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戦国時代の電気屋さん  作者: 朝風清涼
第2章 これが戦国時代なの?

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パリピ人妻VS氷の剣術美女

 大学時代ではスキーサークルや学祭、他校の女子達との合コン!それぞれのイベントに顔を出し、淡い青春LOVEストーリーを求めていた俺だったが、まず女の子とツーショットになる機会は訪れる事は無く、言わば売れっ子ホストの横に付いて場の雰囲気を盛り上げる<駆け出しホスト>的な存在が俺だった。


(そんな俺を…今は2人の女性が取り合っている!!)


 こんな経験、出来れば学生時代に味わってみたかったのだが、実際その光景を目の当たりにしてみると[マジ戦闘モード]に入った女性のオーラは、男でも近くに寄れないほど不気味に強く漂っていた。


(かえで)とやら、随分うちを舐めてるようだけど、幼少の頃より剣術を習っていたのは、あんただけじゃないんだよ!」


「愚問……木刀遊びは…誰でも経験がある……」


「あ、遊びだってぇーーー!!ほら、さっさと竹刀を構えな!!」


 ハッキリ言っておねちゃんの言葉に偽りが無い事は剣道経験なしの俺でも分かるほど、彼女は凛とした中段の構えを楓さんに向けた!。


「と、藤吉郎様?本当におねちゃんは剣術を習っていたのですか?」


 藤吉郎様達と縁側で彼女達を見守っている俺は、まだあのおねちゃんが剣術の心得があるとは信じられず率直に質問をぶつけてみた。


「うむ、確かおねの祖父は播磨の国で剣術指南役だったとは聞いていたが…まさかあやつも指南を受けていたとは初めて知った!」


「兄上、あんな威圧的な雰囲気を出している姉上は私も初めて目の当たりにしました…」


「うむ!わしの見立てだと、これまで眠っておったおねの剣豪としての才が、あの楓とやらの出現で目覚めたに違いない!小一郎、わしの目に狂いは無いぞっ!」


(いえいえ思いっきり狂ってますよ!…剣豪の才じゃなく、女の嫉妬が丸出しじゃないですかーー!)


 庭の畑から流れてくる草と土の香り…そんな初夏の風が対面している彼女達にも静かに流れている。


「ほら、早く構えな!!」


「……私は…これでいい……あなたに…構える必要はない……」


 楓さんは竹刀を握る右手をぶらりと下げたまま、おねちゃんの竹刀だけを見詰めていた。


「ふん!好きにしな!自分が[井の中の(かわず)]だと思い知らせてやるよ!!」


 素早くおねちゃんの右足が前に出た瞬間、竹刀の先が楓さんの胸元へと鋭く突き出した!。


「……ふ……」


 まるでおねちゃんの攻撃を読んでいたかのように楓さんはひらりとその攻撃をかわす!。


「ひっかかったね、小娘!!」


 真っ直ぐ前に伸ばした<おねちゃん>の両腕が今度は左に薙ぎ払われた!。


(水平斬り!!)


「…ふん…」


 しかし、その動作も楓さんは読んでいたのか、軽く後ろにステップし竹刀の間合いギリギリでかわす!。


「巽殿…あの楓とやら…かなりの者じゃぞ……あの<おね>の素早い動きを全て見切っておる…」


「…お、おねちゃん…」


「ちょろちょろと蝿のように飛び回るんじゃないよ!!」


 上段斬り、袈裟斬り、横払い、そして突きの連打…そんな、おねちゃんの休む事無く続く攻撃を楓さんは冷たい笑みを浮かべながら、一切竹刀で受けず軽々とかわしていた!。


「兄上、なんたる楓殿の身の軽さ…まるで舞っているようです…」


「………おね………」


 小一郎様には<舞い>のように見えているようだが、俺には彼女が優雅に[社交ダンス]をしているように見えていた。


「くっ、いい加減大人しくしな!!」


 ちょうど楓さんがおねちゃんの真正面に移動した瞬間、その隙を見逃さなかったおねちゃんは、高速で竹刀を振り下ろし上段斬りを発動させた!。


「…ふ♪…」


「な、何!!」


 楓さんは一瞬口元を緩ませると、クルリと身体を右側に1回転させ、おねちゃんの上段攻撃をかわすと同時に手にしていた竹刀を彼女の首筋に当てた!!。


「…勝負…ありました…真剣ならば…今…あなたの首は……飛びました……」


「う……くっ!!…」


「あ、兄上!い、今…楓殿の動き…み、見えましたか?」


「い、いや、わしの目も追いつかなかった…」


「ほっ、ほっ、ほ♪今日から新しい家族が増えたようだね♪めでたい事じゃて♪」


「は、母上…」


(…おねちゃん…)


「まだ……私と……やりますか?…」


「う!……くっ……」


 ♪トサッ……


 完全に敗北を認めたおねちゃんの右手に握られていた竹刀が力なく地面へ落ちた。


「う……うぅっ……く、くそぉ!!」


「お、おい!…おね!!」


「姉上!!」


 敗北感に耐えられなくなったのか、おねちゃんは俺達に顔を合わせる事無く素足のまま庭の外へと駆け出してしまった!。


「藤吉郎様、このような原因を作ったのは私の責任です!ここは私に任せてください!!」


「す、すまぬ!!頼んだぞ、巽殿!!」


 俺はすぐ草履を履き、おねちゃんの後を追いかけたのだが、すでに彼女の姿は何処にも無く、とりあえず村の外にまで捜索範囲を広げおねちゃんを探した!。


(どこに行ったんだ?…まさか負けたショックで…いやいや、あのおねちゃんがそんな軽はずみな事をするわけは…)


 探す事およそ20分、少し村から離れた小川の土手で体育座りをし、淋しそうに顔を伏せている彼女を俺は見つけた!。


(良かった、無事で…)


 よほど楓さんに負けたのが悔しかったのか、彼女は何度も肩をひくつかせ両手の拳を握り締めながら泣いていた。


「……おねちゃん……」


「…!!!…い、嫌っ!こ、こっちに来ないでよ!!こ、こんな情けない姿…たっちゃんに見られたくない!!」


「…何が情けないんですか?…私の目にはとても綺麗で勇ましいおねちゃんが映っていましたよ…」


「そ、そんなの嘘だよ……あの楓の方が強くて綺麗だと思っていたんだろ?…」


「そんな事ありませんよ…」


 俺は小さく体育座りをし落ち込んでいるおねちゃんの横に座り、サラサラと綺麗な水が流れる川を見詰めていた。


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