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戦国時代の電気屋さん  作者: 朝風清涼
第2章 これが戦国時代なの?

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俺が出来る事

 清洲城に到着した俺達は難なく藤吉郎様の顔パスで城内に入ることが出来、まず先に<台所奉行>である藤吉郎様の仕事が終わるまで、俺は彼の業務を(くりや)の<上り框>に座り見学していた。


(へぇ、殿様だからもっと朝から豪華な朝食かと思っていたけど、お粥に焼き小魚、漬物と汁物だけか…でも織田家人々はそれらも毎日食べる事が出来るんだよな…あの子達と違って……)


「いやいや、巽殿!お待たせいたした、昨日から<朝げ>の準備をしておいて助かりましたわ!先ほど<お市>様に配膳が済んだ所でござる♪いやぁ~、いつ見ても<お市>様はお美しい❤毎日<お市>様のお顔を拝見出来るのは<台所奉行>たるわしの楽しみの一つでござるよ♪」


(…<おねちゃん>…あなたの女の勘は見事に的中していたようです…)


「は…ははは…そんなに<お市>様はお綺麗な方ですか?」


 言わずと知れた織田信長の妹…悲運の戦国美女として歴史にも名を残している姫君…その彼女と浅井長政の間に儲けた娘<茶々>は、いずれ藤吉郎様の側室となる…後の<淀君>…その名前は今も<淀川>として残り大阪の街を流れている…。


「おぉ、色白のお顔に物静かなお姿…あれは正に天女様のようじゃ…わしはあれほどお美しいおなごを見たのは初めて……いや!<おね>の次に見た!!…」


(あ、言葉を変えた!俺が<おねちゃん>に告げ口するのを警戒したな!)


「そ、そうじゃ!まだ巽殿は何も食ってはおらなかったな!ちょうど料理の残りがあるでな!わしと一緒に食おうではないか!!」


(あ、話の路線を変えた!よほど<おねちゃん>の必殺技が怖いみたいだ…)


「い、いいのですか?織田家の皆様の食事を勝手に私達が頂いても?」


「構わん、構わん、このまま捨てるには忍びない!ちゃんと残さず頂かなければ、あのワッパ共に顔向けが出来んでは無いか!」


「藤吉郎様…」


 藤吉郎様と2人で食べる<ヘルシーお粥定食>、もしあの子達と出会わなければ(喫茶店のモーニングの方がまだ美味い!)と、現代っ子の俺は素直に感じていただろう…そんな情けない俺が、今は米の一粒一粒を大切に噛み締めながら食事の有り難さを痛感していた。


「ふぅ~~…食った、食った♪そろそろ殿も食事が終わった頃であろう♪」


「ご馳走様でした!それで藤吉郎様、信長様は私達が清洲城に到着している事は御存知なのですか?」


「おぉ、欄丸殿に殿の膳を渡す際に伝えておいた♪間もなく殿からお呼びがかかるであろう♪それまで茶を飲みながら待つとしよう!」


(お茶か…どっちかと言うと俺、朝はコーヒー派なんだけど……あ、そうだ、忘れてた!!)


 俺は慌てて浩一のリュックからあのモールで購入していた缶コーヒーを二つ取り出した!。


(また贅沢な事をしてるよな俺…でも、コーヒーだけは我慢出来ないんだよ…)


「た、巽殿?その小さき鉄の筒は?」


「缶コーヒーです!この鉄の筒の中には豆を燻って粉にし、それをお湯で注ぎ淹れた南蛮の飲み物<コーヒー>が入っております♪」


「こーひ?」


「えぇ、朝の御勤めに疲れた藤吉郎様には打って付けの飲み物ですよ♪」


 コーヒーデビューの藤吉郎様には、まだ<ブラック>は荷が重いと考えた俺は、まず甘い<カフェオレ>の缶を開け、藤吉郎様に手渡した!。


「こ、これが飲み物?…<こーひ>なるものか?」


「えぇ、美味しいですよ♪お茶を飲むようにゆっくり口の中に流し込んでみてください♪」


「う…うむ…」


 恐る恐る藤吉郎様は缶に口を当て、静かにカフェオレを口の中へと流し込んでいく!。


「お!!…おぉ!!な、何たる甘さじゃ♪このような物を南蛮人は飲んでおるのか!!いぃ、これは疲れたわしの身体を癒してくれるぞ♪うん、うん♪」


「気に入っていただき嬉しいです!」


「いゃ~この味!く、癖になりそうじゃ♪た、巽殿!またお主の<れいわ>の時代に戻ったら、これを買ってきてはくれぬか?」


「えぇ、お安い御用で!」


「そうか、そうか、ほほ!ほほほ♪」


 グイッ!と飲み干すのが惜しくなったのか、藤吉郎様はまるで仔犬のようにチビチビとカフェオレを飲み始めていく…。


「藤吉郎様、まだ缶コーヒーはありますので、遠慮なされず飲んでください…」


「そ、そうか♪……ん?…巽殿!!この<こーひ>とやら、殿にも飲んでもらおうぞ!…殿は無類の南蛮物好き、きっとお気に召される!そこでご機嫌になった殿に巽殿の申し出を伝えるのじゃ!」


「と、藤吉郎様…私の考えを読まれていたのですか?」


「当たり前じゃ、友の考えを分からずに何が友じゃ!わしも口添えをするから、殿にお願いしあのワッパ達の様な子供達を救っていただこう!」


「と、藤吉郎様…あ、ありがとうございます!!」


「いや、礼は殿のお気持ちが固まってからじゃ!よいな?」


「はい!!」


「ひひ、ひひ♪まっこと、この<こーひ>とやら、癖になるの♪ほんに美味い!」


 果たして信長様は俺の申し出を聞き入れてくれるかどうか…さすがに藤吉郎様が飲んでいるカフェオレのように甘くはなく、俺が手にしている<ブラック缶コーヒー>のように苦い結末が待っているかも知れないが、俺は本気で信長様と対峙する覚悟を決めていた。


<あぁ、ここに居られましたか?木下殿!>


 聞き覚えのある声がこの(くりや)に響き渡る、その声の主はあの美少年<森欄丸>だった。


「おぉ、欄丸殿!もう殿の<朝げ>は終わりましたかの?」


「はい、殿からは<猿の務めが終わってからゆっくり巽と顔を出せ!>との事でございます」


「なんたる殿のお優しさ!有り難い事じゃ♪して欄丸殿?本日の殿のご機嫌は?」」


「はい、巽殿が戻られたとお聞きし朝から大層ご機嫌でございます!…あの?…それより、木下殿と巽殿が持っておられる小さな筒は何でございますか?」


「これですかな♪これは<こーひ>と言う南蛮の飲み物じゃ♪うんまいですぞ~~!!」


「こーひ………南蛮の……こーひ……」


 常に信長様の側に付いているからか、欄丸殿も南蛮物に興味があるオーラをありありと漂わせていた。


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