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戦国時代の電気屋さん  作者: 朝風清涼
第5章 桶狭間

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準備万端

 ポツ、ポツと、この料亭の屋根に雨が降り始める、森様は飲み干した猪口を手にしたまま浩一の顔を静かに窺っていた。

 そんな浩一は一切物怖じせずある男の名前を口にする。


「菩提山城主…竹中 重治(たけなかしげはる)でございます…」


「……やはりあの男か……昨年、わずか十数名の手勢で稲葉山城を占拠したと聞いておる、それを知った殿(との)も、何とか竹中を調略しようとお考えなのじゃが…あの男は若いがかなりの頑固者らしく、それに…せっかく落とした稲葉山城も後に龍興(たつおき)に返してしまうほどの変わり者…何を考えておるのか全く読めぬ男よ…」


「しかし、その竹中重治(たけなかしげはる)を唯一調略出来る人物がこの織田家に居りまする!」


「そ、そのような切れ者が織田家に居るのか?」


 浩一は笑みを浮かべながら森様の猪口に酒を注ぎ終えると、そのまま森様の前で粛々と頭を下げ上半身をひれ伏した!。

 そんな浩一の姿は一点の迷いも無く自信に満ち満ちている。


「はっ!…その男の名は、木下藤吉郎様でございます!」


「藤吉郎じゃと!」


「はっ、どうか森様!この件を信長様に御進言していただけませぬか?…すでに藤吉郎様は調略の実績を上げておりまする!…私達も藤吉郎様の与力となり必ずや成功させてみせますので!」


「……藤本殿(どの)…そうか……あい分かった、無駄に思案する日々を重ねるよりも遥かにマシじゃ!明日にでも殿(との)にお伝え申す!」


「ありがとうございます!」


 普段、俺と藤吉郎様が会話をしていると、いつも浩一は一歩下がり控えている…そんな彼だが、やはり常に藤吉郎様の立身を考えてくれていたようで、この席での俺の出番は必要が無かった。

 それと、浩一の言葉に[私達]と入っていた事で、藤吉郎様だけではなく、俺や小一郎様もこの件を噛ます算段をしているのが俺には見えていた。


(浩一の頭には竹中重治(たけなかしげはる)の調略シナリオがすでに浮かんでいるようだな…)



 [それから五日後]



「た、大変じゃぁ~~!…大変じゃぁ~~~!…巽殿(どの)、藤本殿(どの)は居るか~~!」


 いきなり屋敷の門から大きな声が鳴り響く、その声の(ぬし)は未来の関白、木下藤吉郎様であった。

 この時、俺と浩一は屋根に上りソーラーシステムの点検をしている最中だったのだが、あの藤吉郎様の慌てようから、ついに信長様より竹中調略の勅命が出たのだろうと理解した!。


「淳一、どうやら始まりそうだな♪」


「あぁ、その為に俺はまた先日令和に戻ったんだからな♪」


「どこぉ~~?…巽ちゃ~~ん!…藤本ちゃ~~ん!…わしじゃ~~…藤吉郎じゃぁ~~!…何処に居るのぉ~~?…」


「ププッ、こりゃかなり信長様から圧をかけられたようだな♪」


「笑うな、浩一!」


 ドタドタと廊下を走りながら、次々と部屋の襖を開けては俺達を探している藤吉郎様!まぁ彼がパニくるのもしょうがないだろう、なにせ今度の勅命はあの天才竹中重治(たけなかしげはる)が調略の相手なのだから…。


 [もう、いきなり帰って来たと思ったら、何を走り回ってるんだい!]


「お!おね、巽殿(どの)と藤本殿(どの)は何処じゃ?…さっきから見当たらん!まさか二人で色町にでも出かけておるのではあるまいな!」


 [何馬鹿な事言ってるんだい、あの二人なら…上だよ、上!]


「う、上?………天井しか見えぬが……ま、まさか!…わしが清洲で奉公しているうちに…斉藤の間者に襲われたのではあるまいな!…な、なんたる事じゃ…こんな大事な時に……くっ…し、して…巽殿(どの)と…藤本殿(どの)は、ちゃんと葬ってやったのか?」


 [なにスカポンタンな事を言ってるんだい!…あの世じゃなくて、たっちゃんも浩ちゃんも屋根の上で仕事してるよ!]


 俺と浩一はこっそりと屋根の端から顔を出すと、藤吉郎様は素足のまま庭に飛び出して屋根を見上げた、それと同時に俺達と顔が合い、彼は慌てて俺達を呼んだ!。


「た、巽殿(どの)!…藤本殿(どの)!…無事で何よりじゃ~~…実は大変な事になっての、今すぐ下に降りてきてはくれぬか!」


「いいですけど、藤吉郎様もその足で家に上がると、おねちゃんのバックドロップが待ってますよ!」


「わ、分かった!…と、とりあえず…居間で会おうぞ!」


 俺達が屋根から下り居間に戻ると、藤吉郎様は柄杓で何度も水を飲み干し、落ち着きを取り戻そうとしていた。

 そんな彼を見ながら俺と浩一は、静かに居間の座布団に座り藤吉郎様からの一声を待つことにした。


「ふぅ~~、この辺りの水は山からの清水が流れてるだけに、冷たくて上手いのぉ~~♪」


「落ち着きましたか?藤吉郎様…」


「お、おぉ……い、いや!そ、それよりもじゃ…大変な事になってしまったのじゃ!」


 慌てて赤子のハイハイをしながら藤吉郎様は居間へと上がり、座布団もそっちのけで俺達の前まで移動して来る、まぁいい歳をしたおじさんのハイハイは可愛くも何とも無いのだが…。

 その原因を知っている俺と浩一は、何故かそんな藤吉郎様の姿を見て妙に笑いそうになっていた♪。


「お、おほん…それで藤吉郎様、私と淳一に何か御用でも?」


「そ、そうじゃ!…昨日、巽殿(どの)の予言通り、殿(との)から大きなお役がわしに回って来たのじゃ!」


「それはおめでとうございます!」


「な~~にを言ってるのじゃ藤本殿(どの)!…と、殿(との)は、わしに「美濃の竹中重治(たけなかしげはる)を調略してこい!」と命じられたのじゃぞ!…たった数人であの稲葉山城を落とした天才を、わしが調略するなんて出来るわけが無かろう!」


 まだハイハイ姿のまま、藤吉郎様はこの難題に困り果てているのか、右手で何度もポンポンと床を叩きダダをこねている。

 やはりその姿も全然可愛くない…。


「ど~せあんたの事だから、信長様の前で調子こいて「拙者にお任せあれ♪」と息巻いたんだろ?」


 おねちゃんは俺と浩一の為にお茶を淹れ、それぞれの前に湯飲みを差し出しながら、軽蔑の眼差しで藤吉郎様を見詰めていた。


「だ、だって~…殿(との)から直々に命じられたのじゃぞ…断れる訳がなかろう…とほほ…」


「考える時間を下さいとか言えなかったのかい?…このスカポンタン!」


「まぁまぁ、おねちゃん…そんなに藤吉郎様を責めないでください、それに…この案を信長様に持ちかけたのは、私と浩一、そして森様なのですから♪」


「な、なんじゃと?…それは(まこと)か?…巽殿(どの)?」


「えぇ、(まこと)でございます!さぁ、藤吉郎様、いよいよあなたが織田家の重臣となる準備は私達が整えております!見事、我らの力で美濃の天才を織田家へ迎え入れましょう!」


「な、なんと…ぅ…た…巽殿(どの)ぉ~~~…わ、わしは…わしは……うっ……ぐすっ…ぐしゅっ…ぐしっ……」


(うっ、鼻水が出て汚い顔!…やっぱ可愛くねぇ~…)


 ようやく藤吉郎様もやる気になってくれたが、その竹中重治(たけなかしげはる)調略前に、更なる信長様よりもう一つの大きな仕事が出て来る事を俺はあえて口に出さずにいた…。

 その為の手はずは、すでに小一郎様が着々と内密に準備をしてくれている。


(さて、これまで記載されていた歴史年表内容を書き換えるといたしますか!…歴史の神様、どうか俺達を見守っていてください…)


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