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戦国時代の電気屋さん  作者: 朝風清涼
第2章 これが戦国時代なの?

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訪問者

「お、おぉ!巽殿!!よくぞ帰ってこられた♪」


「ちょっと遅かったから心配してたんだよ、たっちゃん!」


 藤吉郎様の生家に戻った俺は「少々トランクスの洗濯と乾きに時間がかかりました!」とは言えず松風の上で夕日に照らされながら頭を搔くしかなかった。


「し、しかし巽殿!また急ぎ清洲に戻るのか?」


「え?何故です?」


「い、いや…まだ馬に乗っておるので…何か忘れ物を急ぎ取りに来たのかと…」


「いえ、この馬は信長様より頂きました♪」


「な!なんと!!殿が足軽頭(あしがるがしら)の巽殿に…う、馬を与えられるとは!!…」


「あははは~♪じゃぁ、この子、たっちゃんのお馬なんだぁ~♪良かったね~♪」


「ははは♪はい!」


「ははは♪ではないぞ、巽殿!その馬の毛色…どの馬よりも体格がいい、ま!まさか殿が所有されている名馬<(さざなみ)>ではござらんか!!」


「えぇ、私も先ほど森可成(もりよしなり)様からもそう教えていただきました」


「な…なんとぉ~~…森様にも会ったのか!!…あの森様にも!!」


 藤吉郎様は力が抜けたように、ヘナヘナとその場にへたり込み、悲しい表情で地面を見詰めた。


「わ、わしは何年も殿にお仕えし、ようやく<台所奉行>の役目を頂いたというに…巽殿はまだ一月(ひとつき)も経っておらぬ…なのに、もう馬の騎乗を許されたとは…わ、わしは…うぅっ…自分が情けないでござるよ…おねから表六玉(ひょうろくだま)と言われても仕方がないの…」


「藤吉郎様…」


 俺は松風から下馬し、手綱をおねちゃんに手渡すと、へたり込んでいる藤吉郎様の前で何も言わずにひれ伏した。


「藤吉郎様!今の私がこうして健全なのも、全て藤吉郎様のお陰でございます!このご恩は一生涯忘れません!それに、間もなく藤吉郎様の立志の道が開かれます!」


「そ、そうなのか?巽殿?」


「藤吉郎様には嘘偽りなど申しません!必ずや藤吉郎様は織田家の重臣に出世いたします!!」


「お、おぉ…う、嬉しいの…ぐすっ…う、嬉しいの~…巽殿がそう言ってくれたのなら間違いはないの…あぁ!何やら、わしもやる気が起きてきたぞ♪よし、巽殿!今宵は大いに飲み明かそう♪」


「は、ははっ!!」


「ぐすっ、ありがとね、たっちゃん!うちも嬉しいよ♪あ、このお馬さんの世話、うちがやっていい?こう見えてもうちは馬の世話が得意なんだよ♪実家にも馬がいたからさっ!」


「それは有り難いです、ヨロシクお願い致します!」


 その日の夜、俺は久しぶりに酒が美味いと感じながら、森様との出会いと今後の事について木下ファミリーの皆さんに説明していた。


「そうじゃのぉ~、いきなり巽殿に馬をお与えになるのだから、森様のようにお心が寛大なお方でも無い限り嫉妬する者も居るであろうな…」


「あんたも含めてね!」


「お、おね!わ、わしは違うぞ!わしは…その…自分が情けないと感じただけじゃ……」


「どうだか!で?森様はたっちゃんの身の安全のために警護役を付けてくれるんだね?かなりの猛者な男を♪」


「そ、そのようです…本当かどうかは分かりませんが、20人の相手を打ち負かしたほど腕のある方のようでして…それもまだ歳は22の若さだと、森様は言われていました…」


「兄上、これは織田家も安泰ですな、この様な猛者が尾張に居るのは♪私は剣術が出来ませんので羨ましいですよ…」


「だが、小一郎には他の者にも負けぬ知力があるではないか♪武芸だけが尾張の役に立つのではないからの♪しかし、ちとわしもその者に剣術を習って見たいものじゃ♪」


「あんたは畑の雑草相手に木刀を振り回してな♪」


「お、おね~~…」


 酒を飲みながらこんなに笑ったのは何年ぶりだろうか…俺自身の記憶では先代から会社を引き継ぎ、その日に浩一と夢を語り合い酒を飲んだ記憶しか無かった…。


(それからは酒を酌み交わす余裕も無いほど俺は落ちぶれていったけど…)


「そう言えば巽様、あのお薬!大変効果がありましてな、すぐ頭痛が治まりました!ほんに有り難いことですじゃ♪」


「それは良かったです、あの薬はおばちゃんに差し上げますので、また痛くなったら飲んでください」


「それはそれは、すまないねぇ~♪」


「さて、明日はどの様な猛者が現れるか楽しみにしながら、そろそろ今夜は休もうではないか!」


 やはりこの時代の酒<どぶろく>はかなり強かったのか、俺もいつしか囲炉裏前で寝てしまっていた。



 [翌朝]



[ごめんくだされ!ここは木下様の住まいで間違いはありませぬか!]


 誰かが外でこの家の確認をしているようだが、まだ俺は95%睡眠状態なので、これは夢なのだと思い込んでいた。


「あははは~♪こんな朝からどちら様~~♪」


 微かにおねちゃんの声が耳に流れてくる……それにしてもリアルに感じる夢だ…。


「はいは~い、ここは木下()ですよ~~ん♪」


 ♪ガラガラガラ~~~~


(あ、戸が開いた音がした……今、おねちゃんが戸を開けたようだな…)


 ♪……ガラガラガラーーー!!ビシャッッ!!!


(えっ?またすぐに戸を閉めたんじゃないか!!外に誰か居るんだろ?)


 この事態に俺の覚醒モードが75%に跳ね上がる!。


 ♪ドタドタドタドターーー!!


(この音!も…もしかして、おねちゃんダッシュ?)


「こらーー!!この表六玉ーーー!!」


 ♪バッシッッッ!!!


(ゲッッ!!)


「うぎゃ!!な、何をするかおね!…い、いきなりわしのケツを蹴り上げるとは!!」


 俺は目撃してしまった!おねちゃんの見事なキックフォームを!もし彼女が俺の時代に生まれていたのなら、間違いなく[なでしこJAPAN(ジャパン)]のエースストライカーになっていたと思わせるほどの強烈なシュートを<藤吉郎ボール>に喰らわせたのだ!。


「[何をするか]じゃないよ!ここにおなごが訪ねて来てるんだよ!あんた、やはり城でおなごにコソコソとちょっかいを出していたんだね!!」


「ちょ、ちょっかい?…し、知らん!わしはそのような事、断じてしてはおらん!!」


 つい俺は(そういう、おねちゃんはどうなの?)と、心の中で突っ込んでいた…。


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