを俺は感じていた。


「うん…この時代、子が出来ないおなごは離縁を申し付けれるなんて当たり前なんだよ…う、うちね…たっちゃんが未来に帰ってからずっと…その事ばかり考えてた……」


「え?」


「これもココだけの話しだけど…うちね…もしあの人と離縁したら、たっちゃんの時代に連れて行って欲しいと思っていたの…最初は戸惑う事ばかりで何も役には立たないけど…一生懸命、その時代の事を学んでたっちゃんと生きて行きたい…たっちゃんの為に美味しいご飯を作ったり…そ、そして…も、もしかしすると…うちのお腹に…たっちゃんの子が出来れば、こんな幸せな事はないと想像していたの…」


「おねちゃん…」


「こ、ここまで言えば…いくらたっちゃんでも、うちの気持ち…分かるよね?」


「わ、分かりますです…はい…」


 この出来事は何が何でも歴史文献には残してはならない事だ!今、俺は未来の北政所(きたのまんどころ)様にハッキリと(こく)られたのだが、これだけは何が何でも墓まで持っていくしかない史実なのである!。


「じゃ、じゃぁさ………たっちゃんが、あの子に興味を持たないって、うちと約束して……」


「え、えぇ!…約束しますよ!」


「く、口約束じゃなくて……ちゃんとした約束の証をうちに…示して…」


「あ、証ですか!!」


「う…うん……この先に、あまり人の来ない神社の森があるの………ねぇ?…うちの御褒美と、たっちゃんの約束の証を……そこで交換したい❤……」


「いっっ!!」


 据え膳食わぬは男の恥とも言うし、その気になった女性に恥をかかすわけにはいかないのだが、何よりも俺の未来の命が大事であるし、このままホイホイと神社の森に行ってしまえば[18歳未満の方は見ちゃダメよ!]のエリアに突入してしまう!。


(な、何とか…おねちゃんを傷付けずにこの場をやりすごさなきゃ!あぁ、でも男の本能が…)


 別におねちゃんは俺好みの女性像とかけ離れている訳ではなく、どちらかと言えばストライクゾーンに入っている!…それが更に俺を苦悩させていた!。


(この先もおねちゃんには俺の保険で居てもらいたい!でも、彼女と一線を越えてしまったら…今以上に命の危険が出て来るのでは?…あの(かえで)って子もかなり危険そうに見えるし…俺とおねちゃんの不倫関係なんてばれてしまったら…(すみ)やかに俺は暗殺されるんじゃないか?…)


「お、おねちゃん…私は命の恩人でもある藤吉郎様を心より慕っております…そんな藤吉郎様を裏切るような事は、男の[義]に反します…」


「た、たっちゃんは……う、うちの事…嫌い?…」


「いえ、未来に戻っていた時も…おねちゃんの事は一時も忘れませんでした…私もおねちゃんの気持ちに応えたい…でも、藤吉郎様への[義]が、私のおねちゃんに対する心を止めるのです…」


(我ながらいい事言ってる気がする♪)


「たっちゃん……で、でも…う、うち…こんな気持ち…初めてなんだ……だ、だから…うちはたっちゃんの事を…諦めたくないよ………」


「おねちゃん…」


「じゃ、じゃぁさ、こうしない?…もしうちの人が浮気したら、その時はまたこうしてたっちゃんと2人きりになりたい…それならたっちゃんの[義]も通していたわけだし…あの人が先にたっちゃんの期待を裏切ったわけだから…」


 これもまた返答に困る提案だ!歴史の文献では今後、藤吉郎様の女癖は更に加速していき、ついにおねちゃんは、あの信長様にまでその件を手紙で出した史実まで残っている!。


(どうする?これって、俺とおねちゃんが確実に一線を越えてしまう未来じゃないか!!なんなの?歴史の神は俺とおねちゃんをくっ付けたいのか?)


 いや、しかし今はこれでこの事態を抜け出せる!まだこの先の未来がどうなるのか分からないのだから、ひとまずこの案を承諾すれば、おねちゃんの機嫌を損ねる事も無い。


「で、では…その事実が判明しましたら、その時は私もおねちゃんと2人で過ごしたいです♪」


「た、たっちゃん……その約束…うち、絶対忘れないから……」


 人妻の魅力なのか、それともおねちゃん自身が持っている魅力なのかは分からないが、俺を見詰める彼女の顔はあどけなくも可愛いい微笑だった。


(こ、これって……キスが出来る間合いじゃないか?……ど、どうする?この時代にもキスをする習慣があるのか?…一線を越えなければ、キスぐらいなら許される?…いや、やはりこれも一線を越える複線になるでは?……で、でも…おねちゃんの唇…可愛い…)


 彼女の唇には俺がプレゼントしたリップが塗られている…その魅力に自然と俺の顔が、彼女の顔に寄せ始めようとした時だった!。


[ココに…居られましたか…(あるじ)…]


「ドヒッッッ!!!!」


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