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戦国時代の電気屋さん  作者: 朝風清涼
第2章 これが戦国時代なの?

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ご注文頂きありがとうございます

 信長様はかなりネッククーラーをお気に召したのか、あれからずっと首にかけているようだった。


「巽よ、この<ねっくくーらー>はまだ貴様の蔵に残っておるか?」


「え?…は、はい!まだ在庫がありますが……」


「そうか、ならもう一つ持って来てはくれぬか?この夏が本格化する前にじゃ!」


 正直、一人で清洲城に呼ばれた事で、どんな無理難題を俺に押し付けるのか?とかなり不安だったが、商品の追加注文だった事で俺は安堵と共に全身の力が抜けた!。


「しょ、承知いたしましたが…二つも必要でしょうか?」

戦場(いくさば)にでも持っていくつもりか?)


「うむ、先ほどこの<ねっくくーらー>を<胡蝶>に見られてな、「わらわは幾重にも着物を着ておるというに、殿方はいつでも薄着が出来るにも拘わらず、それでもまだ涼を求めて羨ましいかぎりじゃ!」と嫌味を言われての…」


<胡蝶様>あの斉藤道三の娘で信長様の奥方であるお方、やはり(まむし)の娘は(まむし)なのか、この信長様にそこまで嫌味を言えるとは<おねちゃん>顔負けの気の強さだ!。


(そっか、大名家の女性はいつもあんな着物姿なんだよな…冷房完備も無いのによく熱中症にならないよな…これも精神鍛錬の賜物か?……ん?ちょっと待て…着物を着た女性にネッククーラーは似合わないんじゃないか?…恐らく暑いのは通気性のない着物の中では…)


「信長様、そのネッククーラーはおなご様には不釣合いかと思われますので、別の商品をご用意させていただいてもよろしいでしょうか?」


「ほう、<ねっくくーらー>以外おなごでも涼が取れる品があるのか?」


「ございます!」


「ふむ、しかし胡蝶はかなりの偏屈…別の品で気に入るかどうか…」


「必ずや気に入っていただけると存じます!」


「………よし分かった!その件、しかと巽に申し付ける!胡蝶が気に入ると断言いたすのなら、その品!金1000両で買ってやるぞ!」


「い、いえ…御代は結構でございます……ただ、足軽頭(あしがるがしら)の私が口に出すのも恐れ多き事ですが…この清洲城へ向かう時に乗せていただいた馬を大そう気に入ってしまい…今後、信長様からのお呼び出しが来てもすぐに駆けつけられるので…す…が……」


「ふん!なるほど、足軽頭(あしがるがしら)の身分で馬が欲しいとは!!大きく出おったの!!…あい分かった、巽に馬の騎乗を許す!」


「あ、有り難き幸せーーー!!」


 これで足の疲れと痛みから解放される事と、妙にあの(松風)を気に入っていた俺は、最高に嬉しかった♪。


「でだ、巽よ!!」


「は!何なりと申し付け下さい!!」


「今日は<缶コーヒー>を持ってきておるか?」


「は?…」


 こうして俺はあるだけの<微糖コーヒー>を信長様に献上し、意気揚々と松風の背に乗りながら、藤吉郎様の待つ<中村>へ向かっていた♪。


(いいなぁ~♪こうして馬に乗って城下町を散策するのは♪俺を見る人々の視線も、前のように冷たい視線じゃなくて、尊敬の眼差しになってるじゃないか!そんなに馬に乗っている人は特別なんだな…)


 いや!俺の姿じゃなく、この背中に背負ったでかいリュックが珍しいので視線を向けている可能性も少なからずあるのかも知れない。


(だが、それがいい!!……あ、何処かで煙管(キセル)売ってないかな?…)


<もし!…もし!そこの馬に跨っている御仁!!>


 なにやら右後方から間違いなく俺に声をかけてくる男の声が聞こえ、俺は松風の歩みを止めると後ろを振り向いた。


(どう見てもあの姿は織田家の(さむらい)だな…俺が馬に乗っているから絡んできたのか?…ふん、なら!売られた喧嘩を買うってのは遊びだぁ~!なぁ?松風よ!!)


 などと、この<なんちゃって傾奇者(かぶきもの)>である俺が出来る訳もなく、何より刀すら持っていないのだから、ここは平和的外交を貫くだけである!。


「あ、あの…わ、私に何か御用でも?あ、あはは…」


 とりあえず俺は松風から下馬し、お(さむらい)の前に立った…当然ながらすでに心臓はバクバクである!。


「役目により貴殿の姓名をお聞かせいただきたい!」


「わ、私は巽淳一と申しまして……織田家の足軽頭(あしがるがしら)でして……」


「あ、足軽頭(あしがるがしら)の分際で馬に乗っておるのか!!」


「い、いえ!ちゃ、ちゃんと先ほど信長様より承諾を頂きましてです~~!!」


(まこと)に殿が?…足軽頭(あしがるがしら)の貴殿に?………ん?…今、巽淳一と名乗られたか?」


「は……はい~~~……」


(まさか問答無用で斬り付けるなんてこと無いよな!)


「なるほど、最近殿がたいそうお気に召した者を抱えたと欄丸から耳にしておったが、お(ぬし)が巽殿であったか!欄丸も新しい友が出来たと喜んでおってな!」


「へ?」


 先程まで殺気ビンビンだったお(さむらい)さんは、俺の名前を思い出した瞬間から穏やかな表情になった、それにどうやら欄丸様と交流があるような感じだ。


「あ、申し遅れた!拙者、欄丸の父、森可成(もりよしなり)と申す!」


「も!森様!!」


森可成(もりよしなり)、欄丸様のお父さんでもあり、長く織田家に仕えている重臣中の重臣!信長様の信頼も大きく、十文字槍を持ちかなり武勇に秀でた人だったと文献に残っている武将…。


(喧嘩を買ったら即、俺の命は消えてたな……それにしても欄丸様のお父さんとこうして出会えたなんてベタな展開だけど、マジ命が助かって良かった…)


「いかにも、森可成(もりよしなり)でござる!それに殿から<巽淳一なる者には信長の命により一切手出しをせぬ事>と沙汰が出ておってな、いやはや、もう少しで殿の命に背いてしまう所であった!どれ、侘びと言っては何だがそこの茶店で茶など馳走させてくれ!」


「そ、そんな!森様から茶を馳走されるわけには…」


「ははは!よい、よい!拙者も欄丸の友と話をしたくなったのでな!」


(まずい!これは非常にますい事になった!欄丸様のパパはどこまで俺の情報が入っているのか検討も付かないし…色々信長様とのやりとりを聞かれるのも危険だ!)


 こんな時、俺の時代ならすぐスマホを使い、即!欄丸様のスマホへ[欄丸様のパパとお茶ナウ!]と伝えココに呼び出すのだが、いかんせんこの戦国時代に通信衛星など宇宙に飛んでおらず、俺はかなり焦りと孤独感を感じていた。


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