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戦国時代の電気屋さん  作者: 朝風清涼
第2章 これが戦国時代なの?

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お土産の中身は?

 俺は意気揚々とリュックから箱を取り出すと、その箱をそのまま小一郎様に手渡した!。


「何と、箱に色鮮やかな絵が描いておりまする!で、この絵に描いてある突起物だらけの四角い板のような物は?」


「それは卓上計算機、私の時代では<電卓>と呼んでいる簡単に算術が出来る道具でございます!勉学好きの小一郎様には打って付けの道具じゃないかと♪」


「こ!こんな板のような物が…さ、算術を!!……た、巽殿!!な、中身を出してもよろしいですか?」


「えぇ、どうぞ♪」


 独身貴族の俺には当然ながら子供なんて居ない!が、今は小一郎様が嬉しそうに箱を開ける姿を見て、親が子供にクリスマスプレゼントを渡した気持ちが何となく分かるような気がした♪。


「お、おぉ!これが電卓なるものですか!!…しかし、この突起物には見た事も無い文字が印されておりまする…」


(あ、そっか!まだこの時代の数字は漢字だったっけ?)


「あ、で…では、まずその文字から説明いたします!この[1]と記されている突起物が数字の1を表しており……」


 俺はお茶を飲みながら小一郎様に数字の文字と単位、そして電卓の使い方を伝授した!頭のいい小一郎様はすぐに使い方をマスターし、まるで小学生が初めて買ってもらったゲーム機で遊ぶように電卓を使い始めた!。


「な…なんとぉ~~…こんな鏡のような狭い所に数字が出ている!…それに、そろばんを使うよりも便利だ!!……じ、じゃぁこの場合は…斉藤軍が12,000の軍勢……織田軍が8,000…その部隊を4つに分けるとなると…おぉ!2,000!!これは凄いです!!」


「気に入ってくれたようで何よりです♪で、次はおばちゃんのお土産ですが……」


「こ、今度はわしかい?…な、何だかドキドキするねぇ~~…」


 俺は次にリュックから<低周波治療器>を取り出した!少し大きめの箱に木下家一同釘付けとなった。


「た、巽殿?その箱は私の電卓の箱よりも大きいですが…」


「はい、これまでおばちゃんの様子を見ていると、よく肩をほぐしていたようなのでお疲れなのかなと思いまして、この<低周波治療器>を持ってきました!」


「はぁ…これでわしの肩こりが治るのかいな?」


「治るというよりは楽になるはずですよ♪じゃ、今からこの<低周波治療器>の使い方を<おねちゃん>に伝えますので、おばちゃんはあの衝立(ついたて)の向こうで肩を出して待っててください♪」


「わぁ~~お♪うちがそれ触ってもいいの?…あははは♪やたーーーー!!」


 俺は箱から本体を取り出しすと慣れた手付きで乾電池をセットし、次にこの<低周波治療器>の使用方法を<おねちゃん>に伝えると、彼女はその治療器を手にし衝立の向こうへ消えて行った。


<あははは~♪じゃ、このペラペラの皮を貼るねぇ~~!どの辺りが凝ってるの~?>

<そうだねぇ~~………ここと…………ここかの………>

<あいよ~~♪じゃ、ペッタンするねぇ~~♪えい!…えい!>

<ひっ!!ちょっと冷たいねぇ~~…こんなので本当に肩が楽になるのかねぇ~?…>

<あははは♪たっちゃんに教えてもらったけど、これからが本領発揮なんだってぇ~~♪じゃ、いくよぉ~~!>


 どうやら<おねちゃん>は俺が教えた順序通り器具を扱っているようだ、後はおばちゃんが気に入ってくれればいいが……。


<お!おぉ~~…何やら肩がピリピリしよる!…まるで誰かに肩を揉んでもらっているようじゃぁ~♪>

<あははは♪まだピリピリを強く出来るみたいだよぉ~~!>

<じゃ、もう少し強くしてくれるかい?>

<あいよ~~♪じゃ、このツマミを…もう少し回して~~……>

<あぁ~、丁度いいよぉ~~♪…これは極楽じゃぁ~~♪>


(ほっ、おばちゃんも気に入ってくれたようだ……)


「それよりも巽殿…このような高価な未来の品々…本当に我らが頂いてもよろしいのですか?」


「えぇ、構いませんよ♪あ、それと<おねちゃん>!…その器具は時が経てば勝手に止まりますので、おばちゃんは器具が止まったら声をかけて下さい!」


<あははは♪了解~~!>

<ほんにこんな凄い物を……ありがたや、ありがたや……>


 いよいよ次は自分の番だと期待を大にして<おねちゃん>は俺の横にチョン!と座った!その瞳の輝きだけでも彼女のワクワクした気持ちが窺える。


「じゃ、次は<おねちゃん>に!」


「あははは♪いただきまぁ~~~す!!」


 ニコニコ笑顔で<おねちゃん>は小さい子供が大人からお菓子を貰うかのように両手の平を俺に差し出した!。


「あ、姉上!ハシタナイですぞ!!」


「あははは~♪いいじゃな~い!うちとたっちゃんの仲だしぃ~~♪どんな大きな物が貰えるか分からないんだしぃ~~♪」


「あ、では<おねちゃん>どうぞ!」


 俺は可愛い赤のリボンで薔薇を(かたど)った小箱を<おねちゃん>に手渡した。


「え?………うちのは………これ?……この中で…一番小さい箱だけど……この赤い紐で作ってある花は可愛いけど………ほんとにこれだけ?」


「あ、姉上!せっかく巽殿が姉上の為に未来から持って来てくれたのですよ!」


「で……でもさ………何だか…うちだけ箱…小さいし……」


 期待していた誕生日プレゼントの包装紙を開け、その期待とは全く別の商品だった瞬間と同じくらい落胆した顔になった<おねちゃん>…。


「おねちゃん、とりあえずその箱の中身を出してみてください…」


「う………うん……」


 落胆したまま<おねちゃん>は包みを開け、箱の中からリップを取り出した。


「…??…たっちゃん?…この丸くて細長い小さな筒は?…」


「それは私が居る時代では女性の必需品<リップ>という物で…この時代で言うと<(べに)>です」


「…紅?…これが?…口に塗る筆も無いじゃん……」


「それはそのまま口に濡れる仕組みになっております、まずは長い筒を引き抜いてみてください!」


「こ、こうかい?…………あっ、また中から白い筒が出て来た!」


「で、今度は下の短い筒をクルリと左に回してみてください!」


「………………あっ!白い筒の中から…桃色の指みたいなのが出て来たよ!!…」


「それが私の時代の紅です♪」


「いやはや…中々鮮やかな桃色でございますな!…いや、梅の花に近いような…しかし、筒を回して中から紅が出てくるとは…どのような仕組みになっているのでしょうか?…」


 小一郎様はリップの仕組みに興味が出たようだが、女性の<おねちゃん>はずっとリップ部分をうっとりと眺めている。


「こ、こんな綺麗な紅…本当にうちが付けてもいいの?…」


「はい♪その為に未来から持ってきましたから!さ、早く鏡の前で塗ってみてください♪」


「う……うん♪」


 どうやら<おねちゃん>のご機嫌斜めもリップを見た瞬間から消えてくれたようだ、どの時代でも女性は綺麗に見られたいのだろう!。


「470年後とは、我らが想像出来ぬほど便利な国になっておるのですな…いやぁ~…拙者も巽殿の時代を目の当たりにしとうございます!」


「…私はお勧め出来ません…戦の無い平和な国ですが…この時代で言う<年貢>も厳しく、便利になればなるほど空気や川、海が汚れ…それに人の心も自分さえ良ければと他人に対する<義>や<慈悲>も軽視している時代でございます…」


「ここの時代は人の命ほど軽いものはございません、これから戦ばかりの時代になりそうな話も聞き及んでおります…拙者は戦は嫌いです…戦になれば必ず誰かが大切な人を失うからです…その悲しみはどれほど大きいでしょうか…」


「小一郎様……」


「拙者は…戦の無い時代を見ていたい…出来る事なら、拙者も兄上と共に信長様をお支えし平和な世を造りたく思っております…こんな身体の弱い下級武士では米粒ほどしか役には立ちませんが…ははは…」


「小一郎様!そのお(こころざ)し、決して忘れず胸に刻んでおいてください!………」


「巽殿………ふ♪……承知しました……巽殿の目を見ていると、こんな拙者でもいずれ大きな仕事が出来そうな気持ちになりまする!」


「小一郎様!!…」


「ね……ねぇ?…小一郎ちゃん……たっちゃん……」


 まるで昭和時代に流行った青春ドラマのワンシーンみたいな友人同士の熱い握手を小一郎様としていると、リップを付け終えた<おねちゃん>がこの囲炉裏へと戻って来た。


「おぉ、姉上!とてもいいお顔になられております!いやぁ~<りっぷ>とは、こうもおなごを美しくいたす道具なのですね!」


「やだ、小一郎ちゃんたら!………ね、ねぇ?…たっちゃんは………どう…かな?…」


「えぇ、私が想像していた通り、その色は<おねちゃん>に合っていますよ♪とてもお綺麗ですよ!」


「ポッ❤…も、もう!たっちゃんまで…う、うちは…うちのまんまなんだから…そんなに褒めても何も出ないよ♪…」


 パリピのかぐや姫は更に頬を赤らめ何故か俺の顔をチラチラと見ている、誰でも褒められて嫌な気分にはならない、特に女性は<綺麗>と言われれば尚更なのだろう。


(が、しかし!これ以上小一郎様の前であんな表情されては俺の立場が危うい!ここは路線変更だ!)


「きっと藤吉郎様も<おねちゃん>のお顔………」


<おね!おねはまたここに来ておるのか?…>


 家の外から聞き慣れた声が響いた!。


(あぁ藤吉郎様だ♪助かった!!)


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